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名古屋高校、4大会ぶり3度目の出場
3月25日(土)から31日(木)にかけて、今年も埼玉・熊谷ラグビー場を中心に行われる全国高校選抜ラグビー大会。花園こそ出場経験はないが、東海大会で準優勝して、4大会ぶり3度目の出場を決めたのが名古屋高校(愛知)だ。
1887年に創立された伝統あるプロテスタント系の男子校である名古屋。ラグビー部は1959年に創部、伝統的に「Play the man. be strong.」(男らしく、強くあれ)がスローガンだ。1996年に名古屋中学にもラグビー部が創部され、中高一貫体制となった。かつて愛知県で公立高校が強かった頃は、春日丘と合同チームだった時代もあるという。
名古屋高校の二木久善監督
千種、中央大ラグビー部でFL(フランカー)やHO(フッカー)として活躍していた二木久善監督(40歳)は、大学卒業してすぐに名古屋に赴任し、17年目を迎えている。「文武両道」を掲げて、国際交流も盛んな名古屋にはスポーツ推薦はないが、「牛歩のように少しずつ進歩してきた」と二木監督が振り返るように、2011年にグラウンドが人工芝化した後、愛知県で準優勝するなど一歩一歩強化を進めてきた。
花園こそ出場経験はないが、2014年、2019年には今大会同様に、実力で東海大会を勝ち抜き、選抜大会に出場。さらに2021年には夏の7人制大会の愛知予選で初めて中部大春日丘を下して優勝して、全国大会に出場した。昨季の花園予選決勝も中部大春日丘に0-62で敗れたが、3年連続で愛知県予選決勝に駒を進めている。
部員は2年生が17人、1年生が17人で計34人。名古屋中からプレーしている選手は2年生で8人、1年生で5人、さらに2年生では未経験者が4人、1年生には5人いる。
「6年間、名古屋でやってくれる子も増えてきました。また、ラグビーだけでなく勉強もしっかりやりたいという考えを持つ選手もいます。私立ですが、いろんな価値観のある選手がいるのが、チームのコンセプトになっています」と二木監督。
着実に力をつけてきた名古屋高校
強豪大学でラグビーを続ける選手もいれば、浪人して難関大学や国立大の獣医学部に進学する選手もいるという。また、寮はないため、ほとんどが愛知県出身者で、学校の交通の便がいいため岐阜県在住の選手や、春から三重県に住む選手も入部する予定だ。
遠方から通う選手や小テストなどもあるため朝練習は実施せず、個人の判断に任せている。月曜日がオフで、それ以外の曜日は2時間半ほど練習をしており、筋トレは週2~3回ほど行っている。
2022年春、名古屋高校はサニックスワールドユースの予選会において、コロナ禍の影響もあり、抽選の末に勝ち上がり、初めて本戦出場を果たした。
二木監督は「東福岡、石見智翠館、大分東明と対戦して、勝つ可能性はなかったですが、ディフェンスをしっかりしないと、このレベルを越えていけないと感じた。個々の能力差を感じる一方で、あきらめずに戦うためには、ディフェンスを磨かないといけないと学びがあったため、今季は昨季よりもモチベーション高くできている」と語る。
共同キャプテンの鈴木と石川
世の中の流れもあり、昨季から共同キャプテン制を採用している。「経験者と未経験者も融合が大事」(二木監督)と、名古屋市立桜田中からラグビーを始めて「勉強もしっかりやりたい」と入学したFL(フランカー)石川空河と、学校見学に来たときにラグビー部を見て「団体競技に憧れていた。雰囲気が良かった」と入部したFL鈴木大登(ともに2年)と2人に任せた。
他にはヒットの強さではチーム一番のFW(フォワード)リーダーLO丹羽善丈、ラグビー理解度の高いFB(フルバック)池田紘生(ともに2年)が中心だ。
「ラグビー始めた理由が違う中、昼食時、みんなで同じ教室に集まって自分たちや相手の映像を見て、『自分たちの強みは何か』『その強みを出すためにはどうしらいいか』と話し合う中で、全員1つにまとまることができた」(鈴木主将)
東海大会で準優勝
昨季の経験から「ディフェンシブに戦わないといけない」と、タックラーである共同キャプテン2人も守備の意識を高めており、「ディフェンスの名古屋」というキーワードも出てきた。その結果、新人戦の愛知県予選は中部大春日丘に負けたが、続く2月の東海大会では1回戦で静岡聖光学院に18-12で、準決勝では四日市工業に19-5と接戦をものにして準優勝、実力で4大会ぶり3度目の選抜大会出場を決めた。
ディフェンスに力を入れてきた
「未経験者の選手も多いですが、タックルして倒すという部分が試合でも見られるようになった。1年以上かかりましたが、もう一歩進んで、2人でタックルにいく、システムなどこだわりに近い部分に時間をかけていければいい」(二木監督)。
選抜大会の1回戦は、昨季、選抜ベスト4の桐蔭学園を下して花園に出場した東海大相模(神奈川)となった。「東海大相模さんにも未経験者もいれば、(県内の予選で)強豪になかなか勝てなかったり、(三木雄介)監督の年齢も非常に近かったり似たようなところが多い」と二木監督がシンパシーを感じていたチームだ。1回戦を勝利すれば九州Bブロックの王者・佐賀工業(佐賀)と黒沢尻工(岩手)の勝者と対戦する。
石川主将は「選抜大会が決まったときは人生で一番うれしかった。強みはディフェンス。名古屋がもっと知られるくらいディフェンスで圧倒したい」と話し、鈴木主将は「名古屋のファーストジャージーを着て、ブレイクダウンの強い相模と戦えることにワクワクしています。流れを変えるタックルをしていきたい」と意気込んだ。
名古屋高校は1回戦で東海大相模と対戦
二木監督も「自分たちらしさで勝負して、いいプレーが続けば勝利に近づく。東海地区、愛知県の代表として『名古屋、ここにあり』というディフェンスを見せていきたい」と意気込む。
もちろん、最大のターゲットは秋の愛知県予選で中部大春日丘を倒し、花園に初出場すること。二木監督は「選手たちが(全国の強豪相手にも)真っ向勝負していける姿勢になってきた。小さな積み重ねが大きくなっている。焦らずに、名古屋らしく前に進んでいきたい。僕もあきらめないという思いを持ちながら成長し続けたい」と語気を強めた。
文:斉藤健仁/写真提供:名古屋高校
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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