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ラグビー コラム 2022年8月29日

【ハイライト動画あり】押し切った東海大と巧者ぶりを発揮した慶應義塾大、それぞれ貴重な収穫と課題を得た80分。ラグビー菅平夏合宿練習試合レビュー

ラグビーレポート by 直江 光信
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2週間後に迫った秋の公式戦開幕へ向け、ここまで積み上げてきたものを確かめ、ここから何をしなければならないかを見極める。それが夏合宿のトレーニングマッチの重要なテーマだ。8月28日にサニアパーク菅平のメイングラウンドで行われた慶應義塾大と東海大の一戦は、両校にとってまさにそんなゲームとなった。

菅平特有の霧がグラウンドを覆う中で始まったこの試合。まずペースをつかんだのは慶應義塾大だった。マイボールのキックオフを深く蹴り込み、出足鋭いタックルと献身的なカバーリングで東海大のパワフルなアタックを止め続ける。一連の流れでペナルティを獲得すると、ゴール前ラインアウトからモールを形成。HO中山大暉が判断よく密集横を突いて開始4分に先制トライを挙げた。

8分には敵陣ゴール前のマイボールスクラムで反則を誘い、迷わずPGで加点。開始10分で10-0とリードを奪う。

効果的なキックとチームの強みであるひたむきなディフェンスで東海大を相手陣に押しとどめ、得点機を着実にスコアに結びつけて先行する。ここまでは慶應義塾大の狙い通りの流れだ。しかし東海大はそのままズルズルとは引き下がらなかった。苦しい展開にも動じることなく原点に立ち返って接点で激しく体を当て、相手のエラーや反則を誘発。15分過ぎにようやく敵陣深い位置でマイボールラインアウトを得ると、モールを一気に押し切って7点を返す。

20分には中央付近の連続攻撃でSO武藤ゆらぎが鋭くギャップを突破し、あざやかなコース取りでそのままインゴールへ。これで12-10と逆転すると、自陣でのピンチをしのいで迎えた36分にはスクラムを圧倒してペナルティトライを奪取する。19-10と点差を拡大して、前半を折り返した。

立ち上がりこそ相手に主導権を握られたものの、中盤以降に持ち味を発揮して流れを引き寄せた東海大は、その勢いのまま後半も先に得点を重ねる。42分、FWの連続ゲインで慶應防御を中央に集めると、大外のスペースへSO武藤が長いカットパスを通しWTB岡村優太がトライ。54分にはスクラムの優勢を生かしてブラインドサイドを攻略し、WTB中川がゴールラインを越える。さらに58分、ラインアウトからFLレキマ・ナサミラが豪快なランでポスト横へ駆け抜け、スコアは36-10まで広がった。

大学ラグビー2022開幕直前! 菅平合宿 練習試合

【ハイライト動画】慶應義塾大学 vs. 東海大学

そのまま東海大が引き離すかに思われた状況だったが、慶應義塾大もここで簡単には屈しなかった。LOアイザイア・マプスアやキャプテンのFL今野勇久らの奮闘で徐々に形勢を立て直すと、70分にふたたびラインアウトモールを押し込んで2トライ目を挙げる。終了間際には辛抱強くフェーズを重ねて敵陣ゴール前でボールを継続し、タイミングよく走り込んだFL樋口豪がインゴール中央にグラウンディング。36-24まで点差を縮めたところで、フルタイムとなった。

勝った東海大は序盤の劣勢にも動じることなく自分たちのスタイルを忠実に遂行し、中盤以降ゲームを支配したところに、チームとしての確かな地力を感じさせた。接点のバトルやセットプレー、モールなど、戦い方のベースとなる部分で堂々と慶應義塾大を押し切ったことは、選手の自信につながるはずだ。一方で淡白なエラーから主導権を掌握するまでには至らず、ゲーム内容ほど差をあけられなかった印象も残った。つけ入る隙を与えず勝負を決め切る無慈悲さを身につけることが、悲願の大学日本一に手をかけるための鍵かもしれない。

敗れた慶應義塾大も見事なプラン遂行力で文字通り機先を制し、狙い通りにタイトな展開に持ち込むなど、伝統の試合巧者ぶりを随所に披露した。スコアが開きかけた局面でも集中力を切らさず、終盤の反撃で12点差まで詰め寄ったことは、チームにとって小さくはない意味があるだろう。半面、イージーミスや反則で相手に息を吹き返すきっかけを与えたのは大きな反省材料。「自分たちの時間帯」をできる限り長くすべく、プレーの精度を高めていくことが、上位進出を果たすための条件となる。

それぞれが貴重な収穫と課題を手にした80分。この感触を、今後どのようにチームの成長へと結びつけていくのか。秋以降の戦いが楽しみになる一戦だった。

文:直江 光信

直江 光信

スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。

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