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ラグビー コラム 2022年5月22日

グリーンロケッツ、待望の今季初勝利。重要な初戦の序盤を制し、ヒートの挑戦を退ける。D1/D2入替戦レビュー

ラグビーレポート by 直江 光信
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田中 史朗(NECグリーンロケッツ東葛)

残留か昇格か。5か月にわたるシーズンの集大成にして、来季の戦うステージを決する出発点でもある入替戦のキーワードは、“プレッシャー”である。

上位リーグの厳しい戦いを通して培った地力は、そのレベルのゲームを経験していない相手にとっては未知の圧力だ。一方で試合がもつれる展開になれば、背中にのしかかる重圧は挑む側よりも受ける側のほうが大きい。それゆえに序盤の主導権争いでどちらが優位に立てるかが大きな意味を持つ。この日、その大切な時間帯を支配したのは、ディビジョン1で16位のNECグリーンロケッツ東葛だった。

キックオフ直後からSH田中史朗とSOフレッチャー・スミスのHB団を軸にテンポよくボールをさばき、自陣からでも果敢にアタックを仕掛けた。すると開始2分、試合の流れを決定づけるシーンが訪れる。グリーンロケッツがオーバーラップを作った場面での三重ホンダヒートのWTB渡部寛太のプレーがデリバレイト(故意の)ノックオンと判定され、シンビンに。グリーンロケッツは開始早々に相手がひとり少ない状況で10分間を戦う好機をつかんだ。

ディビジョン2の2位ヒートも気迫満点のタックルで食い下がったが、そこからほどない7分、均衡が崩れる。キックレシーブからのカウンターアタックを起点にした中盤の右展開で、WTB後藤輝也が鋭くラインブレイク。裏へ蹴り込んだボールのバウンドにピタリと合わせてみずからキャッチし、インゴールへ飛び込んだ。

さらに14分には敵陣22メートルライン内の左ラインアウトからFWの縦突進で近場を崩し、ゴールラインに接近。最後はNO8ジョージ・リサレ-FLアセリ マシヴォウと強いボールキャリアーがつないで仕留め切る。これでリードは12-0と広がった。

その後もグリーンロケッツは勢いに乗ってたたみかけ、優勢にゲームを進める。細かなミスでいくつかのチャンスを取り切れず、32分にSOジョノ・ランスのPGでヒートに3点を返されたものの、ボールポゼッション、テリトリーのいずれも相手を圧倒。37分にゴール前のFW戦で圧力をかけてペナルティトライを獲得すると、前半終了間際の42分にもラインアウトモールを力強く押し切り、26-3と大きく先行してハーフタイムを迎えた。

後半は44分にWTB後藤が危険なタックルでシンビンになったこともあって膠着する時間が続いたが、グリーンロケッツペースの流れは変わらず。ヒートもフィニッシュのシチュエーションでエラーや反則が重なり、スコアが停滞したままゲームはラスト20分の勝負どころに突入する。そしてこの大切な場面で、追加点を挙げたのがグリーンロケッツだった。

61分、中盤のマイボールラインアウトから絶妙のキックパスで左サイドを崩して敵陣に攻め入ると、細かくパスをつないで右オープンに展開。エッジのスペースでボールを手にしたFLマシヴォウがスピードに乗って駆け上がり、約40メートルを独走してコーナーに押さえる。SOスミスが難しい位置のコンバージョンも決めて、33-3と突き放した。

ヒートも67分、中盤でのペナルティからWTB尾又寛汰がクイックタップで仕掛け、小刻みなステップで相手ディフェンスを切り裂いてようやくこの日最初のトライをマーク。なおもアグレッシブな姿勢で攻め立てたが、あと1本つながればというパスがなかなか通らず、点を伸ばせない。終盤は疲労の蓄積もあってお互いに決め手を欠き、最終的には33-10でフルタイムとなった。

グリーロケッツの最大の勝因は、試合の入りの部分の勢いとプレー精度で上回り、余裕を持ってゲームを進められる展開に持ち込めたことだ。とりわけ大きい存在感を示したのは、的確なコントロールでプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選出されたSH田中とSOスミスのHB団。リーグ戦では戦っての白星がなかっただけに、2回戦制で行われる入替戦の重要な初戦をものにしたことはもちろん、シーズンの連敗をストップできたという点でも、チームにとって価値ある勝利となった。

敗れたヒートはLOフランコ・モスタートやNO8ヴィリアミ・カイポウリ、FBマット・ダフィーら主軸の欠場に加え、先にスコアを許し追いかける状況になったことで、終始流れに乗り切れなかった。不用意なペナルティーでリズムがぶつ切れになり、焦りからか強引なプレーでチャンスを逃す局面が複数あった点は、大きな反省材料だろう。一方で点差が開いた後も戦う姿勢を維持し、ズルズルと引き離されず終盤に一矢報いたことは、次戦につながるはずだ。

今回の入替戦は2回戦制で行われ、2試合トータルの結果で勝敗が決まる。この結果を踏まえそれぞれがいかに課題を修正し、どのようなパフォーマンスを見せるのか。1週後の花園ラグビー場での第2戦(5月27日金曜日、19時キックオフ)が楽しみだ。

文:直江 光信

直江 光信

スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。

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