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ラグビー コラム 2023年3月6日

【ハイライト動画あり】埼玉WK・山沢拓也「フルハウス」の大活躍。ラグビーの全得点方法を決めて今季10連勝に貢献。ディーンズ監督が語る「リスペクト」の意味とは?

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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山沢拓也(埼玉ワイルドナイツ)

首位攻防戦を制したのは、いまだリーグワンで負けなしの埼玉ワイルドナイツ(埼玉WK)だった。「チームの価値はディフェンスに表われると思っています」と坂手淳史キャプテン。1トライも与えないディフェンスが光る今季10連勝だった。

3月4日(土曜)、熊谷ラグビー場(埼玉県熊谷市)には、9,021人の観客が集った。前半はクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(S東京ベイ)が風上に立つ。午後3時、埼玉WKはSO山沢拓也ではなく、CTBダミアン・デアレンデがキックオフを担当。デアレンデはそのまま前に出てプレッシャーをかけ、山沢は相手のキックに備えてあらかじめ後ろに下がった。この日の埼玉WKは、フィジカルの強さに自信を持つS東京ベイに対し、190cm、105kgのデアレンデが体を張って突進、タックルを繰り返し、山沢はスペースの広いところで、スキルの高さを披露した。

序盤の埼玉WKはボールを積極的に動かし、S東京ベイを防戦一方に追い込む。しかし、S東京ベイは接点の圧力で徐々にペースをつかむ。息詰まる攻防のなかで山沢、S東京ベイSOバーナード・フォーリーがPGを決めあい、3-3のスコアで前半20分が経過する。最初のトライは前半25分、山沢が決めた。自陣で相手キックを受けたFB野口竜司が起点となり、連続攻撃を開始。左タッチライン際をデアレンデが駆け上がり、LOルード・デヤハーがフィールド左中間でS東京ベイ陣10mラインを突破する。ここでできたラックから右へ展開すると、山沢は目前のFW選手を抜き去り、「思った通りのコースを走ることができた」と、ディフェンダーを軽やかなステップワークでかわし、そのままインゴールまで走り切る。山沢がゴールも決めて、10-3とした。

バーナード・フォーリー(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)

以降はS東京ベイがLOヘル ウヴェ、FLトゥパ・フィナウ、NO8ファウルア・マキシらを軸に力強い突進を織り交ぜながら攻め、埼玉WKの反則を誘う。29分から10分間でフォーリーが3本のPGを決めて、スコアは、10-12と逆転。埼玉WKが連続して反則を犯すのは珍しく、S東京ベイの圧力の強さの証明でもあった。このスコアのまま前半が終了する。

ジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1

【第10節ハイライト動画】埼玉ワイルドナイツ vs. クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

ハーフタイム、坂手キャプテンは選手たちに言った。「それぞれの役割をやり続ける。それがワイルドナイツの強みだ」。後半の埼玉WKは見違えるように反則が減った(前半のPKは8、後半は2)。ハーフタイムにレフリーが何を問題視しているのかを確認して、すぐに修正できるあたりも埼玉WKの強さの理由だろう。後半10分、S東京ベイの猛攻を止め続け、自陣でターンオーバーに成功すると、山沢がディフェンスの背後にキック。WTBマリカ・コロインベテが快足を飛ばして確保すると、サポートした山沢にパスを返し、2トライ目をあげた。山沢がゴールも決めて、17-12と逆転する。

フォーリーにPGを返されたが、28分には山沢がドロップゴール(DG)を決めて、23-15と8点差に突き放す。1トライ、1ゴールでは逆転できない値千金のDGだったが、10フェーズ以上にわたる連続攻撃で、S東京ベイが懸命にディフェンス網を整える中で、軽く右足を振り抜いたドロップキックはS東京ベイの疲れを倍増させただろう。この時点で、山沢はトライ、ゴール、PG、DGというラグビーの得点方法をすべて決める「フルハウス」を達成した。

トゥパフィナウ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)福井翔太(埼玉ワイルドナイツ)

最後はルーキーのWTB長田智希が右に左にステップを踏みながら左コーナーにトライをあげ、3トライ差をつけてのボーナス点の獲得も決めた。この難しいゴールを山沢が決めて、キック成功率も100%を達成してノーサイドとなった。当然ながら、プレーヤー・オブ・ザ・マッチには山沢拓也が輝いた。山沢はいくら称賛しても足りないほどだが、埼玉WKのディフェンスの粘りも特筆すべきものだ。後半21分、S東京ベイのフィナウがインゴールに飛び込んだに見えたが、FL福井翔太がたった一人でタックルし、身体を抱えてボールを押さえさせなかった。後半32分には大幅にゲインされて窮地に立たされたが、全員で素早くディフェンスし、トライを与えていない。

埼玉WKのロビー・ディーンズ監督は言った。「選手たちのディフェンスを誇りに思います」。そして、相手をリスペクトしていたからこそ、懸命のタックルがあったと説明した。「リスペクトしていなかったら痛い目にあったでしょう。1インチを与えたら、1マイル前進される。そういう細かいところを抑えることができたから、このような結果が出たのでしょう」。各選手が役割を高い精度でこなし、相手に勢いを与えないディフェンス、チャンスを確実にものにするアタックでの勝利。懐の深さを感じるが、その根底に流れるのは、「リスペクト」なのである。

文:村上 晃一
村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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