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ラグビー コラム 2022年8月1日

サクラフィフティーン、好機生かせず。ディフェンス乱れ、南アフリカ代表に敗れる

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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15-6という女子日本代表(サクラフィフティーン)の勝利から1週間。より良く変化したのは南アフリカ代表だった。7月30日(土)、埼玉県の熊谷ラグビー場は、午後5時45分のキックオフにもかかわらず、35度という暑さだった。その中で体力を消耗する戦いを強いられたのはホームのサクラフィフティーンだった。

大塚朱紗

序盤はサクラフィフティーンが攻め込む。前半5分、ゴール前のラインアウトからモールでゴールラインに迫り、最後は左ショートサイドを攻め、SH阿部恵のパスにSO大塚朱紗が走り込んで先制トライ。その後は南アフリカ代表の猛攻を受けるが、一人一人が的確にタックルを決めて粘った。サクラフィフティーンもFB庵奥里愛がカウンターアタックを仕掛けるなど局面を打開しようとするが、南アフリカ代表にブレイクダウン(ボール争奪局面)で激しくプレッシャーをかけられ攻撃を継続できない。

最大のチャンスは前半24分に訪れた。自陣からWTB黒木里帆がステップでタックルをかわし、HO永田虹歩につなぐ。永田は大きなストライドで左タッチライン際を前進し、南アフリカ代表陣深く入って内側にサポートしたSO大塚にパスを出す。南アフリカ代表のバッキングアップのディフェンスはおらず、トライは間違いのないシーンだった。しかし、勢いよく走り込んだ大塚とわずかにタイミングが合わず、ボールはこぼれ落ちる。ここでトライしていれば精神的に優位に立てただけに手痛いミスだった。

リビー・ヤンサ ファン レンズバーグ

サクラフィフティーンのディフェンスがほころびたのは、前半32分のことだ。南アフリカ代表陣でのディフェンスでBKラインが相手のパスをカットする勢いで飛び出す。ここで内側のディフェンダーは少し遅れた。南アフリカ代表SOリビー・ヤンサ ファン レンズバーグはパスを止め、タックルをかわして一気に前進。ハーフウェイラインを越えてスピードのあるWTBアヤンダ・マリンガにパス。マリンガにそのままインゴールまで走られ、ヤンサ ファン レンズバーグにゴールも決められて、7-5と逆転を許す。

2分後、再び南アフリカ代表陣内からの攻撃を止めきれず、マリンガに走られてしまう。スコアは、12-5で前半が終了。南アフリカ代表は、第1戦よりもフィジカル面で徹底してプレッシャーをかけてきた。ブレイクダウンでボール出しを乱され、スクラムでも圧力を受けた。攻撃が継続できないサクラフィフティーンは、7割方ディフェンスの時間となり、懸命にタックルしたが、対格差もあって次第に体力を消耗することになった。

齊藤聖奈

後半はキャプテンのPR南早紀、FL鈴木実沙紀、CTB鈴木彩香ら経験豊富な選手を次々に投入して連続攻撃を仕掛けたが、ディフェンスを突破しそうになると決まってハンドリングエラーが起きた。24分、WTB名倉ひなのが右コーナーに飛び込もうとしたシーンが点差を詰める最大のチャンスだったが、タッチラインに押し出された。その後、南アフリカ代表FBナディーン・ルースに抜け出され、WTBシマンケーレ・ナンバにトライを奪われる。この時点でスコアは、20-5。勝敗は決した。終了間際、FL齊藤聖奈が鈴木実沙紀のサポートを受けて意地のトライを返し、20-10でノーサイドとなる。

「私たちの準備に慎重さが足りなかったことを物語っている」とは、レスリー・マッケンジーヘッドコーチ。「自分たちを信じたことは良かったが、信じすぎていたところもある。立ち位置を見つめなおしたい」と話した。南早紀キャプテンは悔しさを押し殺して言った。「私たちはまだまだ成長段階だと思います。これからも成長し続けるので応援をよろしくお願いします」。

 

試合直後、円陣を組むサクラフィフティーンの横で、南アフリカ代表の選手たちは笑顔で歌った。サクラフィフティーンと健闘を称えあうときは、多くの選手が笑顔で「ありがとう」と日本語を口にした。テストマッチは真剣勝負だが、ラグビーを愛する者同士の交流の場でもある。初めての対戦で1勝1敗。悔しい負けではあったが、笑顔で集合写真に収まる両チームを見ながら大切なことを再確認することができた。10月8日に開幕するラグビーワールドカップ(ニュージーランド開催)ではきっと応援し合うだろう。8月、南アフリカ代表は世界ランキング10位のスペイン代表と、サクラフィフティーンは同7位のアイルランド代表とのテストマッチが待っている。ともに成長しニュージーランドの地で再会してもらいたい。

文:村上 晃一

村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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