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【ハイライト動画あり】ウルグアイ奮闘で前半リードも、後半にイタリアが地力示す。ラグビーワールドカップ2023プールAレビュー。
ラグビーレポート by 直江 光信
9月14日の初戦でフランスに12-27と善戦し一躍注目の的となったウルグアイが、またまたスタジアムを沸かせた。ワールドラグビーランキングで5つ上のイタリアを相手に、前半を17-7とリードしての折り返し。後半、不用意なプレーで失点を喫し、立ち上がりから全開で飛ばした疲れもあって最終的に17-38と突き放されたものの、気迫満点のファイトでこの日も多くのファンの心をつかんだ。
フェリペ・エチェヴェリ(ウルグアイ)
ウルグアイのパッションと活力は、開始直後から際立っていた。マイボールのキックオフを深く蹴り込み、ディフェンスで鋭く体を当ててペナルティを奪取。SOフェリペ・エチェヴェリのPGはわずかに左へ逸れたが、この試合にかける意気込みをさっそく示す。
最初のスコアが刻まれたのは7分。イタリアがターンオーバーからの切り返しで相手陣ゴール前でのマイボールスクラムを得ると、FW8人がひと塊になったプッシュでウルグアイをめくり上げる。一度目は仕留めきれなかったものの、二度目にWTBロレンツォ・パニがサイドを割って右中間に飛び込み、先制のトライをマークした。
しかしここからウルグアイの反撃が始まる。口火を切ったのは背番号6のFLマヌエル・アルダオだ。8分過ぎに1発目のジャッカルを決めると、16分には相手ラックにすばやく絡んでボールを奪取。さらに19分にもジャッカルでノットリリースザボールのペナルティをもぎ取り、文字通りゲームの流れをたぐり寄せる。
奮闘が結実したのは25分過ぎだ。敵陣ゴール前でFWが粘り強く近場を攻め、イタリアのLOニコロ・カンノーネをシンビンに追い込む。続くラインアウトからモールを形成し、ずらしながら押し切ってインゴールへ。TMOでグラウンディングは確認できなかったが、相手に反則があったという判定でペナルティトライが認められ、イタリアPRダニーロ・フィチェッティにはイエローカードが呈示された。
15人対13人の圧倒的優位に立ったウルグアイは、このチャンスに乗じてなおも激しく攻め立て、34分過ぎからイタリアをゴール前に釘づけにする。辛抱強くアタックを継続して圧力をかけ続け、最後は左ショートサイドを突いてWTBニコラス・フレイタスがコーナーにダイブ。SOエチェヴェリの難しい角度のコンバージョンも決まり、14-7とリードを奪った。
ラグビーワールドカップ2023 フランス大会 プールA
【ハイライト動画】イタリア vs ウルグアイ
ロスタイムには中盤スクラムからプレーを切らず果敢に攻撃を仕掛け、エチェヴェリが約45メートルのドロップゴールを成功。大きな3点を加え、スコアを10点差に広げてハーフタイムを迎えた。
金星を予感させる展開に、スタジアムが異様な熱気に包まれる中で始まった後半。さらにたたみかけて主導権を握りたいウルグアイだったが、42分にキャプテンのCTBアンドレス・ヴィラセカのタックルが危険なプレーと判定され、シンビンで一時退出となってしまう。一連の流れで迎えた自陣ゴール前での相手ボールアインアウトのピンチはしのいだものの、続くゴールラインドロップアウトからイタリアの連続攻撃を許し、FLミケーレ・ラマロにトライラインを越えられた。
これで息を吹き返したイタリアは、ここから一気にギアを上げて攻め立てる。52分に相手の不用意なノータッチキックを逃さず切り返して敵陣レッドゾーンに攻め込み、迷いなく走り込んだWTBモンティ・イオアネが中央にフィニッシュ。21-17と逆転すると、56分にも中盤のキックカウンターを起点にアタックを継続し、NO8ロレンツォ・カンノーネがタックラーを引きずりながら左中間にねじ込む。
28-17とワンチャンスでは追いつけない点差になったことで精神的な余裕が生まれたイタリアは、61分にも連続攻撃をきっちり仕留め切ってCTBファン・イグナシオ・ブレックスが右中間にトライ。以後はメンバーを入れ替えながら粘り強いディフェンスを軸に試合をコントロールし、70分にはCTBパオロ・ガルビシがPGを追加する。ラスト10分は得点こそ挙げられなかったものの敵陣で時計を進め、38-17でフルタイムを迎えた。
苦しみながらもナミビア戦に続きボーナスポイントつきの勝利を挙げ、勝ち点を10に伸ばしたイタリア。「最後は満足する結果になったが、前半は神経がすり減るようでした」とキアラン・クロウリーヘッドコーチが振り返ったように課題も残る内容だったが、思うようにいかない展開でもきっちり白星を手にできたのは、地力の証といえるだろう。残る2試合は9月29日の対ニュージーランド(日本時間30日04時キックオフ)と10月6日の対フランス(日本時間7日04時キックオフ)。今度はチャレンジャーとして臨むゲームだけに、どのようなパフォーマンスを見せるか注目される。
一方のウルグアイ。前半を先行して終えるなど狙い通りの流れだっただけに、後半の立ち上がりに不用意なエラーが重なり相手に主導権を渡したのは悔やまれるが、これがティア1とのテストマッチ、そしてワールドカップで勝利を挙げることの難しさなのだろう。貴重な学びを得て向かう次戦は、ナミビアとの大一番だ(日本時間9月28日00時45分キックオフ)。こちらも必見の一戦となる。
直江 光信
1975年生まれ、熊本県出身。県立熊本高校を経て、早稲田大学商学部卒業。熊本高でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。早大時代はGWラグビークラブ所属。現役時代のポジションはCTB。著書に『早稲田ラグビー 進化への闘争』(講談社)。ラグビーを中心にフリーランスの記者として長く活動し、2024年2月からラグビーマガジンの編集長。
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