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激戦を制したのは前回王者
10月15日(日)、ラグビーワールドカップ2023の準々決勝の4試合目が行われ、パリ近郊サン=ドニの「スタッド・ドゥ・フランス」ではプールA首位通過の開催国フランス(世界ランキング3位)と、プールBで2位の前回大会王者・南アフリカ(世界ランキング2位)が激突した。
両チームの過去の対戦成績はフランス代表の12勝27敗6分。2018年までは南アフリカが7連勝していたが、昨年11月にはフランス代表が30-26と勝利している。なお、ワールドカップでの対戦は南アフリカ代表が、19-15で勝利した1995年の南アフリカ大会の準決勝以来2試合目となった。
4連勝で決勝トーナメントに進出した準優勝3回のフランス代表。3週間前、ナミビア代表戦で頬骨をケガしたキャプテンのSH(スクラムハーフ)アントワーヌ・デュポンが復帰。それ以外のメンバーは、60-7で勝利したプール最終戦のイタリア代表戦からデュポンに変更したのみにとどめた。
頬骨の骨折から復帰のSHデュポン
FL(フランカー)シャルル・オリヴォン、イタリア代表戦のPOM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)NO8(ナンバーエイト)グレゴリー・アードリッド、SO(スタンドオフ)マチュー・ジャリベール、現在6トライでトライランク首位に立つダミアン・プノがWTB(ウィング)を担い、FB(フルバック)には61点で得点ランキングトップのトマ・ラモスらが引き続き先発する。ベンチはFW6人、BK2人で構成した。
フランスvs.南アフリカ戦メンバー
一方、4度目の優勝を目指す「スプリングボクス」こと、南アフリカ代表は、予選プール初戦でアイルランド代表に8-13と接戦で敗れたものの、他の3試合は危なげなく勝利し、準々決勝に駒を進めた。プール最終戦のトンガ代表戦から11人の先発を入れ替え、アイルランド代表戦とほとんど同じメンバーを組んだ。
キャプテンのFL(フランカー)シヤ・コリシを筆頭に、LOにはフランコ・モスタート(三重ホンダヒート)、FLピーター ステフ・デュトイ(トヨタヴェルブリッツ)、司令塔はSOマリー・リボック、CTBはダミアン・デアレンテ(埼玉パナソニックワイルドナイツ)と、ジェシー・クリエル(横浜キヤノンイーグルス)のコンビ、WTBは大会後に東京サントリーサンゴリアスに加入するチェスリン・コルビが入った。
ラグビーワールドカップ2023 フランス大会
【ハイライト動画】準々決勝 フランスvs.南アフリカ|激戦、開催国フランス、1点届かず
ベンチにはFLクワッガ・スミス(静岡ブルーレヴズ)、SHファフ・デクラーク(横浜キヤノンイーグルス)、追加で招集されたSOハンドレ・ポラード、FBウィリー・ルルー(元トヨタヴェルブリッツ)ら、前回大会で優勝を経験した選手が入った。
前半は予想に反して、トライの取り合いとなった。前半5分、いきなり開催国の「レ・ブルー」に好機が訪れる。4分、相手陣22mのラインアウトからモールを押し込み、最後はSHデュポン、WTBプノーとクイックハンズでつなぎ、PR(プロップ)シリル・バイユが右隅にトライ、FBラモスがゴールを決めて、7点を先制する。
前半9分、南アフリカ代表もハイパントキックで崩し、こぼれ球をWTBカートリー・アレンゼが拾って、そのまま右中間にトライ。SOリボックがゴールを決めて、7-7の同点に追いつく。18分にも、再びハイパントキックから崩し、CTBデアリエンデがゲインし、ラックの後、SHコーバス・ライナーからパスを受けた、CTBデアリエンデが押さえて12-7とリードした。
22分、フランス代表もSHデュポン中心にアタックを仕掛けてゴール前まで攻め込み、相手の反則後、SHデュポンがクイックタップから、HO(フッカー)ペアト・モバカがトライ。しかし、FBラモスのコンバージョンキックは南アフリカのWTBコルビがチャージし、12-12の同点でフランスの勝ち越しはならなかった。
26分、南アフリカ代表はターンオーバー後、CTBクリエルがグラバーキック、そのボールをWTBコルビが拾ってトライ。19-12と再びリードしたが、31分、フランス代表が相手陣奥のラインアウトのチャンスを得て、サインプレーから攻め込み、最後はラックサイドをPRバイユが右中間に2本目のトライを挙げて、19-19の同点に追いついた。
優勝候補同士の対戦は激しい攻防が続いた
前半終了間際、南アフリカ代表LOエベン・エツベスが危険なタックルで、シンビン(10分間の途中退場)となり、フランス代表はそのペナルティから得たPG(ペナルティゴール)をFBラモスが沈めて、22-19と3点リードして折り返した。
