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ラグビー日本代表、サモアに勝利
現地9月28日(木)、ラグビーワールドカップのプールDでサモア代表と激突した日本代表は、サモアのフィジカルに苦しんだが、28-22で勝利を収め、プール最終戦のアルゼンチン戦に2大会連続のベスト8進出を懸けることとなった。試合後のHC(ヘッドコーチ)・選手のコメントを届けする。
◆ジェイミー・ジョセフHC
「非常にタフな試合で、サモアの選手は立ち向かって来たし、彼らには敬意を払いたい。サモアが仕掛けてくる場面もあったし、試合を通して終始奮闘し続ける必要があった。チームとしては来週に向けて、1つ2つ取り組まなければならないことがある。
――流選手の欠場理由と現在の状況、また先発した齋藤選手の評価は?
「流は練習でふくらはぎに張りを覚え、検査したら軽い炎症を起こしていた。幸いにもチームには、他にいいSH(スクラムハーフ)が2人もいるので、昨日、彼を欠場させる決断は難しいものではなかった。ナギ(流)が来週の試合には出られる状態であることを願っている。
齋藤直人はこの試合に急遽先発することになったが、非常にいいパフォーマンスだったと思う。さらに、福田健太も評価したい。今年、代表に入って出場チャンスが、これまで得られていなかったにもかかわらず、常にトレーニングに励み、ポジティブでいつづけてくれた。非常に信頼できる選手の1人で、こうした選手がチームにいることが、私たちは本当に幸運だった」
――試合中、10点差でPG(ペナルティゴール)を狙った決断は?
「隣にいる姫野和樹の判断だから、彼に聞いた方がいいだろう。見ていても、それは妥当だと感じたし、和樹がそれが正しい判断だと思ったなら、我々は常に彼の決断を支持する。チームには経験豊富な選手も多いし、試合中はコーチ席にいる人間よりも、実際にプレーして感じている選手たちの状況判断の方が優先されるし、我々はそれを信頼している。
ここで座って決断について話すのは簡単だ。だが、試合のプレッシャーにさらされる状況ではもっと難しい。プレッシャーの中で正しい決断を下せるように、そして正しい決断を下す勇気を持てるように、選手たちに準備をさせている。ただ、常に判断が明確に下せるわけではないので、そうならないように選手自身をバックアップする必要はある」
ラグビーワールドカップ2023
【ハイライト動画】プールD 日本vs.サモア|激戦を制したジャパン、サモアの猛追を振り切る
――この勝利は次のアルゼンチン代表戦に向け、どのような意味があるか?
「それは準々決勝に進むチャンスを得たということだけだ。今日は勝たなければならないテストマッチだった。試合そのものは、まさに腕相撲のようだった。サモアの選手たちは大きくてフィジカルが強く、我々のラグビーにとっては非常に厄介だった。7月もサモア代表と札幌で対戦したが、経験豊富な選手がカードをもらうなど、自分たちのパフォーマンスにがっかりするような部分もあった。しかし、今日の試合は違った。
サモアにとってレッドカードは大きな痛手となったが、両チームは互角だったと思う。私たちの間には大きな差はない。4年前のワールドカップでの対戦と比べると、今日対戦したサモアのチームはまったく違っていて、経験も豊富で、いい選手が揃っていた。両チームとも本当に成長した」
◆NO8(ナンバーエイト)姫野和樹キャプテン
「本当にタフなゲームだったし、勝ててホッとした。チームを誇りに思うし、チームのみんなで勝ち取った勝利。自分たちには勝つプランニングがあったし、それを100%遂行することを求められていた。みんなが自分の役割を理解して、遂行してくれた結果だと思う。
アタックのクオリティーが上がっていることは喜ばしいことだし、アルゼンチン戦に向けてポジティブだと感じた。その中で、FW(フォワード)が3トライ取ったことはFWの選手としてはうれしく思う。トライが取れて、チームとして点数が重ねられたことは率直にうれしい。
