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山沢拓也が選ばれるかどうか。それは、エディー・ジャパン二期目の注目点の一つだった。埼玉県の深谷高校3年生の山沢を日本代表合宿に呼び寄せたのは、エディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)だった。怪我で苦しむ時期もあったが、天才的なステップワーク、正確なパス、キックのスキルは誰もが認める質の高さだった。筑波大学在学中(2016-17シーズン)には、埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉WK)の一員としてトップリーグに出場し、以降も埼玉WKのSO、FBとしてチームの中心選手であり続けた。日本代表にもたびたび選出されながらラグビーワールドカップ(RWC)とは縁がなく、今年の9月で30歳になる山沢にチャンスがあるのかは未知数だった。しかし、エディー・ジョーンズHCは彼の才能を放っておかなかった。宮崎で始まった日本代表合宿に参加した山沢の今の胸の内を聞いた。
――メンバーに選出されたときは、どんな気持ちでしたか。
「シンプルにびっくりした部分がありました。先シーズンも今シーズンもリーグワンでは10番(SO)より15番(FB)で出場することが多かったからです。15番の選手としては、自分はそこまでの選手ではないと思っていましたので」
――エディー・ジョーンズHCとは話しましたか。
「シーズン後半に短い時間でしたがワン・オン・ワン(一対一)のミーティングがありました。そのときに、プレーヤーとして良い時と上手くいかない時のファンダメンタル的なこと、マインド的なことを、長らくどうにかしたいと考えていたことを伝えました。それに対してアドバイスをもらいました」
――ジョーンズHCは高校生のころから山沢選手を高く評価していますね。
「嬉しいことですし、光栄ですが、自分はこの位置にいるレベルなのか?と、高く評価されることを自分の中でうまく消化できていませんでした。今は少しできるようになりましたが、以前は、自己評価とのギャップに苦しんでいました」
――その時点からは大きく成長しているように見えるのですが。
「気持ちの部分の成長が大きいと思います。年々良くなってきているし、いま自分にどういうことが起きていているかという評価がある程度できるようになりました。それに対するアプローチの仕方が上手くなれば、もっと良い状態でラグビーができます。そこを上げていきたいと思っているし、スキルも良くしていきたいです」
――スキルはどの部分を上げていきたいのですか。
「いろいろなところです。15番でいえば、ディフェンスの空いているスペースへの判断、それを内側の選手に伝えること、ディフェンスのポジショニングですね。戦略的なキックも、ここに落としたいという場所に確実に落とせるように正確性を高めたいです。ボールの回転を意図通りにかけることも、もっと上手くできるようになると思います」
――ジョーンズHCの掲げる「超速ラグビー」の中では、どんな役割を果たしたいですか。
「相手チームより多く走り、スペースにアタックをし、チャンスをものにするというところは、ワイルドナイツでやっていることと大きくは変わりません。より正確に、より早くスペースを見つけ、早く判断し、早く声掛けをする。それは自分が行きつきたいと思っているところでもあるので、さらに伸ばし、チームに貢献できればいいと思います」
――10番と15番はどちらでプレーしたいですか。
「こだわりはありませんが、同じようでありながら同じではないので切り替えが難しいです。10番でプレーしていて15番に動く、15番だけプレーする、15番でプレーしてたまに10番でプレーする、それぞれの感覚が違います。10番で試合の流れを理解しながら15番に動くとやりやすいですね。まだまだ15番は初心者なので、どこにどう気持ちを向けていくべきなのか、たまにわからなくなります」
――いつのまにかベテランになりました。チームの中で自分が果たす役割については考えますか。
「ワイルドナイツでは年齢のことはあまり考えていませんでしたが、日本代表に来てみると、BKでは最年長になっていて戸惑っています。得意なことではないのですが、年下の選手ともコミュニケーションをとっていきたいし、ラグビー面では自分が学んできたこと、考えてきたことをかみ砕いて話し、若い選手の引き出しの一つになるようなことを伝えたいですね」
――山沢選手はもともと無口なタイプだと思いますが、埼玉WKはよくコミュニケーションをとるチームです。そこはレベルアップしたのではないですか。
「はい。ラグビー以外では以前と変わりませんが、ラグビーに関しては10番と15番はコミュニケーションが必要なポジションだし、ワイルドナイツのラグビーはコミュニケーションが大事なので、かなり話せるようになったし、ある程度ラグビーも理解できるようになりました」
――新生日本代表の初戦はイングランド代表と対戦します。意気込みを聞かせてください。
「まず代表のラグビーをしっかり理解することが大事です。イングランドのラグビーを理解して対策し、どう勝つかの準備をすると思うので、そこに100%コミットできるようにしていきたいです。今の日本代表は誰が出てもレベルの高いチームだと思います。自分が試合で出る、出ないに関係なく、いろいろな場でチームに貢献できるように役割を果たしたいと思います」
――2022年11月のイングランド代表戦は、山沢選手は10番で出場しました。どんなイメージを持っていますか。
「セットピースで崩されると、日本のやりたいラグビーができません。ディフェンスはものすごく前に出てくるので、そこで受けないことが大事です。しかし、前に出てくるぶん、うまくパスを通せば外側にスペースがあるし、いろいろな場所にスペースができるので、やりようはあると思います」
――2027年のRWCへの出場についての思いを聞かせてください。
「正直、あまり意識していません。そういう舞台を目標にしたことがないのです。目の前のことをしていれば、そこにつながって行くかなという感覚はあります。自分にとっての一番のゴールを言えば、『上手くなりたい』ということです。それを追いかけていますね。日本代表合宿は成長できる環境ですから、どれだけ成長できるかは自分次第だと思っています」
――常に反省を繰り返しているのですね。
「そうですね。反省していないときは、あまり良くないときです。満足しているということなので。フラストレーションを溜めることはどの試合でもあります。その根底にあるのは、上手くなりたい、という気持ちです」
山沢拓也は何度も「上手くなりたい」と言った。昨シーズンのリーグワンでは、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦でトライ、トライ後のゴール、PG、DGというラグビーの得点方法をすべて成功させる「フルハウス」を達成。そのスキルレベルは間違いなく日本のトップレベルだ。それでも、本人はさらに精度の高いプレーを追い求めている。目指す選手像はなく、「自分が思う良い選手」になるべく己を磨き続ける。エディー・ジャパンのなかで山沢はどんな役割を果たしていくのだろう。レベルアップしていく姿が楽しみだ。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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