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開幕戦で力強い突破を見せた箸本
若きバックロー2人による熾烈な「6」番争いが続いている。
開幕戦こそ、クボタスピアーズ船橋・東京ベイに敗れたものの、その後は持ち前のアタッキングラグビーを見せ、3連勝で3位につけている東京サントリーサンゴリアス。1月22日(日)は敵地の大阪・東大阪市花園ラグビー場に乗り込み、昇格組の花園近鉄ライナーズと対戦し4連勝に挑む。
そんなサンゴリアスの攻撃ラグビーを攻守に渡り支えているのが、若きバックローたちだ。2023年ワールドカップ終了後にフランス1部、ボルドー・ベグルへの移籍を発表したNO8(ナンバーエイト)テビタ・タタフ、そして新人のオープンサイドFL(フランカー)山本凱(慶應義塾大学出身)、そしてスターターの「6」番を争っているのが、ともに2年目で同じ福岡県出身のFL下川甲嗣と箸本龍雅の2人だ。
今季、ゼネラルマネージャーから新たに指揮官となった田中澄憲監督は「(箸本)龍雅、と(下川)甲嗣は高いレベルで争っている。箸本はGPSでも1番走っていますし、ハイスピードランニングもいい。(山本)凱も含めて若いバックローがいるので成長していってほしい。バックローに限らず、若い選手が出てくることはチームにとって活性化になる。彼らだけでなく競争が激しくなって、他の若い選手も刺激されて調子がいい」と目を細めた。
昨秋は4戦連続出場。オールブラックス戦で初キャップを得た下川
ただ、先に存在感を示したのはFL下川だった。副将、そして主にLO(ロック)として活躍した早稲田大学を卒業し、入社してすぐの2021年4月11日の途中出場で試合に出るだけでなく、いきなりトライを挙げた。そして、2022年はケガをするまで、接点の強さ、運動量豊富なFLとして5試合(うち4試合先発)に出場。同年秋には日本代表に選ばれて、10月のオールブラックス戦で初キャップを得た。
同期の活躍を見ていて「悔しかった。今まで試合に出られるのが当たり前の環境だったので勉強になった」と正直に吐露するのは、東福岡、明治大学でともに日本一を経験した箸本だった。2021年シーズンは試合に出場することは叶わず、2022年は主に途中出場から4試合(うち1試合は先発)にとどまった。
ニュージーランド留学で大きく成長した箸本
そこで箸本は「ゲーム経験が少なかったため、チャレンジさせてほしい」と頼み、昨夏、ニュージーランドのオークランドに3ヶ月ほど留学した。なお、オークランド州代表のHC(ヘッドコーチ)がサントリーOBで、元オールブラックスCTB(センター)アラマ・イエレミアだった縁もあったという。
現在はサンゴリアスでチームメイトとなったバックローのブレイク・ギブソンなど、スーパーラグビーのブルースで試合経験のある選手たちとで身体を当て続けた。「(ニュジーランドで成長したのは)ブレイクダウンです。倒してそのままブレイクダウンでファイトするところが、今まで自分がやってきたラグビーと違うところでした。向こうでは成長している感覚はわからなかったですが、今では自分の強みに変わった。ニュジーランドに行った経験はかなり大きかった」(箸本)。
明治大学時代までの箸本の強みと言えばリーダーシップはもちろんのこと、ワークレイトとボールキャリーで、どちらかというとアタック主体の選手だった。しかし、箸本は「今は、自分にベクトルを向けてやれている。アタックも自分の強みであることには間違いないが、ディフェンスの局面でも1つ強みが出てきたという感覚で、ブレイクダウンで相手の嫌がるプレーができるようになった。できるプレーの幅が広がっている」と進化を実感している。
4試合中3試合で先発し、好調だった箸本だが、4試合目のコベルコ神戸スティーラーズ戦で試合開始早々、ケガをしてしまった。しかし、「(箸本との)ポジション争いは昨季からずっと続いているので、負けられない」と意気込んでいた下川が、すぐに途中交代で入って遜色ないプレーを見せ、第5節では「6」番を背負って先発する。
下川は「先発出場にこだわりたいし、もっとボールに絡んで自分の強みを出して頑張りたい。(接点での)緊急性、ハードワークを大事にしている中で、全体的に凱、龍雅がその部分で勝っている。監督にはそういった部分で見せてくれと言われています」と話した。
オーストラリアA戦後、リーチに熱心にアドバイスをもらうFL下川
ワールドカップには「もちろん出たい!」と話す下川は、「(日本代表では)ボールを持ち込んだときのフットワークは評価されているので、その次のオフロードパスなど周りを活かす部分を成長させてほしいと言われています。また、ワークレイトはリーチ(マイケル/東芝ブレイブルーパス東京)さんとかを超えないといけないし、フィジカルでも劣っているので伸ばしていって接点でも圧倒できる強さを身につけたい」と先を見据えた。
ただ、下川は周囲の期待については「考えていない。サンゴリアスとしてチャンピオンを取り戻すことと、優勝した瞬間にフィールドに立っていることが、モチベーションで今季の目標です。それがワールドカップへの近道だと思っているので、今はサンゴリアスのプレーにフォーカスしています」と意気込んでいる。
田中監督は改めてポジション争いに関して「龍雅は高校から注目されているスター選手だったが、逆に社会人になって、泥臭いプレーが評価されて最初に試合に出たのが甲嗣だった。龍雅は試合に出るために何が必要か考えて、必要不可欠な存在になってきた」。
「甲嗣ももともと、そこが得意なはずなので、ワールドカップが目の前に見えているので焦る部分もあるかもしれないが、龍雅に負けているところをもう1回見つめ直すとブレイクするんじゃないか」と話し、2人の成長に大いに期待を寄せた。
また、田中監督は「(開幕戦の)クボタのゲームはいい意味で学びになった。体験して学ぶことが大事です。続く2戦目、3戦目と階段を登ることができた」とアタッキングラグビーに自信をのぞかせた。
バックローだけでなく、第2節でPR(プロップ)小林賢太、第4節でWTB(ウィング)河瀬諒介(ともに早稲田大出身)がデビューし、22日の第5節では2年目のLO片倉康瑛、1年目のWTB(ウィング)/FB(フルバック)雲山弘貴(ともに明治大出身)が控えから初出場をうかがう。
2017年度以来の王座奪還、そしてリーグワン初優勝を目指すサンゴリアスを若き力が押し上げる。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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