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チェスリン・コルビ(東京サンゴリアス)
試合終了の笛が鳴ると、多くの選手が膝に手をつき、芝に倒れ込んだ。1月6日(土)、秩父宮ラグビー場で行われた東京サントリーサンゴリアス(東京SG)と、コベルコ神戸スティーラーズ(神戸S)の一戦はすさまじい激闘となった。44-36で東京SGに軍配が上がったが、18,867人の大観衆は、キックオフから一瞬たりとも目の離せない攻防を、固唾をのんで見守った。
午後2時35分、東京SGのWTBチェスリン・コルビのキックオフで激闘の幕は上がった。前半2分、先制したのは東京SGだった。神戸Sゴール前の神戸Sボールのラインアウトでボールがこぼれ、東京SGが確保して最後はHO堀越康介がインゴールにボールを押さえる。前半10分にはSO高本幹也がPGを決めて、スコアは10-0。ボール争奪戦では両者が激しくぶつかり合う。神戸Sは前半12分、相手陣22mラインでスクラムを得て、CTBナニ・ラウマペが縦突進。タックルを弾き飛ばしてトライを返す。東京SGは高本がPGを加え、スコアは13-7。
28分の神戸Sのトライは力強かった。ゴール前のPKから攻撃を仕掛けると、LOワイサケ・ララトゥブア、LOブロディ・レタリック、FLサウマキアマナキが次々に縦突進してトライ。しかし、キックの名手のはずのSOブリン・ガットランドのゴールが決まらず、13-12。31分、神戸Sが自陣のターンオーバーからパスをつなぎ、この日、山中亮平の欠場で急きょ先発となったWTB濱野隼大が走り切って、13-19と逆転に成功する。勢いづいた神戸Sはゴール前ラインアウトからのモールでHO松岡賢太がトライし、13-26と差とつけた。
高本幹也(東京サンゴリアス)
このまま前半終了かと思われたが、東京SGの底力がここで発揮される。40分を告げるホーンが鳴ったあとの神戸Sの攻撃で反則を誘うと、高本が約50mの正確なタッチキックで、ゴール前5mのラインアウトを得る。ここから密集周辺を何度も攻めたあと、一気に右オープン攻撃。コルビ、松島幸太朗とボールがわたり、松島がディフェンダーを振り切ってトライ。高本がゴールも決めて20-26として前半を折り返した。
ジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1
【第4節ハイライト動画】東京サンゴリアス vs. コベルコ神戸スティーラーズ
後半序盤は神戸Sが攻勢に出たが、東京SGが粘り、9分に堀越がトライ。高本がゴールを決めて、27-26と逆転に成功。その後、PR中野幹がトライを追加して、34-26とした東京SGは、23分、コルビが試合を決めるトライを奪う。ハーフウェイライン付近のラックから東京SGは交代出場のSH齋藤直人がボックスキックと見せかけて、左オープンに展開し、左奥のスペースにCTB尾崎泰雅がキック。タッチに出そうになっていたボールを神戸S山下楽平がフィールド内にはじいて生かそうとした。ここに走り込んだのがコルビだった。まるでそこにボールが転がってくることを分かっていたかのようなコルビの読み、全力のキックチェイスが際立つトライだった。スコアは、41-26。
その後、神戸Sもレタリック、交代出場の林真太郎がトライをあげたが届かなかった。最終スコアは、44-36。東京SGは5トライのゴールを高本がすべて決めたが、神戸Sは6トライを奪いながら3本のゴールが外れ、7点差以内のボーナス点を獲得することもできなかった。プレーヤーオブザマッチは、東京SGの堀越康介キャプテン。運動量豊富に働き続けて2トライをあげ、ディフェンス面でもピンチを防いでいた。
アーディ・サベア(コベルコ神戸スティーラーズ)
白熱の戦いは、個々のマッチアップも見応えがあった。南アフリカ代表のコルビのカウンターアタック、それを倒した後のブレイクダウンでボールを奪うニュージーランド代表アーディ・サベア、このボールをつないで攻めようとしたところに反応してタックルするニュージーランド代表サム・ケイン。スター選手が連続して交錯する場面も多く、そのたびに秩父宮ラグビー場は大いに沸いた。ディビジョン1第4節屈指の好カードは、この先も激闘が続くことを予感させる内容だった。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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