ただ、きつい時間帯あるということは準備の段階でわかっていた。は拮抗したきつい状況でのキーワードとして、「サムライタイム」という言葉を作った。そうした状況で自分たちの役割、勇気、メンタリティーを出すために、「サムライコール」で全員が自分たちで同じ画を見て、ディフェンスできたことはいいことだと思う。
アルゼンチン戦に向けては、そこまで大きく自分が変える必要はない。全員が同じ画を見て、一貫性持ってやることが一番大切なこと。1週間の準備でチームをドライブしていければいいと思う」
◆FL(フランカー)リーチ マイケル
「ギリギリだったが、結果的に勝ててよかった。トライはチームワークのトライで、自分はボールを置いただけ。チームにとって、この勝利は大きいし、今日は80分通して規律が良かったと思う。サモアはフィジカルに自信を持っていて、特にFWにパワーがあった。次の試合も負けられないので、今日はリカバリーして来週に向けてしっかり準備したい」
◆WTB(ウィング)松島幸太朗
「ベスト8につながる勝利なのでチームで喜んた。直すべきところはたくさんあるので、また気を引き締めないといけない。自分たちのぬるい部分が時々出てしまったので、それをなくさないといけない。
アルゼンチン代表はかなりプレッシャーをかけてくると思うので、自分たちはそこを受けずに、自分たちからプレッシャーかけていきたい。目の前のアルゼンチン戦に向け、精度高い準備をして、しっかり仕上げていきたい」
◆SH(スクラムハーフ)福田健太
「チームのみんなもそうだが、これまで多くの方々に支えられて、日本代表としてワールドカップでデビューすることができ、うれしく思う。メンバー入りは昨日決まった。もちろん、プレッシャーもあったが、メンバー外だった時も、相手チームの分析や、日本代表のサインを覚えていたので、準備の面では変わったことは何ひとつなかった。
短い出場期間だったが、小さい頃から憧れていたワールドカップの舞台。ピッチに立った時はすごくうれしく思った。ただ、テストマッチの強度はリーグワンでは感じられないものを、コンタクトして感じた。その強度に、テストマッチのスタンダードに慣れていかないといけない、という課題も見つけられてよかった。
ナギさん(流大)のプレーや、周りとのコミュニケーションの取り方が、普段からすごく勉強になっていた。今日、試合前に「思い切りやってこい」と言ってくれたことが、自分の緊張を和らげてくれました」
◆HO(フッカー)堀江翔太
「しっかり準備してきたことが、ゲームに出たので、次のゲームに向けてがんばりたい。最後はやばかった。ベンチからもヒヤヒヤしながら見ていた。リザーブも含め、最後までゲーム出ているメンバーが身体張り続けたので、本当に勝ててよかった。
(イエローカードは)ちょっとヒヤッとした。ほんま、危なかった。これでレッドだったら、どないしようかなと思った。チームに迷惑かけたくないし、イエローで何とか、1トライにチームメイトが抑えてくれたので、良かった。
アルゼンチン戦は同じ通りにいくとは限らないので、しっかりと自分たちがどういうふうにすればもっと良くなるかを見直して、次の試合に臨みたい」
◆SO(スタンドオフ)松田力也
「勝ってまず安心した。キックは常に100%成功を目指している中で、今日は1本外してしまった。それが決まっていれば、最後あんなタイトな展開にならなかったのでもっともっと精進したい。(1本外してしまったが)もう1本ずつ集中して切り替えてやるだけ。ここから自分のキックを信じてやり続けていきたい。
(SHが試合前に交代)流大さん変わるのは大きいが、齋藤直人も福田健太もすごく良い準備してきたので、誰が出ても遜色ないプレーはできると思っていたし、みんな一緒に信じてやるだけだと思っていた。(アルゼンチン戦は)これに勝たないといけない。最後、全員で良い準備してベスト8にいけるように、力を出し切っていきたい」
◆CTB(センター)中村亮土
「勝ち切るというところで、非常に良い結果が出たと思う。サモアはフィジカルで、前面にパワーを押し出してくるチームに対して、自分たちがどこまでできるかという勝負だったので、そこはお互い意地の張り合いだった。ファンの皆さんにも良いゲームを見せることができたと思う」
――身体を張っていた。ご自身のパフォーマンスはどうだったか?
