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豪華布陣で迎える2週後の再戦は熱戦必至。リーグワンプレーオフ準決勝、埼玉ワイルドナイツ×クボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦プレビュー
ラグビーレポート by 直江 光信埼玉ワイルドナイツ vs. クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
勝利と敗北が天と地ほどの隔たりを意味する。それがプレーオフの戦いだ。レギュラーシーズンを通して実力を証明してきたトップ4の精鋭が、究極の仕上げで挑む最終決戦。栄えある初代王者の称号をめぐる激突は、まちがいなくリーグワン元年の掉尾を飾るにふさわしい激闘となるだろう。
5月22日の日曜日、秩父宮ラグビー場で14時にキックオフを迎える準決勝第2試合は、リーグ戦2位の埼玉パナソニックワイルドナイツと、同3位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイの顔合わせとなった。くしくも両者は5月7日のリーグ戦最終節で対戦しており、この時はホストのワイルドナイツが後半30分以降に3トライを挙げて35-14で勝利している。そこでつかんだ感触を踏まえ、それぞれがどのようなプランで15日後の再戦に挑んでくるのか。それがこの一戦の最大の焦点となる。
戦った試合は負けなしの14連勝(不戦敗が2つあるため数字上の成績は14勝2敗)で駆け抜けたワイルドナイツの強みは、リーグ随一の分厚い選手層だ。登録メンバーはもちろんノンメンバーにまでトップクラスの実力者がひしめき、その重厚な戦力が、相手の渾身の攻守を受け止めはね返す横綱相撲を可能にしている。とりわけ際立つのはフロントロー陣の充実。PR稲垣啓太、HO坂手淳史、PR平野翔平の先発3人に加え、ベンチで戦況を見極めながら出番を待つPRクレイグ・ミラー、HO堀江翔太、PRヴァルアサエリ愛の日本代表勢の存在が、いかなる流れにも動じず主導権を手繰り寄せられる安定感につながっている。
得意のトライパターンは、堅牢な組織ディフェンスをベースにボールを奪ったところからマリカ・コロインベテ、竹山晃暉の両WTBやCTBディラン・ライリーらスピードランナーが一気に切り返すカウンターアタック。そのうえ自分たちで仕掛けて相手防御を崩す型も備えていることが、どんな試合展開でも勝ち切れる強さの理由だ。相手にすれば攻めている時も守っている時も常にプレッシャーにさらされ続けるため、疲労が蓄積してくる終盤に集中力の綻びを余儀なくされる。
12勝4敗(うち不戦勝2)の3位でリーグ戦を通過したスピアーズは、国内屈指の大型FWの推進力を軸にした頑健なスタイルで近年着実にチームのスタンダードを高めてきた。今季敗れた4試合のうち10点差以上の負けは、14-14の同点から残り10分で突き放された最終節のワイルドナイツ戦だけ。サントリーサンゴリアスに肉薄し、トヨタヴェルブリッツ、東芝ブレイブルーパス東京、コベルコ神戸スティーラーズといった実力者を完勝で退けてのプレーオフ進出は、トップクラブの評価を確たるものとする堂々の足跡といっていい。
さらに今シーズンは、ベストラインブレーカー賞に輝いたルーキーのWTB根塚洸雅の台頭などでBKの得点力が向上したことも、チームとして次のステージへ進む原動力となった。リーグ戦での総得点555、総トライ数76は、いずれも首位のサンゴリアス(それぞれ577、78)に次ぐ全体2位の数字。ライン攻撃やキックカウンターによる突破が増えたことで、相手ディフェンスの意識が分散し、自慢のFWの破壊力がより引き立つ相乗効果を呼んでいる。
ワイルドナイツのHO堀江が「ガラッと戦術を変えてくると予想している」と語ったように、戦い方についてはいずれの側も2週前とは違ったプランで臨んでくるだろう。前回の内容を布石に、とっておきのオプションなども準備しているはず。そうした想定外の局面への対応力が、この試合の重要なポイントになる。
またそれに関連して注目されるのがセットピースだ。攻守の起点であり、用意したスペシャルプレーを遂行するにはここでの安定した球出しが必要不可欠。特にプレーオフではラインアウトでこれまで見せてこなかったムーブやサインを使ってくるケースが多いだけに、どんな駆け引きが繰り広げられるのか興味深い。
埼玉ワイルドナイツスターティングメンバー
クボタスピアーズ船橋・東京ベイスターティングメンバー
キックオフ48時間前に発表された登録メンバーを見ていくと、2週前の対戦からワイルドナイツ、スピアーズとも先発15人のうち4人を入れ替えた。FW第1列は前節と同じ稲垣啓太、坂手淳史、平野翔平と海士広大、杉本博昭、北川賢吾のマッチアップ。LOではヒーナンダニエル、エセイ・ハアンガナのコンビが、スピアーズの誇るツインタワー、デーヴィッド・ブルブリングとルアン・ボタに挑む。バックローで対峙するのは、ワイルドナイツのFLベン・ガンター、FLラクラン・ボーシェー、NO8ジャック・コーネルセンに、スピアーズのFLトゥパフィナウ、FLピーター・ラピース・ラブスカフニ、NO8ファウルア・マキシの3人だ。
HBはこれまで控えからの出場が多かったSH小山大輝、SO山沢拓也がスターターに繰り上がったワイルドナイツに対し、スピアーズは3試合ぶりにSH谷口和洋とバーナード・フォーリーのペアに戻った。TB陣はワイルドナイツがWTBマリカ・コロインベテ、ハドレー・パークスとディラン・ライリーの両CTBにWTB竹山晃暉というおなじみの並び。スピアーズはニュージーランド代表キャップ48のライアン・クロッティが4月9日の第12節以来の復帰を果たし、立川理道とのコンビで決定力ある木田晴斗、根塚洸雅の両翼を走らせる。FBには野口竜司とゲラード・ファンデンヒーファーという不動の15番が入った。
リザーブメンバーにも魅力的な顔ぶれが並ぶ。サンウルブズでともに戦った堀江翔太とジャバ・ブレグバゼのバトルや、今季前半戦を席巻したオペティ・ヘルがどのタイミングで投入されるかは大きな見どころのひとつ。山沢京平と拓也の兄弟同時出場が実現するかという点も、ファンにとって楽しみな部分だろう。
前節で負傷したワイルドナイツのSH内田啓介、SO松田力也と、長期離脱から復帰の可能性が報じられたスピアーズHOマルコム・マークスのカムバックは見送られたが、両陣営とも控えまで含めて現時点でほぼベストといえる布陣。それが中14日の十分な準備期間を経て万全のコンディションでぶつかるのだから、熱戦は必至だ。日曜午後の東京の天気予想は晴れ。ダイナミックにボールが動く好ゲームを期待しよう。
文:直江 光信
直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。
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