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ベスト8に挑むサクラフィフティーン
10月8日(土)から11月12日(土)の日程でニュージーランドで「ラグビーワールドカップ2021(女子)」が開催されます。コロナ禍の影響で開催が1年延期されましたが、第9回目の大会となり南半球で初めて行われます。そこでワールドカップ(女子)の概要や歴史、注目ポイントなどをQ&A形式で紹介していきます。
Q:大会の概要を教えてください
「ラグビーワールドカップ(女子)」は、男子と同じように、1991年から4年に1度開催される、「ワールドラグビー」が主催する15人制女子ラグビーの世界最高峰のトーナメントです。
なお、「ワールドラグビー」は女子と男子の平等性を高める取り組みの一環として、2019年に女子ラグビーワールドカップを2021年から性別の指定をせず、ラグビーワールドカップという名称で正式に展開すると発表しました。したがって、今大会の正式名称は「ワールドカップ2021」で、コロナ禍で1年延期されたため2022年秋に開催されます。
Q:大会日程を教えてください
予選プールが10月8日(土)から始まり、23日(日)まで行われます。準々決勝10月29日(土)30日(日)の両日に4試合、準決勝が11月5日(土)に2試合、そして、3位決定戦と決勝が11月12日(土)に開催され、今大会の優勝国が決まります。J SPORTSでは全試合をオンデマンドでLIVE配信します。
Q:大会のフォーマットを教えて下さい
第9回となる今大会は前回優勝で、過去最多の5回の優勝を誇る王者ニュージーランドが、初めて女子のワールドカップを開催することになりました。また、今大会は南半球の国による初の開催となります。
出場国は、前回2017年のアイルランド大会の上位7チームと、大陸予選やプレーオフを勝ち抜いた5チームの計12チームが参加します。試合日程は、当初は35日間の予定でしたが、選手の休養などを考慮されて、ニュージーランドでの大会前準備を含めて43日間に拡大され、チームのスコッド人数も28名から32名に増加しました。
大会は4チームずつをA・B・Cの3つのプールに分け、総当たりのプールステージを戦います。各プール上位2チームと、3位になった3チームの中で勝ち点の多い2チームが決勝トーナメントに進出します。なお各プールの出場国は下記の通りです。
プール戦組み合わせ
Q:優勝候補はどこですか?
やはり、開催国で前回優勝の「ブラックファーンズ」こと、ニュージーランド代表が優勝候補の筆頭でしょう。試合数の関係で世界ランクこそ2位ですが、2017年アイルランド大会の優勝メンバーや、昨年の東京オリンピックで金メダルを獲得した7人制代表メンバーも多く含まれます。また、男子同様に若手も層が厚く、連覇の可能性は大いにあります。
また、前回準優勝で世界ランキング1位のイングランドは、今年のシックスネーションズ(欧州6カ国対抗)でグランドスラム(全勝優勝)を達成し、現在4連覇中です。こちらも2014年以来、3度目の優勝を狙っています。また、前回3位のフランスは、2024年パリ五輪を控えていることもあり、近年強化が進み、初優勝のチャンスを伺っています。
Q:これまでの大会の歴史を教えてください
女子のワールドカップは1991年に第1回大会が開催されましたが、国際ラグビー評議会(IRB、現・ワールドラグビー)から正式な承認を受けたのは1998年大会からのことでした。のちに、2009年になってようやくIRBは第1回の1991年ウェールズ大会と、第2回の1994年スコットランド大会とその優勝チーム(アメリカ、イングランド)を遡って認定しました。
第3回以降はオランダ(1998年)、スペイン(2002年)、カナダ(2006年)、イングランド(2010年)、フランス(2014年)、アイルランド(2017年)とすべてヨーロッパで開催されてきました。
過去の大会と優勝国
優勝国はニュージーランドが最多の5回(1998、2002、2006、2010、2017年)、イングランドが2回(1994,2014年)、アメリカが1回(1991年)です。
Q:これまでの日本の成績を教えてください
日本は1991年の第1回大会、1994年の第2回大会、2002年の第4回、第8回の2017年のアイルランド大会まで、過去4度ワールドカップに出場しており、今回が5回目の出場となります。最高成績は第2回スコットランド大会の8位でした。
日本は第1回大会では、1得点もあげることができず最下位に終わりました。1994年の第2回大会はスウェーデンに勝利し8位。第3回大会は出場せず、第4回大会では13-16位決定戦で2勝を挙げて出場16チーム中13位となりました。
その後、3大会でアジア予選を通過できませんでしたが、前回のアイルランド大会に出場し、順位決定戦で香港を破り11位となりました。今大会も出場するSH(スクラムハーフ)津久井萌が大会ベストフィフティーンに選出されています。
Q:日本代表「サクラフィフティーン」の活躍は期待できますか?