「非常にタフなゲームの中、いいプレーもあり、もうちょっと直さないといけないところもあったので、次に向けて、もう1回レベルアップして臨みたい。(アルゼンチン戦は)次がファイナルだと思って最高の準備をして、チーム一丸になってしっかりとフィジカルな準備をしながら、日本代表のラグビーができるように1週間準備したいと思う」
◆PR(プロップ)具智元
「負けられない、絶対に勝たないといけない試合だったので、まずは勝って本当に良かったと安心した。最後はちょっと危ない場面もあったが、すごく雰囲気もいいし、このまま勢いに乗ってアルゼンチンに勝って、ファイナルまでいけるようにがんばりたい。
スクラムは北海道で試合をしたとき、すごくプレッシャーをかけられる部分が多かった。今日も1回、スクラムでペナルティを取られた場面があったが、すぐに堀江さんとコミュニケーションを取って方向性をあわせたら、逆にプレッシャーかけるところまでいけたので、そこはすごく良かった。
ディフェンスはちょっと受ける場面もあったが、基本は前に出てダブルタックルを決めて、すぐ立ち上がった。みんなが立ってディフェンスすることが多かったので、すごく良かった」
◆FB(フルバック)レメキ ロマノ ラヴァ
「最後までどうなるかわからなかったが、本当に勝ってよかった。(FBで大会初先発)準備はそれほど変わっていないが、自分の仕事をやって、国とチームメイトのためにがんばれればいい、と思っていた。
トライを取りたかったけれども…。絶対、子どもから聞かれる(苦笑)。POM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)のトロフィーは子どもにあげます。ボールを持ったら常に前にいけたし、きつい時でもちゃんといけて、プレッシャーをかけることができた。プラン通りうまく成功したと思う。
ワールドカップは本当に最高の雰囲気、今までのきつい練習は、今日のためにやってきたと思う。本当に最高。日本人も結構多かったし、みんなの応援の声、めっちゃ聞こえた。最後のきつい時、めっちゃ力になった!(アルゼンチン戦は)絶対勝つ!本当に、来週絶対トライを取ります!」
◆SH齋藤直人
「急遽先発となったが、リザーブと先発では多少違いはあるが、基本的には変わらない。チームが何をやりたいのか、それに対して何を求められているのか、そこをはっきりさせて試合の準備をしてきたので、動揺することもなく、試合に入れた。勝って、もうすごくうれしいのと少し安心した。
この試合に勝たなければ、プール戦を突破できないのは意識していた。会見ではプレッシャーをあまり感じないと言っていたが今、この立場になって少しはプレッシャー感じていたのかなと思う。
流大選手にはチームを『勝たせてこい』と言われた。チームのためにプレーするのはもちろんだが、個人的には大さんの分も背負ってプレーするというのを決めてやっていた。今日はしっかり、リカバリーとリラックスして、明日からアルゼンチンに向けて少しずつ準備して必ず勝ちたいと思う」
◆FLピーター・ラブスカフニ
「本当にすごくうれしい気持ち。タフな試合になったが、こういう試合になることはゲーム前にわかっていた。生き残りを懸けた試合だった。自分たちもそうだが、相手もギブアップせず、最後まで戦い抜いた試合になった。最終的に自分たちが勝ったことがすごくうれしい。
トライを取って貢献できたことは本当にうれしいし、あのトライでチームに勢いをつけることができた。あのトライはチームにおかげだし、チームのみんなががんばったおかげで取れたと思っている。今日はしっかりと楽しむが、自分たちの旅は終わっていないので、また次の試合に向かってがんばっていきたい」
◆LO(ロック)ジャック・コーネルセン
「フィジカルな試合だったので、回復するためには2、3日のオフが必要だろう。でも、勝つことができたし、来週のアルゼンチン戦に向けて、準々決勝進出に向けて大きなチャンスを得ることができた。
私たちのディフェンスに誇りを持っていた。良いディフェンスから多くのエネルギーと勢いを得ることができる。サモアはとてもいいチームで、特に後半はプレッシャーをかけてきた。この80分間のパフォーマンスは、我々にとって大きなものになる。このような勝利から得られる学びは多い」
◆PR稲垣啓太
「勝ったことが良かったし、一体感を上げるいいきっかけになる。相手のラインアウトにどれだけプレッシャーをかけるかを1週間すごくやった。プレッシャーをかけるとことができたが、モールで取られたことはFWとしては悔しい。次のアルゼンチン戦もモールで仕掛けてくると思う」
――前半15分頃、ディフェンスで耐えてPGだけで済んだ場面を振り返ると
「自陣でプレーする時間が長いのは、相手に有利になってしまう。あのシーンでは反則をしないことと、それだけだと相手のフィジカルで前に出られてしまう。どこかでボールを狙いにいかないといけないが、共有できていたが、反則してしまった。スコアを取られたことはチームで反省しないといけない」
――イングランド敗戦からこの1週間はどんな準備を?
