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本番まで1ヶ月を切ったU20日本代表候補
7月にスコットランドで開催される「ワールドラグビーU20トロフィー2024」(U20世代の世界大会で2部相当)を控えたU20日本代表候補は、6月7日(金)から大分・別府で合宿を行い、最終日の11日は宮崎に移動し、日本代表と実戦形式の練習を行った。
U20日本代表の大久保直弥HC(ヘッドコーチ)が「僕もこの業界に長くいますが、聞いたことがない」と話したように、U20日本代表と日本代表が肩を当てる練習は過去にほぼ例がないという。
大久保HCは「5月にニュージーランド遠征し、6月はリーグワンのシーズンが終わっていて、7月の本番の前に時間が空いたので、どうにか試合できないかとエディー(・ジョーンズHC)と相談した」。
「試合は難しいので、アタック&ディフェンスをやることになりました。願わくは今後も交流していってほしい。強化としてわかりやすいし、選手もモチベーション高くやってくれた」と経緯を説明してくれた。
日本代表のエディー・ジョーンズHCも、U20世代を中心とした若い世代を強化することの意義を「若い選手にそれぞれ才能があるということはわかっているが、日本代表とはギャップがある。才能があるだけでは日本代表のスコッドに入れないし、開花できない。我々、日本代表のスタッフとしてはサポートするプログラムで、若い選手の成長を促していきたい」と話した。
エディー・ジョーンズHC
また、日本代表側にもメリットがある。ジョーンズHCは「スコッド全体として練習2日目で、実践的な状況で練習ができた。練習してきたことが、実戦でアタック、ディフェンスでいかに通用するか。いい練習になった」と振り返った。
20分×3本の試合形式で、スクラム、コンバージョン、プレースキックはなく、ジョーンズHC主導の下、ラインアウトを起点としたアタックで始めるというアタック&ディフェンスだった。
U20日本代表側のテーマは「『超速』を超える『コスモアタック』」だった。1本目、2本目あたりまでは、U20日本代表側が接点でファイトしたり、いいアタックを仕掛けたりと、大いに見せ場を作ったが、3本目になるとU20日本代表側に疲れが見え始め、最終的には日本代表がトライ12本、U20日本代表側が2本という結果となった。
U20日本代表側の2本のトライは、ゴール前でしっかりと相手を崩してSO(スタンドオフ)伊藤龍之介がトライ。もう1本はカウンターから攻めて、最後はFB(フルバック)竹之下仁吾(ともに明治大学2年)が挙げた。
大久保直弥HC
大久保HCにインパクトを残した選手を聞くと、FW(フォワード)はディフェンスリーダーを務めるLO(ロック)石橋チューカ(京都産業大学2年)、BK(バックス)はニュージーランド遠征でキャプテンを務めたFB竹之下の2人を挙げた。
「チューカはワークレイトが高いし、身体も張る。今後、彼が成長していくには、仲間に自分の考えを伝える訓練もしないといけないと思い、ディフェンスリーダーを任せた。竹之下仁吾は仕事人ですよ。量も質もFBとして信頼できる人間だし、周りのメンバーもみんな尊敬している」。
NZ遠征ではキャプテンを務めたFB竹之下仁吾
「逆に言うと(日本代表トレーニングメンバーに昇格したFB矢崎)由高(早稲田大学2年)の良さを仁吾が活かしていた部分もあって、仁吾が14番が15番になっても彼の良さは変わらず、チームにとって非常に大きな存在」。
その日本代表のトレーニングメンバーとなったFB矢崎に関して、大久保HCは「矢崎がイングランド代表戦でプレーすることになれば、次は自分だとU20日本代表の選手たちのモチベーションになる。U20にいてくれたらありがたいが、日本代表で試合に出られるチャンスあれば、チャレンジしてほしい」と話すにとどめた。
ディフェンスリーダーを務めるLO石橋
日本代表との試合に出ていた選手に話を聞くと、LO石橋は「試合してきた中で、一番テンポが速くて強かった。良いプレーもあったが、ミスが出たところもあって、そこを反省して修正したい。ブレイクダウンの球出しが速くて、自分の足が追いつかないと感じた。フィジカルとスピードがまだまだ足りないと思ったので、1つ1つ成長したい」と話した。
トライを挙げたSO伊藤龍之介は「SO李承信選手、山沢拓也選手と対戦できたのはうれしかった。試合はむちゃくちゃきつかった!テンポも速いし、ボールも切れないし、2トライ取れたことは良かったが、ボールがつながらなくて、やりたいことがやり切れなかった」と話した。
司令塔のトSO伊藤龍之介
そして、「日本代表のディフェンスが速かったので、自分たちのストラクチャーで攻められなかったが、みんなスペースが見えていたのでそこへの精度だったり、オプションだったりをブラッシュアップすれば、(7月に対戦する)スコットランド代表でいいアタックができる」と先を見据えた。
あらためて大久保HCは、日本代表と実戦形式のアタック&ディフェンスの練習ができたことを、「よい学びができた60分だった。自分たちが2月から積み上げて進んでいる方向を、選手本人たちも身体を当てて実感できたと思う。来月のスコットランドに向けていい準備ができた」と満足げに振り返った。
この後、U20日本代表はスコットランド遠征に備える。代表メンバー28名のうち、来年のU20日本代表活動を見据えて、FW1人、BK1人ほど大学1年生も加える予定だという。
2月から7月の大会を見据えて強化を進めてきたU20本代表候補の選手たち。TVで見ていた、憧れの日本代表の選手たちと実際に身体を当てて、大きな手応えと課題を得て、残り1ヶ月を切った『ワールドラグビーU20トロフィー2024』に備えていく。
【ワールドラグビーU20トロフィー2024】
・会場:スコットランド・エディンバラ
◆予選プールA
・7月02日(火)日本代表vs.香港代表
・7月07日(日)日本代表vs.サモア代表
・7月12日(金)日本代表vs.スコットランド代表
◆決勝および順位決定戦
・7月17日(水)プールB(ウルグアイ、オランダ、ケニア、アメリア)のいずれかと対戦
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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