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Bシードの茗溪学園
東大阪市花園ラグビー場で始まった「花園」こと、全国高校ラグビー大会。明日の2回戦から登場するシード校の中から注目校を紹介していきたい。
今大会でBシードに選ばれ、上位進出が期待されているのが、1988年度大会に大阪工大高(現・常翔学園)と両校優勝した茨城の名門校・茗渓学園だ。
中高一貫校で、FW(フォワード)、BK(バックス)一体となってボールを動かす展開ラグビーを伝統的に武器としている。ただ、今季は「たまたま」FWに大きな選手が揃い、歴代のチームでは一番だという平均体重は96kgを超えて、展開力だけでなく、FWでも点が取れるチームとして春から鍛えてきた。
もうすぐ定年を迎えるという高橋健監督(59歳)が今季から部長に退き、茗渓学園中学の監督と、高校のHC(ヘッドコーチ)を兼務していた芥川俊英氏(43歳)が監督に昇格した。選手時代にSO(スタンドオフ)や、CTB(センター)としてプレーしていた芥川監督も中学から茗渓学園に通い、筑波大学、筑波大学院を経て、26歳から茗渓学園で教諭として携わってきた。
茗溪学園ラグビー部
茗渓学園と言えば、かつては生徒の2/3ほどが寮生だったが、現在は通学生が2/3ほどを占めているという。現在の部員は80名(3年生24名、2年生23名、1年生33名)。毎年、茗渓学園中学でラグビーを経験している選手が多く、高校から入って来る選手は5名前後だという。
前任者の高橋監督は選手の自主性を重視し、練習メニューや試合メンバーなども選手たちに決めさせていたという。芥川監督は昨季までのやり方をいきなり変えることはせず、そして指導者から一方的に押しつける指導ではなく「一緒に作り上げること」を柱とした。
「5人のリーダー陣と、毎週月曜日に30分くらいミーティングをして、自分が練習メニューの骨格を提案、それをリーダーたちにかみ砕いてもらっている。互いにチームを作っているという信頼関係につながっている。まだコロナの影響で1日1時間半くらいしかできないので、分単位でメニューを決めている」(芥川監督)。
左から田村、森尾、小川、川村のリーダー陣 ※岡本は不在
なお、リーダーは主将のWTB(ウイング)森尾大悟、副将のFL(フランカー)小川和真、副将のSO(スタンドオフ)岡本泰一、FWリーダーのHO(フッカー)川村航平、CTB(センター)田村優太郎(いずれも3年)の5人だ。
他にも南アフリカでラグビーを始めたというスクラムの要PR(プロップ)和田翔太、身長187cmのLO(ロック)諏訪賢介(ともに2年)、PRやバックローでもプレーできるLO(ロック)小杉太郎(3年)もいる。また、BKでもSH(スクラムハーフ)石黒春輝(3年)、CTB山口海晴(2年)、WTB川崎仁聖、FB(フルバック)林勇太(ともに3年)らも能力が高い。
なお、HO川村、LO小杉、CTB田村、WTB川崎、WTB森尾、FB林の6人は高校日本代表候補に選出されており、CTB山口はU17日本代表だ。
「トライを取っているのはFWが多いが、なんだかんだ、茗渓のDNAなのか、主導権を握っているのはBKですね(苦笑)。ただ、花園ではFWの力が大きく影響してくると思う」(芥川監督)。
芥川監督(右)と石川コーチ
コーチ陣も充実しており、芥川監督がリーダー陣と話し合って全体像を描けば、今季から寮監となった石川千暁BKコーチ(筑波大学OB)、スクラムの石嶋照幸コーチ(茗渓学園、ワールドOB)、他にもFWは今野達朗コーチ(茗渓学園OBで現クボタのコーチ) 、三輪谷悟士コーチ(茗渓学園、三菱重工相模原OB)が指導し、筑波大学も指導する知念莉子S&Cコーチもおり、細かい部分を指導してもらっているという。
トレーニング・部室棟
また、2022年7月には学校創立40周年記念して「トレーニング・部室棟」が完成、ウェイトルームが完備された。1年ほど前から、芥川監督が平日は毎朝7時半に鍵を開けて、選手たちは1時間ほどウェイトトレーニングを重ねてフィジカル強化を図ってきた。
茨城県予選はライバルの清真学園との対戦だったが、危なげなく28-0で快勝。花園出場が決まってから、アタックではゲームライクな練習を、ディフェンスでは外国人相手を想定した練習を重ねてきたという。12月に入り、桐蔭学園(神奈川)と合同練習や目黒学院(東京第2)と試合を行って手応えを得た。
ディフェンスの確認をする選手たち
BKリーダーのCTB田村は「昨季はキック中心のアタックだったが、今季はキックも使うが、全員が同じ画を見るように練習してきた。どこからでもアタックする準備はできている。花園ではやるべきことを60分間やるように意識したい」と自信をのぞかせた。
FWリーダーで3度目の花園だというHO川村は「春先は課題があったが、今野コーチらにいろいろ指導してもらい、FWがチームの強みになってきた」と言えば、副将のFL小川は「芥川監督とより親密となり、チームを作ることができた。1年かけてモールにこだわってきた。モールから起点に点が取れるチームになったので花園ではそこを見せたい」と意気込んだ。
7人制でも活躍し、水戸から通うWTB森尾主将は「例年、BKが強みだが、今季はFWが強くて、その土台があるからこそ、BKも活躍できる。FW、BKの両方に得点力があるのが強み。花園ではステップ、ランで、キャプテンとしてチームの士気を上げられるようなプレーがしたい」と語気を強めた。
練習が終わるたびに選手たちで「スモールトーク」
チームの目標は2度目の日本一である。そのために新チームとなってスローガンは「覚悟」を掲げた。「全国制覇するためには、練習もオフでも、部員1人1人が日本一になるための行動をしないといけない。そのための『覚悟』を持とうということで、それをキーワードにした」(森尾主将)。
現在の高校3年生が中学3年時、練習試合では負けなしだったものの、コロナ禍の影響のため、公式戦がすべてなくなったという。当時は中学校を指導し、「高校でまた日本一を目指して頑張ればいい」と励ましていた芥川監督にとって、現在の高校3年生は「思い入れのある代です」と話す。
芥川監督は指揮官として花園は初めてだが、すでにコーチとして何度も来ているため、特別な気負いはない。「生徒たちが頂点を目指して、どこまで行ってくれるのかが楽しみです。それだけのポテンシャルを持っているチームだと思っています。花園に行って、最後の成長が見られたら監督冥利に尽きます」と目を細めた。
Bシードの茗渓学園は2回戦からのスタートとなり、12月30日(土)には1回戦で関商工(岐阜)に勝利した北信越王者・日本航空石川(石川)と相対する。また、同じ山には九州大会ベスト4でBシードの大分東明(大分)が入った。
どこからでもトライを狙う伝統の展開ラグビーに加えて、全国屈指のFWの力強さもある。どのポジションにも将来性豊かな選手が多く、初の単独優勝を目指す力あるチームとして、12大会連続29回目の花園へ挑む。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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