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坂手淳史(埼玉ワイルドナイツ)
リーグワンのトップ4とスーパーラグビーの2チームが対戦した「クロスボーダーラグビー」4連戦が、2月3日から10日に行われ、リーグワンの1勝3敗で終わった。現在のスーパーラグビーは「スーパーラグビー・パシフィック」と銘打ち、ニュージーランド(5チーム)、オーストラリア(5チーム)、フィジーのフィジアン・ドゥルア、サモア、トンガの選手を軸にしたモアナ・パシフィカが参加して行われている。
今回、来日したのはニュージーランドの強豪であるブルーズとチーフスだ。同国代表オールブラックスの中心選手もいるとあって、リーグワンの上位陣とどんな試合をするか注目されたが、スーパーラグビーが一枚上と痛感させられる内容だった。初戦(2月3日、秩父宮ラグビー場)でブルーズと対戦した東京サントリーサンゴリアス(東京SG)は、序盤に3連続トライを献上して完敗。オフロードパスを次々につなぐブルーズの個人技に翻弄された。
しかし、翌日、熊谷ラグビー場でチーフスと戦った埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉WK)は、持ち前の堅守速攻のスタイルをチーフス相手にも発揮し、粘り強く守っての切り返し、モールを押し込んでのトライなどで快勝。リーグワンのレベルアップを証明して見せた。
藤原忍(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)
2月10日(ニッパツ三ツ沢球技場)は、横浜キヤノンイーグルス(横浜E)がブルーズと対戦。22-57で敗れたが思い切った攻撃を見せて観客を沸かせた。同日、昨季のリーグワン王者クボタスピアーズ船橋・東京ベイは、秩父宮ラグビー場でチーフスと対戦。キャプテンの立川理道、オーストラリア代表のSOバーナード・フォーリーを欠きながら、SH藤原忍、SO岸岡智樹らを軸にボールをテンポよく動かして僅差勝負を繰り広げた。
どの試合も見応えがあり、スーパープレーも飛び出して、観客を楽しませていた。唯一の勝利をあげた埼玉WKは、坂手淳史キャプテンが「強くなる、うまくなる、勝ち続けるという高いスタンダードを示すことができた」と、貴重な機会をものにして胸を張った。一方でロビー・ディーンズ監督は開催時期について苦言を呈した。「シーズンの真ん中にこのような試合をするのは、メンタリティー的に簡単ではない。(リーグの順位争いにつながる)競争もなく、ポイントもない。失うもののほうが大きかった」。
その言葉通り、この戦いはチャンピオンシップではなく、交流戦の扱い。選手のモチベーションは上がりにくいし、怪我を抱える選手、疲れのたまっている選手などは起用しないことになる。4試合終了後、リーグワンの東海林理事長が報道陣の質問に答えた。「2月だと日本のチームに負担が大きいことは改めて認識しています。一方で、将来によりよい形にしていくステップが踏めるのであれば、来年もやりたい気持ちがあります」。
来年以降の開催は未定。リーグワンとスーパーラグビーが終了する6月に両リーグの上位チームが集って優勝を争うのが理想だが、代表戦を直前にした時期で実現は容易ではない。リーグワン各チームの同意が得られれば、今年と同時期の開催が現実的かもしれない。オーストラリアも含めて各国の思わくもからむが、実現の方向で議論を進めてもらいたいと思う。
2021年に日本のサンウルブズがスーパーラグビーから脱退して以降、多くの日本選手がスーパーラグビーレベルを体感する機会を失った。そのことが、2023年ラグビーワールドカップで日本代表がプール戦で敗退した要因のひとつだった。東京SGの試合序盤の連続失点は、スーパーラグビーの強度を経験していない選手が多かったことも要因だろう。しかし、この経験により、東京SGの若い選手の意識は引き上げられたはずだし、他の3チームでも、目指すべきものの高さを痛感した選手が多かっただろう。リーグワン後半戦の戦いの様相すら変える大きな影響があったと感じる。
ニコラス・サンチェス(東京サンゴリアス)
リーグワンには世界のスーパースターが集い、日本の若い選手に良い影響を与えているが、ニュージーランドで頭角を現してきた若い選手と戦い、刺激を受ける機会は貴重だ。異質のラグビースタイルを体感することはリーグワンの選手だけではなく、コーチング、レフリングのレベルも引き上げることになる。
今後は試合の価値自体をどう上げていくかが重要だ。単なる交流試合であれば観客数は伸びないし、モチベーショもチームの考え方次第になる。優勝トロフィー、賞金などを設定するのも一案だ。チームとして目指しがいのあるもの、観客にとって、お金を払ってもスタジアムに足を運びたくなる試合にしていかなくてはいけない。踏み出した一歩をこのまま終わらせないように知恵を絞りたい。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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