今大会に向けて、2019年から、元カナダ代表HO(フッカー)のレスリー・マッケンジーHC(ヘッドコーチ)が指揮を執り、チームの強化を進めてきました。
コロナ禍でテストマッチの経験を積むことは難しかったですが、それでも前回大会にも出場したPR(プロップ)加藤幸子や、SO(スタンドオフ)山本実らがイングランド、PRラベマイまこと、CTB(センター)古田真菜がオーストラリアのブランビーズでプレーするなど、選手たちを海外で経験を積ませました。
また、2021年はヨーロッパに遠征し、ウェールズ代表、スコットランド代表、アイルランド代表と対戦しました。今年に入ってオーストラリア遠征でオーストラリア代表に、日本国内のテストマッチでアイルランド代表に勝利しています。
キャプテンのPR南早紀、代表最多の30キャップを超える前キャプテンFL(フランカー)齊藤聖奈を中心とした経験値の高い選手と、今年ブレイクしたFB(フルバック)/CTB松田凜日ら若い選手のバランスの取れたチームで、プールステージを突破しベスト8進出を狙います。
Q:日本と対戦する3カ国は強いですか?
現在、世界ランキング13位の日本代表は10月9日(日)の15:15(日本時間11:15)にカナダ代表(3位)との初戦を迎えて、15日(土)の17:30(13:30)にアメリカ代表(6位)戦、23日(日)の12:45(8:45)にイタリア代表(5位)と対戦します。
初戦を戦う世界ランク3位のカナダは、これまで全てのワールドカップに出場しており、ニュージーランド、イングランドにはなかなか勝てませんが、2014年には準優勝もしている強豪の1つです。
両親ともに元カナダ代表主将で自身もキャプテンを務めるFL(フランカー)ソフィー・デグートを筆頭に、PRオリヴィア・ドゥメルシャン、HOローラ・ラッセル、LO(ロック)タイソン・ブークブームと、非常に経験値の高いFW(フォワード)が揃っています。また、近年ではイングランドのプレミアシップでプレーする選手も増えており、層の厚いチームです。
第1回大会優勝のアメリカも前回4位の実力国です。キャプテンのFLケイト・ザッカリー、7人制でも活躍するFB/CTBアレブ・ケルター、PR/HOホープ・ロジャーズと、主力の多くがイングランドでプレーしています。日本にとって手強い相手となることは間違いないでしょう。
前回大会で日本代表を順位決定トーナメントで破り、9位となったイタリアは2006年にシックスネーションズに参戦するなど、近年強化が進んでいます。9月9日に行われたフランス代表戦では26-19と勝利し、世界ランクも5位まで上げています。
107キャップのベテランSHサーラ・バラッティン、88キャップのWTB(ウィング)/FBマヌエラ・フルラン、57キャップのCTBベアトリーチェ・リゴーニと、国際経験の豊富な選手も多いチームとなっています。
サクラフィフティーンが目指すベスト8進出には、プールBで上位2チームに入るか、各プール3位になった3チームの中で勝ち点の多い2チームに入る必要があります。サクラフィフティーンはたとえ試合で負けても、勝ち点で上乗せすることが重要となってきます。※世界ランキングは2022年10月3日時点
Q:大会の注目選手は誰ですか?
まず、前大会のトライ王で世界最優秀選手にも輝いたニュージーランドのWTBポーティア・ウッドマンです。9月24日に行われた日本とのテストマッチでは7トライを挙げるなど、今大会もそのトライに注目が集まるでしょう。ニュージーランドには2019年7人制最優秀選手のWTBルビー・ツイ、7人制の主将を務めるFLサラ・ヒリニもいます。
イングランドはLO(ロック)ゾーイ・オールドクロフト、CTBエミリー・スカラットと、世界最優秀選手受賞経験のある選手がいます。また、フランスはFBジェシー・トレムリエール(2018年ワールドラグビー最優秀選手)、SHロール・サンサス(2022年シックスネーションズ最優秀選手/トライ王)を擁しています。
他にも、7人制、15人制のウェールズの中心選手で東京五輪でも活躍したWTBジャスミン・ジョイス、オーストラリア代表にはリオ五輪の金メダリスト、FLシャノン・ペリーと元フィジー代表ネマニ・ナドロのいとこで、SHイリセヴァ・バティバサガがいます。
その他にも、フィジー代表にはセブンズのレジェンド、ワイサレ・セレヴィを父に持ち、弟のFLピエールが日本大学でプレーするHOアシナテ・セレヴィもいるので注目です。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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