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三菱重工相模原ダイナボアーズ vs. 三重ホンダヒート
ここからはすべての試合が大一番である。
ジャパンラグビーリーグワンは、今週末よりディビジョン2とディビジョン3の順位決定戦に突入する。リーグ戦の結果によりそれぞれ所属する6チームが上位と下位の3チームずつに分かれ、1回戦の総当たり戦によって最終順位を決するという流れだ。その先には上下カテゴリーとの昇降格をかけた入替戦も控える。今シーズンのチームの歩みの成否が決まる戦いは、好ゲーム続出のリーグ戦にも増して熱を帯びるだろう。
NTTドコモレッドハリケーンズ大阪のチーム再編成と宗像サニックスブルースの活動停止にともない、ディビジョン2、ディビジョン3いずれも1位チームは入替戦なしで自動昇格となることが決まった。当然ながらどのチームも自動昇格を狙って、全力でこの順位決定戦に臨んでくるだろう。そうした中、ディビジョン2の1~3位グループの第1節では、リーグ戦を9勝1敗で1位通過した三菱重工相模原ダイナボアーズと、7勝3敗で同3位の三重ホンダヒートが、相模原ギオンスタジアムで激突する(4月24日、12時キックオフ)。
両者の今シーズンの戦いを振り返ると、リーグ戦1巡目(第4節/2月13日)はヒートのホストスタジアムである三重交通Gスポーツの杜鈴鹿でダイナボアーズが22-13と勝利。しかし2巡目の4月9日の最終節では、ダイナボアーズのホストゲームでヒートが16-15と雪辱を果たしている。ただしこの時はすでにリーグ戦の順位が確定した状況での試合で、順位決定戦での再戦を見据えお互いに手の内を明かしたくないという側面があったのも事実だ。同じ会場での2週後のリマッチが果たしてどのような展開になるのか、想像はふくらむ。
ここまでの試合内容で際立っているのは、ダイナボアーズのディフェンスの安定感だ。総失点130(1試合平均14.4)は2位花園近鉄ライナーズの187(同18.7)を大幅に下回るリーグ最少の数字で、釜石シーウェイブス戦の中止で1試合少ないことを差し引いても、優秀な成績であることがわかる。特に目を引くのが最初の20分間の失点の少なさで、この時間帯に相手に与えたポイントは、シーズントータルでわずかに15点だけ。他のチームはすべて40点を超えており、この立ち上がりのよさが、季の安定した試合運びにつながっている。
開幕から9連勝と充実のシーズンを過ごしてきたダイナボアーズに対し、ヒートは第2節でライナーズに10-62と大敗を喫するなど、序盤戦は思うように実力を発揮できなかった。しかし攻守の大黒柱である南アフリカ代表のLOフランコ・モスタートが第3節で合流してからは調子が上向きに転じ、しぶとく勝利を重ねて3位を確保。順位決定戦は2試合ともビジターゲームの連戦となるが、不完全燃焼に終わったリーグ戦のうっぷんを晴らすべく、気合十分で臨んでくるだろう。
ラグビーのスタイルとしては、どちらもコンタクト局面でひたむきに体を当て続け、粘り強くプレッシャーを与えてスコアを積み重ねていく堅実な戦い方のイメージが強い。重圧がかかるポストシーズンのゲームは堅い展開になりがちなことを考えても、引き締まった流れの中で主導権を奪い合うタイトな接戦になることが予想される。とりわけブレイクダウンの攻防では、リーグ戦の時以上に激しいバトルが繰り広げられそうだ。
三菱重工相模原ダイナボアーズ スターティングメンバー
キックオフ48時間前に発表された先発ラインアップを見ていくと、ダイナボアーズは前節から12人変更と大幅にメンバーを入れ替えてきた。フロントローにベテランのPR川俣直樹、HO安江祥光が復帰し、LO陣は実直なハードワーカーのリンディ真ダニエルとオールブラックス5キャップのジャクソン・ヘモポのコンビ。バックローではアタッカーのサム・チョンキットと仕事人の鶴谷昌隆という持ち味の異なるFL2人がスターターを務める。
HB団はSH岩村昂太、SOコリン・スレイドの鉄壁ペア。TB陣にはCTBマイケル・リトルにタウモハパイホネティ、アライアサ空ローランドの両WTBと、突破力自慢のランナーたちが帰ってきた。CTB奈良望も9節以来3週間ぶりの先発入りだ。FL/NO8ヘイデン・ベッドウェル=カーティス、WTBベン・ポルドリッジ、CTBマット・ヴァエガの3人はケガで欠場となったが、今季の充実を支えてきた実力者が並ぶ盤石の布陣といえるだろう。
三重ホンダヒートスターティングメンバー
一方ヒートの前節からの変更は5人。FWではHO李 承ヒョが2試合ぶりにスターターに復帰し、ファイターの小林亮太がFLからLOへシフト。代わって辻惇朗が6番で今シーズン初の先発出場となる。第8節のライナーズ戦で負傷したNO8ヴィリアミ・アフ・カイポウリが戻ってきたのは、チームにとって大きなプラス材料だ。
BKではCTB陣がダーウィッド・ケラーマンとクリントン・ノックスのパワフルコンビに変わった。ミッドフィールドで攻守に力強く前に出て相手の勢いを封じ、切れ味自慢の尾又寛汰、生方信孝の両WTBやチーム屈指のスピードを誇るFBマット・ダフィーらバックスリーを存分に走らせる展開に持ち込みたい。こちらもリザーブまで含めて、今季のベストといっていい顔ぶれがそろった印象だ。
なお今シーズンはダイナボアーズが上位につけたものの、両者の直近の5度の対戦では4勝1敗とヒートが大きく勝ち越している。とりわけ昨季トップリーグの最終節での対決は、ダイナボアーズが勝てばチーム過去最高のカンファレンス6位となる状況で、そこまで勝利のなかった最下位のヒートが9トライを奪って55-7と大勝し、最終的に順位でダイナボアーズを逆転する(ヒート6位、ダイナボアーズ7位に)という結末だった。
ダイナボアーズがその時のリベンジを遂げるのか。それともヒートが渾身のチャレンジで底力を見せるのか。間違いなく必見の一戦だ。
文:直江 光信
直江 光信
1975年生まれ、熊本県出身。県立熊本高校を経て、早稲田大学商学部卒業。熊本高でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。早大時代はGWラグビークラブ所属。現役時代のポジションはCTB。著書に『早稲田ラグビー 進化への闘争』(講談社)。ラグビーを中心にフリーランスの記者として長く活動し、2024年2月からラグビーマガジンの編集長。
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