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青木恵斗(帝京大学)
関東大学ラグビー春季交流大会の優勝決定戦は、6月16日(日)、早稲田大学上井草グラウンドで行われた。2019年度に全国大学選手権を制して以降、王座から遠ざかる早大は、昨季の選手権準々決勝で京産大に28-65という大敗。今季は異例の早い時期(1月9日)にチームを始動させ、共通理解の細部を確認し、セットプレー、ディフェンス面の強化を続けてきた。今大会はその成果もあり、Aグループでライバルの明大にも快勝して4連勝。一方、帝京大は選手権3連覇中とはいえ、前節、明大と引き分けており、現時点では実力が拮抗しているように思われていた。
午後1時、気温30度という暑さのなか帝京大のキックオフで試合は始まった。先制したのは帝京大だった。前半4分、スクラムで早大の反則を誘うと、PKからのタッチキックで攻め込み、さらに早大のオフサイドを誘うと、7分、ラインアウトからモールを組む。ここは早大のディフェンスに止められたが、ボールを出して左、左に連続アタック。最後はFL青木恵斗キャプテン(4年)がトライ。SO本橋尭也(2年)がゴールを決めて、7-0と先制する。
早大の今季のテーマは「Beat Up」。相手を叩きのめすという意味があり、目の前の勝負にこだわり、接点でファイトし続けることを重視する。帝京大はフィジカルバトルでは絶対に引かず、攻守に圧力をかけ続けることがチーム文化として根付いている。互いに一歩も譲らない激しい攻防が続いた。「チャンピオンにどれだけ戦えるか、楽しみ」と早大の大田尾竜彦監督が話していた通り、序盤は早大が強化の成果を見せる。
細矢聖樹(早稲田大学)
12分、早大はスクラムで圧力をかけて帝京大の反則を誘い、PKからタッチキックで得たラインアウトからモールを組む。じわり押し込むと、日本代表合宿で不在の佐藤健次(4年)に代わってキャプテンを務めるSH細矢聖樹(4年)がトライ。SO野中健吾(3年)のゴールで同点に追いついた。しかし、直後のキックオフのボールを確保できず、ノックオンで帝京大ボールのスクラムとなる。序盤戦は両チームともトライ後のキックオフのキャッチミスでピンチを招いた。
ラグビー 関東大学春季交流大会2024 Aグループ
【ハイライト動画】早稲田大学 vs. 帝京大学
前半19分、帝京大は早大ゴールに迫り、PKからの速攻で帝京大FL青木が豪快に走り込んでトライ。スコアは、14-7となる。以降はディフェンスラインを素早く押し上げ、的確にタックルを決める帝京大の圧力に早大がハンドリングエラーを連発。攻めあぐむ早大に対して、帝京大は前半31分にWTB生田弦己(3年)がトライすると、39分にはSO本橋がタックラーの間に体を入れてのオフロードパスでディフェンスを崩し、生田が連続トライ。26-7として前半を折り返した。
倉橋歓太(帝京大学)
後半15分、帝京大はモールを押し込んでHO當眞蓮(4年)がトライをあげると、17分には交代出場のNO8倉橋歓太(4年)がタックルを1人、2人とはじき飛ばしながらトライして、38-7と突き放す。後半26分にNO8カイサ・ダウナカマカマ(2年)がハイタックルでレッドカードを受けたが、帝京大は14人になったことを感じさせない戦いぶりで得点を重ねた。
出色のパフォーマンスを見せたのが青木キャプテンだ。一度のタックルで終わらず、すぐに立ち上がって次のプレーに向かう姿はチームメイトを奮い立たせただろう。CTB久木野太一(4年)の前に出るタックルも見事だった。最終スコアは、60-7。思わぬ大差になった。
早大は日本代表合宿に参加するHO佐藤健次、WTB/FB矢崎由高(2年)ほかNO8松沼寛治(2年)、SH宮尾昌典(4年)ら主力を怪我で欠いていたが、帝京大も日本代表合宿に参加するPR森山飛翔(2年)ほかLO本橋拓馬(4年)、FL福田大和(1年)らを怪我で欠いていた。現時点では早大が取り組んできた強化にまだ足りない点が多いという結果になった。帝京大は相馬朋和監督が「青木キャプテンは常にチャンレンジャーと言い続けています」という言葉通り、今季も挑戦者として王座を獲りに行くという意気込み感じさせた。前節、明大と引き分けたあとに涙を流した青木キャプテンの思いがチームに浸透しているようだった。これで帝京大は春季交流大会で3連覇。秋の関東大学対抗戦で戦うとき、両チームの差がどうなっているのか。これから過ごす時間の質がその差を分けることになる。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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