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2022年12月17日、2シーズン目の「ジャパンラグビーリーグワン」が開幕する。各チームが試合を運営し、新たな試みを打ち出す新リーグの2年目はどんな戦いが繰り広げられるのか、楽しみは尽きない。今回はリーグワン初代王者の埼玉パナソニック ワイルドナイツから、初代MVPの堀江翔太選手が登場。昨季はほとんどの試合に後半出場し、チームを勝利に導き「ラスボス」と呼ばれた堀江選手は、いまどんな思いでシーズンに向かうのか。新シーズンへの意気込み、2023年のラグビーワールドカップへの想いなど伺った。
――リーグワンの2シーズン目の開幕前に改めて1年目のことをお伺いします。全勝で駆け抜けたシーズでしたね。
「僕はリザーブからの交代出場が多くて、前半の動きを見ながら出場してチームに良い影響を与えることを意識してプレーしました。それが実際に数字に表れたことが良かったと思っています。ただ、あまり結果をプレッシャーに感じないようにプレーしていました」
――交代出場はやりやすかったですか。
「相手の動きを見ながら準備するのはプレーのイメージがしやすかったです。先発メンバーは相手が何をしているか分からない状態でプレーしますからね」
堀江翔太選手
――MVPにも選ばれましたね。
「まさかという感じでした。自分がもっと若くて、MVPを狙うような立場なら考えるかもしれませんが、この年(36歳)ですし、(MVPのことは)まったく考えずにプレーしていました」
――トップリーグ時代も2度MVPに輝いていますよね。
「毎回、HO(フッカー)がもらえるなんて考えないから、びっくりですよ」
――トップリーグからリーグワンに変わって何か変化はありましたか。
「運営側は大変だと思いますけれど、選手目線では大きな変化はありません。ただ、僕ら(ワイルドナイツ)は本拠地が太田から熊谷に移りました。運動公園の中にグラウンドがあり、見に来る人もたくさんいます。良い環境の中で練習できているので下手な試合は見せられないという気持ちはあります」
ジャパンラグビー リーグワン2022-23開幕直前インタビュー
【インタビュー動画】リーグワン開幕直前!堀江翔太選手|埼玉パナソニックワイルドナイツ
――ファンの皆さんの目はモチベーションに影響するのですね。
「人に見られているというのはポジティブに働いています。見てくれているファンの皆さんのために良いラグビーをしなければいけないと思います」
――チームが試合を運営するようになって何か感じることはありますか。
「ホームだと応援する人が多く、グッズの販売なども盛大にやりますよね。アウェイではその逆です。トップリーグは、どこで試合をしようとグッズなど売っている物も半々でしたから。今のほうがプロらしい感じはありますね」
――リーグワン最初のシーズンでワイルドナイツが優勝できた要因は何でしょう。
「他のチームのことは分かりませんが、僕らは選手同士で話し合って修正するということを普段からやっています。アタックの全体ミーティングがあっても、別のところで選手同士で話し合い、それをアタックのリーダーが吸収してミーティングで話し、取り入れるべきかどうかなどをコーチと会話する。そのあたりはパナソニック独特だと思います。練習後にも、受け身ではなく、コーチに対してチームを良くするために選手から発信することが多い気がします」
――勝ち続けるためにカギとなるのは何ですか。
「連覇ということを考えるチームではないですし、自分たちの色が出せればいいかなと思っています。日本代表に行っているメンバーが帰ってくると、チームの編成も変わるし、彼らがどれくらいフィットするかも分かりません。代表選手がいない間は、これまで出場機会がなかったメンバーが試合に出て全体のレベルアップを図っています。代表メンバーは強いプレッシャーの中でラグビーをしているのでメンタルのケアも必要です」
――そこは堀江選手の経験が生きてきますね。
「休むべきかどうかなどアドバイスはしたいと思います。代表選手は早くチームに馴染むために一生懸命やるでしょう。でも、僕はいったんラグビーから離れたほうがいいと思っています」
――堀江選手はマルチなスキルを持つイメージがありますが、ラグビーを始めた頃からなんでもできたのですか。
「サッカー、バスケットボールの経験があるので、そういう技術は持っていました。日本、ニュージーランド、オーストラリアなどでプレーするなかで、コーチに言われたことを100%表現することを続けたらこうなっていました。ラグビーのコーチは、パス、キックなど、なんでも教えてくれます。各ポジションそれぞれに専門のコーチがいたら、専門の技術しか覚えませんが、ラグビーはトータルのコーチが多い。試合ではめったにジャッカルしない選手にも、練習では教えてくれますよね。それを生かすということです」
――グラバーキック(ディフェンスの背後に転がすキック)は練習しているのですか。
「高校生の頃、仲が良かったLOの選手がいて、朝練でキックオフのキャッチを練習したいと言い出しました。僕はサッカーの経験があったので、『俺が蹴る』と言って、キックオフの練習相手になりました。そこからラグビーのキックを覚え始めました。延長線上にグラバーキックがあります。同じ高校生でも上手いキックを使う選手がいたら、真似してみようと思って練習する。そんなことの繰り返しですね」
