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31-31でノーサイド
4月3日の開幕戦がコロナ禍の影響で中止になった「第11回関東大学春季交流大会」が、4月17日(日)、Bグループの筑波大学(昨秋の対抗戦6位)vs.慶應義塾大学(同4位)戦で開幕。慶應義塾大学日吉グラウンドにて、無観客で行われた。
大会は前年度の秋季リーグの順位に基づいて、関東大学対抗戦・リーグ戦の各9チーム(18チーム)を6チームずつ、3グループに分け、総当たり戦で行われる。
ラグビー関東大学春季大会2022
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秋の関東対抗戦では筑波大学が3連勝しているため、ホームの慶應義塾大学はなんとしても勝利したい一戦だった。先週の東日本大学生セブンズで準優勝した筑波大学は、「アタックでチャレンジしたい」と臨み、一方の慶應義塾大学は接点の強い筑波大学相手に、ブレイクダウンにフォーカスすることがテーマだった。
キックとパスでゲームをコントロールした慶應SO永山
前半の序盤、慶應義塾大学はSO(スタンドオフ)中楠一期(4年)に替わり先発した大型のSO(スタンドオフ)永山淳(3年)のキックで、相手陣で戦う意思統一がなされていた。するとキック後、相手にプレッシャーをかけてターンオーバーすると、昨年も1年生から活躍していたHO(フッカー)中山大暉(2年)が左中間にトライ。ゴールも決まって7点を先制することに成功。
筑波大学も負けていない。守備で粘りを見せた後の14分、相手陣奥でモールを形成し、HO肥田晃季(4年)が押さえてトライ。難しい角度のゴールをWTB(ウィング)高田賢臣(3年)が決めて、同点に追いつく。
その後も一進一退の攻防が続く。24分には慶應義塾大学がラインアウトからFW(フォワード)とBK(バックス)が一体となってボールを継続し、最後はWTB佐々仁悟(3年)が左中間にトライ)。筑波大学も30分にスクラムを起点にアタックし、最後はラックサイドをSH(スクラムハーフ)松井翔(3年)が突いてトライを挙げ、ゴールも決まり14-12と逆転に成功する。
ただ、慶應義塾大学もロスタイムに相手のミスからゴール前スクラムのチャンスを得て、「8-9」のサインプレーでブラインドサイドを突き、NO8(ナンバーエイト)高武俊輔(4年)、SH小城大和(2年)とつないでトライを挙げ、17-14とサイド逆転して前半を折り返した。
トライを挙げた慶應キャプテンFL今野
後半に入ると、リードしている慶應義塾大学がペースをつかむ。3分、ターンオーバーされたが、すぐにボールを奪い返して副将WTB佐々木隼(4年)が50mを走りきってトライ(24-14)。さらに18分、キックとディフェンスでプレッシャーを与えて得たチャンスから、モールを押し込み、最後は主将のFL(フランカー)今野勇久(4年)が飛び込んで、31-14と大きくリードした。
このまま慶應義塾大学が勝利すると思われたが、筑波大学も粘りを見せる。21分、相手陣で接点にプレッシャーをかけてターンオーバーし、最後はSO濱島海(3年)が内に切れ込んでトライ。WTB高田のゴールも決まり21-31と10点差に追い上げる。
早速デビューを果たした1年の楢本弟(左)、高橋
さらに筑波大学はSH高橋佑太朗(茗渓学園出身)と、FB(フルバック)楢本幹志朗(東福岡)の1年生コンビが入り、テンポをつかむ。相手の反則から31分、ゴール前のラインアウトからモールを形成し、最後は内に走り込んだ途中出場のCTB(センター)大場宏祐(3年)がトライを挙げて、28-31と3点差に迫った。
36分、スクラムのバインドのところで慶應義塾大学が反則を犯してしまい、筑波大学は迷わずPG(ペナルティゴール)を選択。この試合プレースキックを100%決めていたWTB高田が右中間から沈めて31-31として、そのまま引き分けでノーサイドとなった。
同点PGを決める筑波WTB高田
17点差を追いついた筑波大学の嶋崎達也監督は「(最後の)PGのところは秋につながる選択でした。『バチバチ」というスローガンの通り、身体を当てるところ、(チームとしての)幹の部分を意識して戦った。初の実戦で、ゲーム運びで上手くいかなかったところがあったが、経験を積めたと思うので、今日出た課題を活かして次のゲームに臨んでくれれば」と振り返った。
キャプテンPR(プロップ)木原優作(4年)は「東日本大学セブンズに出て、(今日の)試合に出られない選手がいるという状況で、新しいアタックを試そうとテーマに臨みました。前半からアタックにチャレンジしようというマインドがあったが、全体的にミスが多くて消極的になった」と反省の弁を口にした。
関東大学ラグビー春季大会2022
【ハイライト】筑波大学 vs. 慶應義塾大学
1年ながら30分ほど試合に出場したSH高橋は「今日は自分の持ち味であるラックへの速い仕掛けと球さばきが出せたが、相手のプレッシャーに負けてミスをしたので、そこを修正して残り4試合に臨んでいきたい」と笑顔で話した。
早速デビューした筑波大1年のSH高橋
追いつかれた慶應義塾大学の栗原徹監督は「タックル、ディフェンスの慶應のアイデンティティーだと思っていますので、しっかり練習してきた。(筑波は)一筋縄ではないかない相手ですし、非常にプレッシャーのある中、序盤リードできたことはすばらしかった。だが最後、意地で追いつく(相手の)執念、プレッシャーに負けた。いい課題をもらったのでスキル的にもメンタル的にも修正して次に臨みたい」と前を向いた。
キャプテンのFL今野は「筑波さんは大学に入ってから勝てていませんが、ブレイクダウンは日本一強い相手だと思うので、自分たちがどこまでできるか確認するいいチャレンジの場と捉えていました。勝てる試合に勝てず悔しいですが、いいレビューをして、もう1回いい準備して、一番いい形にもっていけるようにやっていきたい」と話した。
中心選手としての活躍が期待される慶應HO中山
ジャッカルや力強いプレーで目立っていたHO中山は「(卒業した)原田(衛/東芝ブレイブルーパス東京)選手に追いつく考えではなく、自らのスタイルを見つけて慶應にあったプレーをしていきたい。(ジャッカルできたことは)いいプレーができたと感じています」と振り返った。
ともに「日本一」を掲げる対抗戦のライバル同士の対戦は、今季初の15人制ラグビーの公式戦ということで、互いにいい点、課題も出て大きな収穫を得た試合になったはずだ。
次戦、筑波大学は4月24日(日)、日本体育大学グラウンドで昨秋敗戦した日本体育大学と対戦する。一方の慶應義塾大学は、24日(日)再び慶應義塾大学グラウンドで法政大学と対戦する。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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