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ラグビー コラム 2022年12月25日

佐賀工業、「モメンタム」をつかみ縦に大きいFWと横の展開力があるBKで上位進出を狙う。全国高校ラグビー大会

ラグビーレポート by 斉藤 健仁
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花園は51回目出場 写真提供:佐賀工業高校

12月27日(火)から大阪・東花園市花園ラグビー場で「花園」こと、「第102回全国高等学校ラグビーフットボール大会」が始まる。上位進出が期待されているのが、Bシードで41大会連続51回目出場の佐賀工業だ。

佐賀工業は昨季の花園では10年ぶりにベスト8に進出し、春の選抜大会では日本代表FB(フルバック)五郎丸歩(現・静岡ブルーレヴズCRO)を擁して準優勝した第3、4回大会以来、19大会ぶりにベスト4に進出するなど勢いのあるチームだ。

選抜大会では國學院栃木に勝利

選抜大会では昨季準優勝の國學院栃木に20-19で勝利し、九州大会では東福岡に10-33で敗れたが準優勝。花園予選決勝では早稲田佐賀を195-0と圧倒し、今季は1つ上の先輩たちに並ぶベスト8、さらにベスト4以上も狙っている。

佐賀工業を率いるのは同校OBで、東洋大学でもSO(スタンドオフ)としてプレーした枝吉巨樹監督(47歳)だ。同校の同級生でPR(プロップ)だった仁位岳寛部長(福岡大学出身)が一時期監督を務めた時期もあるが、再び枝吉監督が率いて12年目となる。枝吉監督が全体の戦術やBK(バックス)、仁位部長がFW(フォワード)の強化にあたっている。

佐賀工業の枝吉巨樹監督

部員は68人(3年生21人、2年生23人、1年生24人)で、女子部員も12人いる。半数ほどは佐賀県出身だが、人工芝のグラウンド、ラグビー部専用の寮と環境が整っているために、福岡、大分、宮崎など九州各県からも選手が集う。

佐賀工業が再び上昇気流に乗ったのは、3年ほど前からだ。佐賀県がスポーツの裾野を広げ、世界に挑戦するトップアスリートの育成を目的として2018年から始めた「SAGAスポーツピラミッド構想」(SSP構想)の下、元日本代表FL(フランカー)野澤武史(日本ラグビー協会ユース戦略TIDマネージャー)コーチを招聘した。

神戸製鋼を辞めた後からコーチングを続けている野澤コーチには、試合の映像を確認してもらいながら、月1回くらいのペースでアタックでもディフェンスでも気づいた点を指導してもらっているという。もともとFWに定評のあった佐賀工業だが、現在ではBKの展開力も長けた総合力のあるチームへと成長しているというわけだ。

とは言え今季の佐賀工業の特徴は、身長190cmが4人と縦に大きい選手揃うFW陣だ。平均身長は出場校の中でもトップクラス。身長191cmのLO(ロック)/FL古賀大輝(2年)以外の3人、191cmのLO岡亮太、197cmのLO楠田祥大、190cmのLO田中航大(いずれも3年)は高校からラグビーを始めた。ラインアウトを引っ張る身長180cm、体重112kgのHO(フッカー)松井我空は高校日本代表候補にも選ばれている。

選抜大会の國學院栃木戦、FB井上のDGで逆転

また、BKにはSO服部亮太(2年)が右足、FB(フルバック)井上達木(2年)が左足とロングキッカーが2人いるため、敵陣でラインアウトの機会を増やす戦い方が基本戦略となる。枝吉監督は「左右の精度の高いキッカーがいて、どのチームが来ても蹴り負けない。だから、それに何とかラインアウト戦に持ち込んでプレッシャーをかければ、うちに分があるのでは」と自信をのぞかせる。

もちろん、フィジカルの強い東福岡、関西勢との対戦を考えて、週4回、1時間のウエイトトレーニングを欠かさず、FW、BKともにフィジカルアップも心がけてきた。春までCTB(センター)だったが、FLに転向したキャプテン枡尾和(3年)は「1対1のコンタクトで負けないようにタックル練習や、きつい状態でも身体が動けるようにフィットネス系の練習も頑張ってきた」と胸を張る。

佐賀工業2年のWTB大和

FW陣だけでなく、BKには高校日本代表SH(スクラムハーフ)宮内幹大(3年)、SO服部がアタックをリードし、春はWTB(ウイング)だった爆発的なスピードが武器の大和哲将(2年)、さらに舛尾主将と大分・ぶんごヤングラガーズからの幼なじみの副将CTB(センター)後藤翔大(3年)ら個々の能力が高い選手が揃う。また、迫中一斗、山口健太郎(3年)の両WTBも身長が大きく、ハイパントキックにも強い。

舛尾主将は「佐賀工業と言えば、FWのモールをウリにしていて縦の強さもあるのですが、今季はBKにもタレントが多くいて横も使えるので、非常にバランスが取れている。そこが強みです」と語気を強めた。

モールで相手を崩す佐賀工業

花園に向けてブレイクダウンの確認、武器であるセットプレーから少ないフェーズでトライを取りきることなどに注力しているという。また、秋には関西遠征を敢行し、強豪の胸を借りた。「試合中のきつい状態でもしっかりコミュニケーションを取って、横と信頼関係を持ってディフェンスできるかを大事にしている。声出しやコミュニケーションを意識して試合、練習をしています」(舛尾主将)。

今季、枝吉監督が大事にしてきた言葉がある。それは「モメンタム」(勢い)だ。舛尾主将が「試合の入りでしっかりモメンタムを生むプレーを心がけている」と言えば、指揮官も「ラグビーは技術も大事ですが、メンタルも大事なスポーツだと思っています。花園という舞台は、最初からモメンタムを持って戦えるか大事なので、大きなFWの選手を出して、最初に勢いをつけたい」と話す。

Bシードの佐賀工業は1回戦がシードされて、2回戦から出場で、12月30日(金)に岐阜工業(岐阜)vs.高知中央(高知)の勝者と対戦する。順調に勝ち上がれば1月1日(祝・日)に同じBシードの東海王者・中部大春日丘(愛知)と対戦する可能性が高い組み合わせとなった。

枝吉監督は「まず、花園の目標は、昨季の先輩たちと同じで、1月3日に行く、つまりベスト8です。ターゲットは3回戦で対戦する中部大春日丘で、その後は1つずつ戦っていきたい」と話した。

舛尾主将(左)、後藤副将はラグビースクール時代からの幼なじみ

FL舛尾主将は「昨季の先輩たちを超えるために、まずベスト4を目指して頑張ります。個人的には従兄弟の(LO舛尾)緑のいる東福岡と対戦したい。自分は華やかなプレーはできませんが、身体を張ってチームに勢いつけられるように頑張ります」と言えば、ランが一番のウリだという副将CTB後藤は「どこが相手でもチャレンジャーという気持ちを持って、強気のプレーで一戦一戦、優勝を目指して勝っていきたい」と意気込んだ。

縦に大きなFWが揃い、横への展開力もある総合力の高くバランスの取れたチームに仕上がっている佐賀工業。2000年度の準優勝を超えるべく、まずは1月3日を目指す。

文/写真:斉藤健仁
写真提供:佐賀工業高校

斉藤健仁

斉藤 健仁

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント

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