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早稲田大学
「後半勝負になると思っていたので、ギアを上げてくれる選手を(リザーブに)何人か入れていて、その選手たちが仕事をしてくれたと思います」。早大・大田尾竜彦監督の試合直後の言葉通りの展開だった。
12月25日、秩父宮ラグビー場での準々決勝第1試合は、3週間前に関東大学対抗戦の最終戦で相まみえた者同士の再戦となった。晴れ、微風の好コンディション。13,874人の観衆が見守るなか、午前11時30分、早大ボールのキックオフで試合は始まった。3週間前は明大がアグレッシブに攻めてトライを畳みかけたが、この日の序盤は両チームが地域獲得を意識してキックの応酬となる。
先制したのは早大だった。前半10分、早大SO伊藤大スケ(示に右)(3年)がインゴールに蹴り込んだボールを明大が押さえ、ゴールラインからのドロップキックでの再開となる。このボールをキャッチした早大はWTB槇英人(4年)の突進を起点にボールを動かし、最後は伊藤がフィールド中央から左方向に動きながらパスを受けてタックラーを引き付け、3試合ぶり復帰のFL相良昌彦(4年)、FB小泉怜史(4年)、WTB松下怜央(4年)とパスをつないでトライをあげる。CTB吉村紘(4年)が難しい角度のゴールを決めて、7-0した。
廣瀬雄也(明治大学)
明大の反撃は前半16分、早大ボールのスクラムを猛プッシュして反則を誘ったところから始まる。このPKからCTB廣瀬雄也(3年)がタッチキックで22mライン付近まで陣地を進めると、ラインアウトからモールを押し込み、これを起点に右に左に15回にわたってボールをリサイクルしながら連続攻撃。最後はCTB齊藤誉哉(4年)がトライをあげる。廣瀬がゴールを決めて、7-7。
その後、早大はラインアウトのボールを確保できず、反則もあって苦しい戦いとなるが、吉村が約50mのロングPGを2本決めて、前半26分で13-7とリードした。しかし、前半間際、明大はラインアウトのモールからHO松下潤一郎(3年)がトライ。廣瀬のゴールで13-14と逆転する。
ラグビー 全国大学選手権 22/23 準々決勝
【ハイライト動画】早稲田大学 vs. 明治大学
後半、メンバー交代で先に動いたのは早大だった。フィールドに飛び出した早大のメンバーには16番をつけたHO佐藤健次(2年)、20番のFL栗田文介(1年)の姿があった。後半の立ち上がりは明大がギアを上げて激しいコンタクトプレーで前に出始めたが、佐藤のタックル、栗田の突進で早大も反撃。8分にはスクラムの強いPR井元正大(4年)、状況判断のいいSO野中健吾(1年)を投入し、個人技の優れた伊藤をFBに下げる。これらの交代、ポジションチェンジで明大に主導権を渡さなかった。
宮尾昌典(早稲田大学)
後半16分には井元を軸にスクラムで圧力をかけて反則を誘い、明大陣深い位置で得たスクラムからのサインプレーでWTB松下がトライをあげる。スコアは、20-14。2分後、明大に攻め込まれるが、明大FWが縦に走り込んでキャッチしようとしたパスをSH宮尾昌典(2年)が狙いすましてインターセプト。追いすがるタックラーを走るコースを変えることで振り切り、約80mを走り切るトライだった。
明大も後半28分、スクラムを押してペナルティトライを勝ち取り、27-21と迫る。さらに白熱した攻防となったが、最後は明大のWTB石田吉平(4年)の突進をタックルで倒し、相良がジャッカルでボールを奪い取って激闘に終止符を打った。昨年も大学選手権準々決勝で再戦する同じパターンだったが、勝敗は逆になった。後半勝負と見てインパクトプレーヤーをリザーブ席に置いた大田尾監督の読み通りの勝利だった。
「本当によく頑張ってくれたと思いますし、試合に出た23人だけでなく、部員150人が対抗戦の終わった後に成長してくれました」(大田尾監督)。試合直後、フィールドでは早大の相良昌彦キャプテン、明大の石田吉平キャプテンが抱き合い、言葉を交わしていた。3試合ぶりに怪我から復帰した相良は、「吉平が、次も頑張れ、優勝してくれよ、と言ってくれました。吉平のぶんも頑張りたい」とコメント。ライバルチームのリーダーとして戦った友人のため、これまで自分たちが破ったチームのためにも勝ち抜く決意を新たにしていた。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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