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メディアに対応するトニー・ブラウン コーチ
「ブラウニー」こと、トニー・ブラウン。かつては三洋電機ワイルドナイツ(現・埼玉パナソニックワイルドナイツ)、そしてオールブラックスなどで活躍した司令塔だった。
引退後はジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)とタッグを組み、ハイランダーズでスーパーラグビーを制した。そして、2016年からはチームをオーガナイズするジョセフHCとともに日本代表を支えてきたアタックコーチである。
6月13日(火)、前日から本格的に合宿を開始したラグビー日本代表は、グラウンド練習アタックの動きを確認。練習の合間にブラウンAC(アシスタントコーチ)が対応した。
まず、前回大会と比べてサンウルブズやウルフパックがなく、ワールドカップに向け準備期間が短いことに関して聞くと、「それでやらなければいけないということ。前回、我々にはサンウルブズがあって、ウルフパックがニュージーランドとオーストラリアのチームと対戦した。今回はリーグワンが我々の準備ということになる」。
「そして、この50日でパシフィックネーションズや、いくつかの良い対戦相手と試合をして仕上げていく。50日というのは、トレーニングをするには十分な時間だし、そんなにたくさん試合をするわけではない。大事なのは、選手たちが今まで以上にハードなトレーニングをしなければいけないということ。非常にハードなものになるが、私たちは選手たちの準備を整えないといけない」と話した。
10日にはフィットネスとフィジカルのテストが行われた。日本代表のコーチ陣はスピードとフィットネスを選手たちに求め続けている。ブラウンACは「(フィットネステストの数値に)満足することは決してない。ちょっと足りない選手もいるので、若い選手が入ってきて、年長の選手のお尻を叩いてくれるんじゃないかな。いいチャレンジ」と笑みを浮かべた。
ジョセフHC、ブラウンACら日本代表のコーチ陣は2月のミーティング合宿後、代表選手たちと毎週のように頻繁にオンラインミーティングを行ってきた。やはり、ブラウンACはBK(バックス)の選手を担当するケースが多かったようだ。
練習中のトニー・ブラウン コーチ
「(オンラインミーティングでは)選手たちのスキルセットをもっともっと明確にするということ、ちょっとしたミスをできるだけなくすことということ。そして、より早くゲームの先を読む方法を模索するようにということも言った。世界のトップ選手であればそれができるはず。(予測するには)まずフィットネスと、スペースを見つける能力と、さらにアタックしたい、常に自分がボールを持ちたいという強い気持ち。それが、私が毎週選手たちに送っていたメッセージ」。
さらにブラウンACは、リーグワンを見ながら、常に代表選手に求めてきたものもある。「日本にはアタックに優れた選手が数多くいるが、そう言った選手の中にはディフェンスができない選手もいる。自分がそういうアタックの上手い選手と話す時は、いつも『もし、日本代表になりたければベストなディフェンダーにならないといけない』と言ってきた」。
「いいディフェンスができてこそ、日本のアタッキングラグビーが活きてくる。昨秋のテストマッチだけでなく、いつも学んでいるし、いつも少しずつ改善している。ワールドカップで勝つために何が正解なのかを常に見つけようとしている」。
2019年ワールドカップの日本代表に、アタックコーチとして加えたいものを訊かれて、ブラウンACは「ラグビーのトレンド、ラグビー自体が変わってきている。ゲームはより速くなっている。毎年ゲームは変化している。だから、私たちがやることが常に成長するように務めているし、相手を上回ろうとしている」。
「ディフェンスでも同じようにやってきた。コンタクトもよりハードになって、ブレイクダウンもよりタフになった。だからゲームが速くなっている。常にそこを考えないといけない」と話した。
当然、選手との信頼関係もできている。「このチームで8年ほどコーチをしている。トータルしたらHO(フッカー)堀江(翔太/埼玉ワイルドナイツ)選手は15年ほどコーチをやっている。それだけ長い時間一緒にいるので、選手たちも私のコーチングの意図、どのように見ているか、どんなことを期待しているかを理解している。それはコンビネーション」。
「ジャパンラグビーをすること」と語るトニー・ブラウン コーチ
新戦力となるCTB(センター)長田智希(埼玉パナソニック)、WTB(ウィング)木田晴斗(スピアーズ船橋・東京ベイ)に期待することは、「もちろん、非常に素晴らしい選手。2人とも素晴らしいリーグワンのシーズンを過ごした。期待しているのは、彼らが日本代表でポジション争いに絡んでくれること。この準備期間で激しい競争がある。そこで彼らが戦えるか。素晴らしい選手であるのは間違いないが、インターナショナルレベルであることを示せるか」。
「(インターナショナルレベルとは)フィジカリティは非常に大きな要素。リーグワンの2倍はフィジカルが必要。セットピースがよりフィジカルで、タックルもよりハードにしないといけないし、スピードもゲームも速くなりる。今までとは完全に違った競争になる」と話した。
そして、ブラウンACはジョセフHCら多くの同じスタッフ陣と2度目の大会に臨む。「個人的に自分のモチベーションというものはそんなになく、日本代表としてのモチベーションはある。いい準備ができれば、いいジャパンラグビーができる。そうすればワールドカップで勝つことができる。つまり、私のモチベーションはそのチャレンジ。勝つための準備をまさにしている。非常に大きなチャレンジ。そこが、私が最も愛する仕事」と語気を強めた。
予選プールで対戦する4チームの試合に関して、ブラウンACは「すべて見ている。去年のテストマッチは全部見ている。さらに、今後行われる試合も見る。それで各チームに勝つためのそれぞれのプランができてくる」。
そして選手たちのレベルも「これから上がってくると思う。でも、前回日本でワールドカップを戦った時、私から見ても今までで一番調子の良かった選手もいて、だからビッグゲームで勝利を収めることができた。次も(選手たちは)そういうレベルまでいかないといけない」と話した。
7月には「オールブラックスXV」と2試合、さらに7月から8月にかけてのパシフィックネーションズではサモア代表、トンガ代表、フィジー代表と激突する。
ブラウンACは「いつも心がけていることだが、私たちのアタックの最大のポイントは、ジャパンラグビーをすること。速くて、スキルが高く、そしてディフェンスにプレッシャーを与えないといけない。(ディフェンスで)プレスをしっかりして、ボールを長い時間保持しないといけない。今日みたいな暑い日は特にそうで、それがジャパンのラグビー」と意気込んだ。
ブラウンACは6月の浦安合宿では、新しい選手もいるため、昨季までのアタックの確認などのベースを仕上げて、7月から8月の試合で日本代表はワールドカップに向けてチャレンジングなアタックを見せてくれるはずだ。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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