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早稲田大学 vs. 筑波大学
早稲田大学の真価に注目が集まっている。
早大は夏の時点で、昨季チャンピオンの帝京大学を凌駕する勢いだった。
長野・菅平高原にて行われた練習試合で、実力別のA~Dチームが行った4試合の結果は以下だった。
早大A×帝京大A ●28-35
早大B×帝京大B ●24-26
早大C×帝京大C 〇29-7
早大D×帝京大D ●10-14
3敗はしたものの、いずれも7点差以内の接戦。Cチームに関しては勝利した。大学随一のタレントを誇る帝京大を相手に、チーム全体の高いモチベーション、実力を示したのだ。
2019年度以来3季ぶりとなる『荒ぶる』(優勝時にのみ試合後に歌われる第2部歌)は実現するのか――。
9月10日(土)には関東大学対抗戦Aグループが開幕。早大は青山学院大学を30点差(38-8)で降した。
指揮2年目を迎えた元ヤマハ発動機(現静岡ブルーレヴズ)のレジェンド司令塔、OBの大田尾竜彦監督は、青学大戦後にまず規律面を讃えていた。
「今日一番良かったのは、試合を通じて規律が非常に高く保たれていたこと。反則が3つでしたね。ラインブレイクされることもほとんどなく、そこは安定して試合を見ていれたと思います」
そんな白星スタートを切った早大は、9月18日(日)に序盤のヤマ場を迎える。
早大の太田尾監督は、青学大戦後に「ブレイクダウンのところに課題が少し残る」と語っていたが、筑波大は伝統的にそのブレイクダウンが強み。明大戦では見事なカウンターラックも披露した。
早稲田大学 相良昌彦 主将
また、早大のNO8相良昌彦主将が同じく青学大戦で挙げた課題があった。前半40分間の出来だ。
「前半イージーなミスが続き、1つしかトライを取れなかったので、そこは良くなかったかと思います」(早大・NO8相良主将)
着実に実力をつける青学大の奮闘もあり、前半のリードは4点(7-3)に留まった。
一方で、明大戦における筑波大は前半好調。38分頃まで5点リード(12-7)を奪っていた。果たして日曜日はどちらが機先を制し、試合を有利に進めるのか。
本稿執筆時点で両軍メンバーは発表されていないが、早大は強豪高校出身者と、附属・系属校高校出身者がミックスされた、充実の布陣が予想される。
早大は附属校、系属校による強化が成功している大学のひとつだ。
NO8相良主将は早稲田実業が79大会ぶりに花園出場を果たした時の主将。大学と連携したS&C(ストレングス&コンディショニング)強化など、緻密な準備によって戦略的に花園出場を掴んだ。
同じく早実のPR井元正大(4年)、LO池本大喜(4年)、当時1年生司令塔だったSO守屋大誠(2年)、FB小泉怜史(4年)らも、早大の主力に成長し、4年生はついに大学ラストシーズンを迎えた。
フロントローでは共に2年生のHO佐藤健次(桐蔭学園)とPR亀山昇太郎(茗溪学園)が主力に。HO佐藤は唯一無二のフットワークと突進力を併せ持つ。モール最後尾にいるだけで脅威となる。
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野中健吾(早稲田大学)
前戦はCTB野中健吾(1年、東海大大阪仰星)が対抗戦デビューを果たした。視野の広いスキルフルなルーキーは今季どこまで成長するか。
筑波大戦での見どころのひとつは、やはりセットプレーの攻防だ。
早大は今季よりさらにスクラムを強化。担当にはヤマハ発動機の名プロップだった仲谷聖史アシスタントコーチがいる。先発1番としてスクラム一本でパナソニックを撃破した2016年度のトップリーグ開幕戦など、サイズに頼らないスクラムの妙味を知る職人だ。
早大の1番PRに定着している井元は165センチ。仲谷コーチの薫陶を受けたFW陣が、青学大戦では不安定だったスクラムをどう修正してくるか。
かたや筑波大は、東芝ブレイブルーパス東京のHO橋本大吾がスクラム強化に関わる。開幕戦の明大戦では一進一退の攻防を繰り広げており、スクラムが強みとなっている。
こちらも出場メンバーは未発表だが、筑波大のフロントローはフィールドプレーでも暴れ回る。
筑波大学 木原優作主将
PR木原優作主将は攻守に抜群の働きをするオールラウンダー、HO肥田晃季(4年)はトライセーブも見せる玄人だ。PR田中希門(3年)は182センチのスクラム猛者で、運動量豊富だ。
筑波大は高さと技術のあるラインアウトも武器だ。
明大戦の先発バックファイブ(ロック+バックロー)の平均身長は186.4センチ。開幕戦の明大(平均185.8センチ)、早大の平均182.2センチも上回っている。
明大戦では多彩なムーブ、鋭いリフトによるディフェンスも見せた。
副将のLO八木澤龍翔(4年)や将来性あるFL茨木颯(1年/東福岡)、積極果敢な突進も武器であるCTBから転向したNO8谷山隼大(3年)など、個性豊かなバックファイブの躍動に期待したい。
早大同様、筑波大のバックスもタレント豊富。
楢本幹志朗(筑波大学)
前戦はルーキーのSO楢本幹志朗(東福岡)が先発した。頼もしい守備人でもあるスピードスターのWTB大畑亮太(2年)、ロングキックも魅力のCTB浅見亮太郎(2年)、副将のCTB松島聡(4年)、FB高(中が目)田賢臣(3年)がいれば攻守に頼もしい。
やはり試合の注目はスクラム戦だ。
今週日曜日には大型で強い台風14号が九州に接近する見込みという。離れた場所でも風が強まる恐れがあるとされ、また群馬という土地柄もあって強風は免れないかもしれない。
ラインアウトのノット・ストレートは厳格化の方向であり、スクラムによる再開が多くなるとみられる。セットプレーの他、ブレイクダウンの攻防にも着目したい。
ただやはり創意工夫に長けた両軍だけに、観る者を驚かせるような創造性溢れる勝負手には期待せざるを得ない。
何が何でも目の前の勝利を掴み取る――。そんなチーム文化、指揮官とメンバーの揃った両軍だ。
多くの大学ラグビーファンが見守る中、日本一を目指す両雄はどんな戦いを見せてくれるのか。
文:多羅 正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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