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静岡ブルーレヴズ vs. トヨタヴェルブリッツ
9番、10番のハーフ団だけでニュージーランド代表のキャップを248(アーロン・スミス125、ボーデン・バレット123)も持っている。そんな相手に許したトライは1つだけだった。
24-8の勝利は、当事者たちにとって痛快だっただろう。
トップリーグ、ディビジョン1の第11節。静岡・エコパスタジアムで行われた静岡プルーレヴズ×トヨタヴェルヴリッツは、ホストチームが快勝した(3月23日)。
結果も嬉しいが、勝者側の誰もが痛快な表情をしていたのは、描いた勝利へのプラン通りに試合を進めることができたからだ。
『1ラウンドKO』を合言葉に試合に臨み、それを全員で遂行した。点差以上の完勝だった。
先制パンチで勝利を掴む意志は、出場メンバーの顔ぶれにも反映されていた。
ブルーレヴズはアーリーエントリーでチームに加わって日の浅いショーン・ベーテー(環太平洋大学)を3番で起用し、NO8にはシオネ・ブナを起用した。
ブナは日野レッドドルフィンズから今季移籍。この日がブルーレヴズでは初キャップだった。
それぞれ190センチ、132キロの23歳と、192センチ、116キロの25歳。藤井雄一郎監督は、2人を「パンチ力がある」と評した。
若者たちは期待に応え、ボールを手にすれば迷いなく前に出てチームに勢いを与えた。
PGで先制点こそ与えたものの、ブルーレヴズは『最初から攻める』意思統一のもと、序盤からよく走り、ボールを動かした。
前半5分、13フェーズを重ねて右サイドにチャンスを作る。トライラインに迫る14番のキーガン・ファリアはギリギリのところで外に出されるも、ハイタックルがなければインゴールに入っていたとジャッジされてペナルティトライ。7-3と逆転した。
勝者の前半のトライはそれだけ。しかし、雨の降る中でも積極的に攻め続けたから、流れは青いジャージーから動かなかった。
11分、17分と反則を誘ってPGで加点し、攻め立てた後の前半33分には、CTBチャールズ・ピウタウがインゴールに入った。
ジャパンラグビー リーグワン2023-24 D1
【第11節ハイライト動画】 静岡ブルーレヴズ vs. トヨタヴェルブリッツ
TMOでの判定を経てトライはキャンセルされるも、直前の相手反則で得たPGをSOサム・グリーンが決める。
ハーフタイムを16-3のスコアで迎えた。
後半も、ブルーレヴズの奪ったトライは1つだけだった。
それでも点差以上の完勝と感じられたのは、全員の前へ出る姿勢が最後まで相手を上回っていたからだ。後半17分にはTMOでキャンセルとされるも、自陣22メートルライン付近で得たPKからパスをつなぎ、攻め切ったシーンもあった。
藤井監督は、「前半をしっかり攻撃し、後半につなぐプランでした。天候の悪い中でも、関係なく、しっかり攻めた。雨でもミスを恐れずに戦ってくれた結果」と話して選手たちの遂行力を評価した。
ゲームキャプテンを務めたFL庄司拓馬も、全員がアタックマインドを持ち続けたことを勝因に挙げた。
敗れたヴェルブリッツの姫野和樹主将は、雨中でのプレーの精度で相手の方が上だったと認めた。結果、ブルーレヴズの勢いを受けた。
反則数も相手の9に対し16。「練習の中で意識を高めていく必要がある。キャプテンとしてそこにアプローチしていく」と覚悟を口にした。
雨の中集まった5074人のファンがどよめいたシーンがあった。
後半8分過ぎだった。ブルーレブズ陣内で、相手ボールのラインアウト。投げ入れられたボールが後方に抜けた。そのボールを受けたHO日野剛志はすぐにキックした。
蹴られたボールがヴェルブリッツ陣22メートルラインを越えて転がり、外に出た。
50/22メートルキックでブルーレヴズボールのラインアウトとなり、直後の攻撃を継続。7フェーズを重ねてトライを挙げた。
試合後、34歳のベテランHOは「抜けてくるボールを取ることがよくあるので、普段からキックを練習いたんですよ」と相好を崩した。
「みんな褒められました」
キッキングコーチに、との声も出たと愉快に話した。
チームは3連敗後の2連勝。明るい空気が伝わってくる。順位も7位に上がり、6位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイとの勝ち点差は2となった。
ヴェルブリッツは8位に(勝ち点はブルーレヴズと同じ24)。トップ4入りへの道は険しい。
田村一博
前ラグビーマガジン編集長。鹿児島県立鹿児島中央高校→早稲田大学。早大GWラグビークラブでラグビーを始める。ポジションはHO。1989年、ベースボール・マガジン社に入社。ラグビーマガジン編集部に配属される。1993年から4年間の週刊ベースボール編集部勤務を経て、1997年からラグビーマガジン編集長に就く。2024年1月に退任し、現在は編集者、ライターとして活動。
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