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ラグビー コラム 2024年4月22日

【ハイライト動画あり】ブレイブルーパスを追い詰めたタックルと雨。ヒートの魂、熱戦を呼ぶ

ラグビーレポート by 田村一博
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三重ホンダヒート vs. 東芝ブレイブルーパス東京

 雨。ホストスタジアムの試合で熱心なファンが見つめている。そして相手は2位だ。
11位のチームが乾坤一擲のパフォーマンスを見せる要素は揃っていた。

試合後、キアラン・クロウリー ヘッドコーチ(以下、HC)が口にした言葉がすべてだ。
「結果はついてこなかった。しかし、選手たちはガソリンタンクをカラにして戦ってくれた。誇りに思う」

4月21日(日)に三重交通Gでおこなわれた三重ホンダヒート×東芝ブレイブルーパス東京は、8-7というロースコアだった。
勝ったブレイブルーパスも、惜しくも敗れたヒートも、フルタイムのホイッスルが吹かれたときにはヘトヘトだった。

試合開始のキックオフ直後から激戦となるのが分かった。
ブレイブルーパスは「最初のコリジョン、タックル、最初の10分を、フィジカルを使って戦い、試合をドライブしようと考えて試合に臨もう」(HO橋本大吾ゲームキャプテン)とプランを立てていた。

開幕から常にゲームをデザインしてきたSOリッチー・モウンガは家族に不幸があり欠場。
ケガあがりのリーチ マイケル主将はベンチスタート。今季のプレータイムが短い選手たちが多かったこの試合は、出だしが肝心と考えたのだろう。

その言葉通り迷いなく前に出て、体をぶつけたブレイブルーパスの攻撃は、オフロードパスを交えながらフェーズを重ね、1分近く続いた。
その途中、ヒートは一歩も引かなかった。ダブルタックルで押し返したシーンもあった。そして最後は、頼りになる男が存在感を発揮した。

ケガが癒えて今季初出場となったNO8パブロ・マテーラ(アルゼンチン代表)がブレイクダウンでボールに絡んだ。
ジャッカルに成功。相手の反則を誘い、この日、自分たちがどう戦うのか示したシーンだった。

この日、ヒートのディフェンスは激しく、集中力が途切れることがなかった。
一人ひとりが激しくプレーしながら、チームとしてコネクションが取れているから相手につけ入るスキを与えない。

ジャパンラグビー リーグワン2023-24 D1

【第14節ハイライト動画】三重ホンダヒート vs. 東芝ブレイブルーパス東京

クロウリーHCは、4月からチームに加わったマリウス・フーセン防御コーチの指導下で整備してきたことを遂行できていたと話し、イタリア代表でもコンビを組んでいた相棒の手腕も評価した。

前半は0-0。両チームとも得点はできなかったが、ボールと人が積極的に動く試合展開は、スコアレスでも惹きつけるものがあった。

先制点はヒート。後半2分だった。
防御の裏に上げたショートパントが勢いよくチェイスしたWTB渡部寛太がかっさらう。いっきにインゴールに駆け込んだ。
偶然ではないだろう。攻守とも何度も前に出続けた動きが、相手よりはやく、力強かったからボールを再獲得できた。

コンバージョンキックも決まり、7点をリードしたヒート。勝利への強い思いはその後も続き、粘り強いディフェンスは、ブレイブルーパスがつかんだ好機を拡大させない。
刻まれたスコアは残り10分を切っても変わらないままだった。

今季苦しむ試合はあっても、負けないことで成長を証明してきたブレイブルーパスの進化は試合の最終盤になって見られた。

後半31分、PK後に得たラインアウトから作ったモールを押し込みHO原田衛がインゴールにボールを置いて2点差に迫る。
そして37分にはSO中尾隼太がPGを決めて逆転する。そのシーンは、丁寧かつハードにプレーした結果、相手を後退させて決定機を得た。

第7節の横浜キヤノンイーグルス戦で負ったふくらはぎのケガから復帰し、7試合ぶりにピッチに立ったリーチは、後半4分からプレーした時間を「ボールキャリーやディフェンスの数は少なかったですが、体力は十分でした」と振り返った。

チームについても言及し、「今シーズン初めての雨の中での試合ということで、少し方向性がブレたところがありましたが、最終的に全員が同じ方を向いて、落ち着いて戦えたことが今後につながると思います」とした。

また、チームを束ねるキャプテンらしく、ここまでプレータイムの短かった選手たちの成長についても前向きに話した。
「アサ(NO8アサエリ・ラウシー)はどんどん成長していて、チームにいい影響を与えてくれています。中尾隼太(SO)は今シーズン初めての試合だったけど、雨の中でゲームをコントロールし、勝った。チームも彼もハッピーだと思います」

いつもの顔と違うメンバーたちが踏ん張り、苦しんで勝った分、生まれるパワーも大きいようだ。
4強で争うブレーオフトーナメントへの進出は決まっている。全員で前へ進み続ける。

指のかかった勝利を逃したヒートのFL小林亮太は、「敵陣に入ってつかんだチャンスをスコアに変えられなかった」と悔やみ、小さなミスや反則を反省した。
しかし、約84パーセントの成功率で158回のタックルを見舞えば、上位チームも追い詰められると分かった体感は大きい。

第14節を終えて11位、勝ち点で最下位の花園近鉄ライナーズと並んだが、勇気を得た日だった。

文: 田村 一博

田村一博

前ラグビーマガジン編集長。鹿児島県立鹿児島中央高校→早稲田大学。早大GWラグビークラブでラグビーを始める。ポジションはHO。1989年、ベースボール・マガジン社に入社。ラグビーマガジン編集部に配属される。1993年から4年間の週刊ベースボール編集部勤務を経て、1997年からラグビーマガジン編集長に就く。2024年1月に退任し、現在は編集者、ライターとして活動。

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