「負けたら終わりと全員が思っていたし、説いていた。何か特別なことが必要なのかというと、そうではない。イングランド戦では、後半5分から20分にチャンスが3~4回あった。向こうは1~2回のチャンスをものにした。その時間の精度が高かった。特別なことをやらず、自分の仕事をやり続ける。チームとして同じ画を見ながらエナジーを上げていく。そこに今日はフォーカスできていた。最後、エナジーが切れていなかった」
――後半、相手のピック&ゴーにやられた
「大事なのは反則をしないこと。ブレイクダウンにどういうアプローチをするか。そのあたりの役割は決まっているが、サモアのピックゴーを見て、アルゼンチンもやってくると思う。ラックサイドの1人目、2人目の準備が遅いから食い込まれる。そこがすべてで、そこを早くすることで改善できると思う」
◆サモア代表セイララ・マプスアHC
「本当に選手を誇りに思う。ゲームに注いでくれた努力は、これ以上望むべくもなかった。だが、レッドカードで1人少なくなるのは厳しい。やるべきことをうまく実行できなかった。もう少しボールをキープできていれば、もっと得点を取れただろう。まだ1試合残っている。準々決勝には進めないかもしれないが、2027年オーストラリア大会への出場権を自動的に獲得できるようにしたい。イングランドと対戦するチャンスはそう多くないので、その試合にすべてをかけるつもりだ」
◆FLフリッツ・リーゲームキャプテン
「素晴らしい雰囲気だった。僕らのファンは、仕事ができなかったにもかかわらず、応援に来てくれたと思う。努力はしていた。ただ、ちょっとしたことが生かせなかった。日本は自分たちよりも遂行力が高かった。ボールをもっと大事にしないといけない。最後に試合をひっくり返すことはできたが、あと一歩及ばなかった」
また、試合から一夜明け、オンライン会見に日本代表のジョン・ミッチェル ディフェンスコーチが出席した。
――昨日の試合のディフェンスの評価は?
「まだ、試合をしっかり見ていないが、気づいたところがいくつかあった。ラック周りの近場で、相手にアタックされてモメンタムを作られた。1人目のタックルを修正したい。簡単に直せると思う。試合全般は良かったという感想を持っていた」
――6点差となった最終盤、しっかりタックルで相手を止めていたが
全体的にディフェンスでアグレッシブに攻めていくタックルができた。最後の2トライを取られたところは、ラック周りを攻められて抜かれたり、弾かれたりすることがあった。
相手がパスをしたところで、内側からお互いが埋めていくのは良かった。ミスはあったが、全員でハードワークして、内側から守りながらいいディフェンスができたと思う。サモアにやられたのは、相手のオフロードが始まった部分だと思うし、ハーフタイムでも話したが、2人目がロックして、オフロードをされないようにと指示した。
――厳しい時間帯に、選手達が「サムライタイム」を設定したことについては
「選手で話をして決めた言葉として、チームとして上手くいったことだと思う。イングランド戦に負けてから、拮抗した時間帯で、クオリティを上げて、サムライのようになる。みんなが一緒にプレーするという意味合いで使っていた。上手くいっていると思う」
――22-8となって相手にレッドカードが出た。そこのチームとしての状況は?
「自分たちとしても2回、3回チャンスを作ることができたが、スコアできなかった。違う形で点を取れたことは良かった。相手はWTBがいなくなって、7人でスクラム組んでいて、ペナルティを取れた。内容はそんなに悪くなかったが、ポイントをしっかり取れなかったのは、いくつか理由があって、ラック周り攻められて得点に結び付けられたところがあったと思う」
――アルゼンチン戦に向けて
「アルゼンチンはキックチェイスゲームをやってくる。クオリティの高いチームだし、モールからもバリエーションがある。モールのインサイド、アウトサイドと周りを狙ってくる。チームでは『砦』と言っているが、FWとBKの間のチャンネルを狙ってくる。若いBKもいるし、ダイレクトに12・13番を使ってラインアウトからアタックしてくると思っている」
――タックルでいいプレーを見せているコーネルセン、ラピースについて
「2人は高いワークレイトを持っていて、連続でできると思う。2つ目としてはスマートで、自分の役割を明確にしているし、3つ目として試合を予測できる。ドミネイトする選手ではないが、タックル回数が多くてミスの少ない選手だと思う」
文:斉藤健仁/Photo by S.IDA
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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