――ちなみに、試合でドロップゴールを決めたことはありますか。
「まだないですね。引退するまでに決めたいですね。いつも狙っていますよ」
堀江翔太選手
――堀江選手の前に先発する坂手淳史選手はどんな存在ですか。
「ライバルでもあるし、育てたい後輩でもあるし、両方ですね。坂手は最近、僕がずっとお世話になっている佐藤義人トレーナーのトレーニングを始めました。成長している過程ですので、佐藤さんの考え方、動きについては僕も教えたいと思っています」
――36歳になったいま、どんな身体のケアをしていますか。
「ほとんどケアはしていません。唯一ストレッチをするのは、ふくらはぎと足の甲で、練習前に伸ばしています。足の指を使って走るので、足の裏とふくらはぎが関係するからです。柔らかく使わないと、ふくらはぎに影響があるんですよ」
――24時間ウォーキングをしたという記事を拝見しました。なぜ24時間歩こうと思ったのですか。
「来年のラグビーワールドカップ(RWC)に向けて、自分の身体を知るには一番良いと思ったからです。僕は腰の狭窄症があり、悪い歩き方をすると足がしびれます。良い歩き方をすると、しびれない。それを知るために24時間歩いて、しびれの出ない歩き方を身に着けるのは自分のレベルアップのために必要だと考えました」
――それは、佐藤トレーナーの考え方なのですか。
「佐藤さんは24時間ウォーキングを10回以上やっています。でも、今回は勧められたわけではなく、僕自身がそれをやりたいと言いました。RWC前にはやっておきたかったのですが、できる時期が今しかなかったのです」
――バランスよく歩くことが大事なのですか。
「それもあるし、上半身、足首、足の指、大腿部と、いろいろなところに気を付けて歩くのですが、良い歩き方をしていないと、24時間もちません。途中で座り込んで動けなくなります。僕は24時間歩いたのですが、痛みが出そうな部分は歩き方を変えて、痛みを取りました。痛みが出た場所は、何年か後に痛みが出る場所です。それも自分で分かりました。腰や膝の調子が悪いときは、上手く身体を使えていないということが自分の中で整理できました」
――24時間というと、何キロ歩くのですか。
「本当は80キロ以上歩きたいのですが、その時は、トレーナーも含めて6名ほどで一緒に歩いたので、75キロくらいでしたね」
――すべては、2023年のRWCで最高のパフォーマンスを出したいということなのですね。
「そういうことです。38歳で迎えるRWCですが、前大会よりもレベルアップした姿を見せたいです。フィジカルも、プレーの質も上げていきたいですね」
――開幕戦は東芝ブレイブルーパス東京です(12月17日、熊谷ラグビー場)。どんな試合を描いていますか。
「東芝もボールを動かす新しいスタイルになっているし、苦しい展開になると予想しています。いまはどのチームも強いので、しっかりパナソニックの良いラグビーを見せたいです。ホーム(熊谷)でできるので、いい結果を出したいですね」
――東芝のスローガンは、「猛勇狼士」。激しく、ガツガツ行く原点回帰という感じです。
「新しいスタイルになったのだから、戻らなくていいのに(笑)。初心に帰ることが大事だということでしょうね。それはとても良いことだと思います」
――ワイルドナイツは何を掲げていますか。
「ないですよ(笑)。天狗にならないことが大事です。謙虚に、感謝を忘れずにラグビーをすることが大事だということを態度で示したいです」
――新しく入ってきた選手で、戦いたい選手はいますか。
「松島幸太朗(東京サントリーサンゴリアス)は、みなさんの期待感があるでしょうね。それは相手にすると嫌だなと思います。僕はどんな相手に対しても対戦が楽しみだと思ったことはありません。強い相手と対戦するのは嫌ですよ。負けたくないですから」
――でも、ラグビーは楽しんでいるのですよね。
「楽しいですよ、ラグビーは。頭と身体をずっと働かせて達成感を得ることができます。次の試合までに対戦相手を分析して、戦い方をイメージして、食事制限までして準備をする。終わった時の達成感は何物にも代えがたいものがあります。それに、ラグビーは夢中になれるスポーツです。ラグビーをしていたら、しんどすぎてそれ以外のことは何も考えられません。でもね、しんどいです。だから、戦う前から『楽しみです』と言っている選手がいると、よく言えるなと思いますよ(笑)」
――改めて聞きますが、リーグワンの連覇は意識しないのですか。
「僕は目の前の試合を勝って、積み重ねていく先に優勝が見えてくると考えるタイプです」
――それは日本代表でも同じですか。
「リーグワンのパフォーマンスが良くなければ、日本代表にも選ばれませんよね。良い練習をしなければ良い試合もできない。日々成長していきたいです。そして、日本代表もチームとして成長しなければいけない。2019年のRWCよりもいい成績を残したいし、その場に僕が立っていないと、そんな想いを持っていてもどうにもならない。だから、選ばれるように、毎日良い練習をして、良いプレーを続けたいと思っています」
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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