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SO松田力也
ラグビーワールドカップでサモア代表に勝利し、2勝1敗としたラグビー日本代表。勝利すればベスト8が決まる、10月8日(日)のアルゼンチン代表戦に向けて、9月30日から、トゥールーズで練習を開始した。
この日、報道陣に公開されたのはストレッチをしているシーンのみだった。なお、ケガをした副キャプテンのSH(スクラムハーフ)流大の姿は見られなかった。
練習後には、ワールドカップで10番を背負い続けているSO(スタンドオフ)松田力也が報道陣に対応した。SO松田は初戦からプレースキックを16本中15本決め、成功率は驚異の93.8%を誇っている。また、37得点は得点ランキングでも5位(9月29日時点)に入っている。
昨季のリーグワンではキック成功率85.5%でベストキッカー賞に輝いていた松田だが、国内での5戦、そして直前のイタリア代表戦でもプレースキックの調子を落としていた。
PGを決めるSO松田力也
しかし、ワールドカップに入ってから一気に復調しており、その要因を尋ねると「イタリア代表戦まで、自分のキックができてなかったので、もう一度ポイントを見直していく中で、注目するところがズレていて、それを修正した。遠征が続く中、身体も変わっていたので、身体の調整が大きかった。今、うまく状態が戻って、いいキックが蹴れている」と話した。
フランスまで個人的に帯同していた佐藤義人トレーナーのアドバイスが大きかったという。フランスに来るまでは、ルーティンの1つとして抜刀のようなポーズをしていたが、今は、両肘を曲げて手を前に出して、そのままの状態で蹴るフォームに変える決断をした
松田は「右肩が下がらないことをすごく意識しているので、それをより意識するために少しフォームも変えた。右肩を落とさないのがキーで、肘が伸びた状態だと腕が下がることが多いので、初めから構えた状態で肘を曲げて、そこから自然と上げる形にした」。
「いきなりだったが、こっちの方が絶対いいと思ったので、変えることに不安はなく、自信を持ってやった結果、いい積み重ねができている。他にもいろいろあるが、今の感じで、そこをしっかりすれば絶対キックが決まると思っているので、プレッシャーがかかる中でも、しっかり自分でルーティンを信じて、自分のキックを信じて蹴るだけ」と話した。
ラグビーワールドカップ2023
【ハイライト動画】プールD 日本vs.サモア|激戦を制したジャパン、サモアの猛追を振り切る
サモア代表戦では1本、プレースキックを外したが、その後、しっかり決めていた。「外したことは、もちろんいいことではないが、自分のキックが蹴れないと外れるのはわかっている」。
「外し方を知っているからこそ、次にどうすれば入るかがわかっているので、もう一度、原点に戻って自分のルーティンをやり、自分のキックをし続けるだけだと思った。引きずることなく、いい形で切り替えられている」と振り返った。
報道陣から新しいキックのルーティンが「小さく前に習え、みたいですね?」と言われると、松田は「マノ(ロマノ レメキ ラヴァ)からは「Tレックス」(ティラノサウルス)に似ていると言われた」。
「帝京大学の同期からは、恐竜的でガオガオみたいで「ガオールーティン」みたいに言われていましたが、『前に習え』はちょっと…。いいネーミングがあれば作ってほしい(笑)」と笑顔を見せた。
また、今大会からプレースキックの前に導入された、キックのカウントダウンである「ショットクロック」に話しが及ぶと、松田は「ワールドカップが初めてだが、意外に気にはならなかった。(60秒以内の)ショット(ペナルティキック)の方が気にしている。コンバージョンは90秒で、そんなに長くかからないタイプなので、気にせず蹴れている」と話した。
司令塔として、ワールドカップに入ってからだんだん調子がよくなってきたアタックに関して松田は、「テンポがある時に、そのスピードを活かして、相手にプレッシャーをかけ続けていく。これまでジャパンでやってきたので、大舞台で試合を重ねていく中、すごく良くなっていると思う」。
そして、「9番、10番だけでなく、全員が同じ画を見る、FW(フォワード)もBK(バックス)も一体になるのが1番の鍵だと思う。チーム全員が、いいコミュニケーションを取って、共通理解でいいイメージを持っている」と手応えを口にした。
プール最終戦のアルゼンチン代表戦に向けて、松田は「フィジカル、セットプレーで絶対プレッシャーかけてくると思うし、そこでしっかり自分たちが良いボールコントロール、ゲームコントロールして相手にプレッシャーを、どうかけ直すのかがキーになってくる」。
トゥールーズで練習中のSO松田力也
「もちろん、ペナルティ、ミスも減らさないといけないし、そういう競った中でいい判断をして、チャンスは絶対あるし、その1回のチャンスを全員でスイッチオンして、ものにしていくことが重要。冷静に素早く判断して、スペースにボール運べるように準備したいと思うし、それができれば通用するし、絶対、勝てると思っている」と腕を撫した。
2019年大会は控えでの出場に終わり、2023年大会は10番を背負って出場していることを聞かれて、「2019年が終わった後から、この舞台に10番で試合に出て、チームの勝利に貢献することを、すごく強く思ってやってきたし、今、それがいい形で、ステップアップできていると感じている」。
「サモア代表戦は苦しい展開になったが、勝ち切ることができたことは自分としても、チームとしても自信になったし、いい状態で次のアルゼンチン代表戦に臨める。自分たちがやってきたことをしっかり出せれば、どこの国にも負けないし、自分たちの準備に対する姿勢や、ラグビーに対する理解度は世界でもいいものを持っていると思っている」。
「それをアルゼンチン代表戦では出して、結果で示したい。まずは、1日1日を大切にして、いい準備をすることが必要。ここまでやってきた自信は、ゲームでどんどん出てくると思うので、スタッフと33人、これまで合宿してきたメンバー全員の思いを背負って戦いたいし、それを発揮するだけ」と前を向いた。
前回大会では控えに終わった悔しさをバネに、ワールドカップという大舞台で、司令塔として、そして「スーパーブーツ」として躍動している松田。アルゼンチン代表戦でも10番としてチームを勝利に導くキック、ゲームコントロールに大いに期待したい!
文/写真:斉藤健仁/Photo by S.IDA
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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