後半は一転、膠着した状態が続くゲーム展開となった。数的有利だったフランス代表だが、得点を重ねることができない。ようやく試合が動いたのは14分だった。相手の反則から、フランス代表FBラモスが右中間からPGを決めて25-19とリードを6点差に広げる。
その後、互いにベンチメンバーを投入すると、南アフリカ代表はスクラムで優位に立つ。キックで攻め込み、相手陣奥で反則を得る。タップで攻め込み、最後はLOエツベスが力強いランで、インゴールにボールをタッチダウン、途中出場のSOポラードがゴールを決めて、26-25で逆転に成功。さらに29分、53mのPGをSOポラードがしっかり沈めて、リードを4点差に広げる。
逆転を狙うフランス代表も裏へのキックから攻め込み、32分、相手の反則を誘ってFBラモスがPGを決めて、28-29と1点差に迫る。34分には、南アフリカ代表がモールを押し込んだ後、WTBコルビがDG(ドロップゴール)を狙うが外れる。さらにフランス代表が22mドロップアウトをダイレクトタッチにしていまい、南アフリカ代表が相手陣で攻める時間が続くが、得点を挙げることができなかった。
最後の攻撃をしのいだ南アフリカ
残り時間2分あまり、ホームの大声援を背に、フランス代表はスクラムを起点にアタックを継続するが、最後は相手の激しいディフェンスの前にノックオンでノーサイド。南アフリカ代表が1点差で勝利を収めた。
POMにはセットプレーをリードした南アフリカ代表HOボンギ・ンボナンビが選ばれた。「素晴らしい試合だった。チーム全員の努力の賜物だ。絶えず国歌を歌い続ける満員のスタジアムで、ホストチームと戦うのは簡単なことではないことはわかっていた。1人だけではなく、チームの功績は大きい。だが、まだ2試合ある。まだ何も手にしていない。自分たちのやるべきことにフォーカスする」と語った。
自国開催の大会をベスト8で終えたフランス代表のファビアン・ガルディエHCは「私はまず、ファン、家族、そして毎日私たちを信じてくれている人々、スタッフ、選手のことを考える。私の最初の思いは彼らのためにある。今夜、フランス代表は勇気を出さなければならない。私たちは互角にプレーし、たとえフィニッシュできなかったとしても、力を発揮する瞬間があったという印象を持っている」。
「時には南アフリカが上回っていたこともあった。スタッツやデータはまだ持っていないが、良い時も悪い時も含めて、我々は彼らと互角以上に戦えたような気がする。後悔はしていない。今日のような負け方をするのは当然だ。自分たちの可能性を最大化するためにできることはすべてやったし、やり遂げた」と振り返った。
キャプテンSHデュポンは「初めてのノックアウトゲームで、激しさも内容的にもビッグゲームだったが、勝てなかった。ここから学び、経験を積んでいく。悔しさや失望はたくさんあるけれど、このような試合から学んでいきたい」と前を向いた。
クロスゲームを制した南アフリカのジャック・ニーナバーHCは、「まずはフランスに敬意を表したい。これほどタイトになることはわかっていた。大きな戦いになることは誰もがわかっていたと思う。2つのいいチームがあって、不運と幸運があって、私たちは良い方に回った」。
「勝敗を分けたのは1点だった。僅差だったと思うが、それでも最後まで粘った選手たちを称えたい。(準決勝は)素晴らしい挑戦になると思う。いいチャレンジになると思うよ。ノックアウトの試合は何が起こるかわからない。イングランドがリードしていたのに、フィジーが盛り返し、さらにフィジーも最後まで追い詰めた。最後まで僅差の勝負になると思う」と先を見据えた。
ファンと喜ぶFLコリシ
キャプテンのFLコリシは「どれだけタフな試合になるかは分かっていた。ベンチから出場した選手たちを褒めなければならない。出場しなかった選手たちも、この試合に向けていろいろ準備してくれた。そして最も重要なのは、南アフリカの人々から私たちが受けたサポート」。
「彼らはここにいることはできなかったけど、学校で僕らのために歌ってくれたり、ビデオを見せてくれたりした。それが僕らがプレーする理由なんだ。今、ここにいる僕らの家族もそうだ。僕たちは国のためにプレーしている。このフィールドにいるのは、もう僕たちのためだけじゃない。(次の試合も)勝っても負けても、今日のような戦いを見せたい」と胸を張った。
勝利した南アフリカ代表は準々決勝に進み、10月21日(土)、スタッド・ドゥ・フランスで、同じく準々決勝に勝利したイングランド代表とファイナルをかけて争う。
文:斉藤健仁/Photo by Yuuri Tanimoto
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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