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明治大学 vs. 帝京大学
まだ6月。それなのに試合を取り巻く空気には早くもクライマックスのような緊張感が漂う。今シーズンの覇権争いの流れが決まる大一番。多くのファンが、そんな意識でこの一戦を見つめているはずだ。
6月3日、静岡県のエコパスタジアムで、昨季大学選手権で11度目の優勝を果たした帝京大と、5年ぶりの王座奪還に燃える明治大が激突する(13時キックオフ)。ともに強豪ひしめく関東大学春季大会Aグループでここまで全勝、その内容も充実している。3連覇に向け盤石の歩みを続ける王者と、それに匹敵する分厚い戦力を有する挑戦者。両校の力関係が、この試合で明らかになる。
前年度選手権決勝の先発メンバー15人のうち10人が残った帝京大は、シーズン初戦となった4月16日の同志社大との招待試合に89-0と大勝すると、4月23日の関東大学春季大会初戦でも東洋大を92-14で圧倒し、今季も好スタートを切った。圧巻だったのはHO江良颯主将が復帰した5月14日の流通経済大戦で、19トライを奪う猛攻を見せ93-0で完封勝ち。さらにその2週後に行われた招待試合でも、2年連続選手権ベスト4の関西の雄、京都産業大に43-12と完勝を収めている。
万事に隙のない戦いぶりの中でも特に際立つのは、FWの支配力だ。圧倒的なフィジカリティを武器にセットプレーやコンタクト局面でプレッシャーをかけ続け、相手の集中力が途切れるや、ただちに厳しくたたみかける。SO高本幹也、CTB松山千大ら主軸が抜けたBKも新戦力が続々と台頭し、昨季までWTBでの出場が多かったSO/FB小村真也を中心に優れた決定力を示している。
一方の明治大は5月7日の春季大会初戦で流通経済大に大雨の中58-12と快勝すると、早稲田大との2戦目も終盤に2トライを挙げて突き放し、45-24でライバル対決を制した。続く5月28日の東海大戦は試合を重ねるにつれて調子を上げてきた相手にペースを握られる時間帯もあったものの、今季初出場となったCTB廣瀬雄也キャプテンの2トライなどで41-31と勝利。春季大会3連勝でB、Cチームのトレーニングマッチを含めここまで全勝と、こちらも順調な春を過ごしている。
戦力面を見ると、昨季最終戦となった大学選手権準決勝のスターター15人中卒業したのは4人で、例年以上に経験豊かな実力者がそろう。とりわけ新4年生に前年からのレギュラーが多い(7人)点は、今季のチームの強みとなるだろう。各ポジションに学生トップクラスの俊英を擁し、FWとBKのバランスもいい。「強いセットプレー、強いフィジカル、『前へ』という言葉が表すモメンタム。そういったものを生かしながら、明治らしいラグビーに立ち返る」。神鳥裕之監督は就任3年目のシーズンにかける意気込みをそう表現する。
明治大学スターティングメンバー
帝京大学スターティングメンバー
発表された両軍の登録メンバーを見ていくと、注目のマッチアップが満載の楽しみなラインアップとなった。FW第1列は帝京大がPR平井半次郎、HO江良颯、PR上杉太郎、明治大がPR中山律希、HO松下潤一郎、PR為房慶次朗という並びで、LO陣は本橋拓馬と尹礼温、山本嶺二郎と佐藤大地のコンビ。このタイトファイブのセットプレーの攻防が、ゲーム展開の鍵を握る。青木恵斗、奥井章仁、延原秀飛と、森山雄太、福田大晟、利川桐生のバックロー勢は、ブレイクダウンをはじめあらゆる局面で激しいバトルを繰り広げるだろう。
試合を組み立てるHB団は、帝京大がSH李錦寿にSO井上陽公、明治大はSH萩原周とSO伊藤耕太郎のペア。これまでの戦いからもう一段プレッシャーが上がる中、それぞれがどうチームをコントロールするか注目だ。ミッドフィールドでは久木野太一、戒田慶都の帝京大CTBコンビが、明治大の廣瀬雄也、山田歩季に対峙する。バックスリーはWTB高本とむ、WTB青柳潤之介、FB小村真也と、WTB西川賢哉、WTB安田昂平、FB池戸将太郎のトリオ。いずれも決定力とキッキングゲームの強さをあわせ持つ強力な布陣だ。
なおラグビーワールドカップ2019で日本代表のアイルランド代表撃破の舞台となったエコパスタジアムで両校が対戦するのは、これで3年連続。一昨年は帝京大が32-28、昨年は明治大が35-26で勝利しており、2021年度はこの試合をきっかけに上昇気流をつかんだ帝京大が、4シーズンぶりに頂点へと駆け上がった。両校ともその試合に出場している選手が数多く残っており、このカードの重みは熟知しているはず。熱戦必至だ。
直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。
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