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勝負は残酷だ。
どちらかが準々決勝で大会を去らなければならない。
ラグビーワールドカップ(RWC)2023フランス大会は、決勝トーナメントに突入。
日本時間10月15日(日)の準々決勝、パリ郊外のスタッド・ド・フランスでは、世界ランキング1位のアイルランドと、同4位のニュージーランドが激突する。
しかし準々決勝を目前に控え、不安を覚えているアイルランドサポーターは少なくないだろう。
アイルランドは過去9大会中7大会、準々決勝で敗退している。
7度目の挑戦だった2019年大会は、ニュージーランドに14-46で完敗。またも4強の壁に阻まれ、選手、関係者、サポーターの「今度こそ」の思いは挫かれた。
もはやニュージーランドに対する苦手意識はないはずなのだ。
2016年に初対戦から111年目で初勝利。2022年には敵地で2勝1敗と勝ち越しており、LOタイグ・バーンは当時を振り返って「アウェーでのシリーズ勝利はそれまで成し遂げたことがなく、そこから得られる自信はある」と語った。
キャプテンを務めるSOジョニー・セクストンも今週、大一番へ向けて「ここ数年ニュージーランドとは良い戦いをしてきた。また接戦になるのでは」と自信の滲むコメントを残している。
ただ脅威となりうる存在が相手首脳陣におり、在任中に2度(2016、2018)オールブラックスを破った元アイルランド代表HCのジョー・シュミットが、母国ニュージーランドのコーチングスタッフに入っている。
アイルランドの内情を知る人物であり、SOセクストンも「ジョー(シュミット)のコーチングの成果が見られる」と警戒する。
心配の種は尽きない。しかしいまや世界ランキングは最高位だ。
オール・アイルランドの悲願達成へ向けて、アンディ・ファレルHCはメンバー23人を発表。プール最終戦から先発メンバーに変更はなかった。
大会前の負傷から無事復帰したHOダン・シーハン。怪力タイトヘッドPRのタイグ・ファーロング。2022年の世界最優秀選手である精密タックルマシーン、FLジョシュ・ファンデルフレイアー。
絶対的司令塔のSOセクストンをはじめ、最多61回のランを記録するなど絶好調のCTBバンディ・アキ。そしてニュージーランド出身で元チーフスのWTBジェームズ・ロウにとっては、W杯で母国と決闘する運命となり、キャリア最大級のチャレンジだ。
一方のニュージーランドはプールAで3勝1敗。
大会開幕戦でチーム史上初のプール戦黒星を経験したが、その後は3連勝。ナミビアに71-3、イタリアに96-17、ウルグアイに73-0と大勝が続いた。プールステージを終えて258得点、38トライは最多だ。
ただ大勝がポジティブな要素かどうかは議論の余地があるだろう。まして大勝が3度続いた後、プール戦で南アフリカを8得点、スコットランドを14得点に抑えたアイルランドと対戦しなければならないのだ。
ニュージーランドのイアン・フォスターHCは、この大勝の経験がマイナスに作用する可能性について問われ、「接戦で重要になってくる面には自信がある」とした上で「これが現実であり私たちは満足している」と話した。
国技を愛するニュージーランド国民は優勝を望んでいる。
必勝の一戦へ向けて、フォスターHCは73得点したウルグアイ戦から先発6人を変更。
NO8アーディー・サヴェアをはじめPRイーサン・デグルート、LOスコット・バレット、SHアーロン・スミス、CTBリーコ・イオアネ、FBボーデン・バレットが先発へ。
引き続きの先発では怪我からFLサム・ケイン主将、CTBジョーディー・バレットら現状ベストのメンバーが揃った。
ニュージーランドは負ければ2007年フランス大会以来、ワーストタイの屈辱だ(ウェールズ・カーディフでフランスに18-20)。
一人のラグビーファンとしての思いを語らせてもらえるならば、どちらにも負けてほしくない。
オールブラックスには強くあってほしい。しかしアイルランドにも“8度目の正直”を味わってほしい。
勝負は残酷だ。運命のキックオフは、日曜日の午前4時(現地時間は土曜日の午後9時)だ。
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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