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東京サンゴリアス vs. 静岡ブルーレヴズ
渾身の力で挑んでくる相手の気迫みなぎるプレーに試合中盤まで苦しむものの、最終的にはきっちり突き放して勝利する。それが現在ディビジョン1の首位を走る東京サントリーサンゴリアスの強さだ。体力が十分あるうちはどのチームも簡単には崩れないし、隙を見せない。それでも厳しくプレッシャーを与え続け、我慢比べで相手が先に音を上げた瞬間に集中力を発揮してたたみかける。この日もまさにそんなゲームだった。
前半はビジターの静岡ブルーレヴズがより多くの見せ場を作った。開始6分までにFBダミアン・マッケンジーのPGとHO中村駿太のトライでサンゴリアスが10-0と先行するも、ブルーレヴズは11分に敵陣ゴール前のラインアウトからモールを押しきって反撃開始。直後にあざやかなサインプレーでCTBサム・ケレビにフィニッシュを許したが、24分、グラウンディングしようとするNO8クワッガ・スミスに対しサンゴリアスNO8テビタ・タタフが足を出したプレーがペナルティトライと判定され、さらにタタフがシンビンで10分間の一時退場となる。
これで流れをつかんだブルーレヴズは、31分に自慢のスクラムでプッシュオーバートライを挙げて逆転。さらに37分にもテンポよく攻撃を継続して最後は近場を突いたFL庄司拓馬が左中間に押さえ、24-15と点差を広げる。前半終了間際にはサンゴリアスに自陣ゴール前まで攻め込まれたものの、懸命のディフェンスで失点をPGによる3点にとどめ、24-18と6点のリードで40分を終えた。
ここまではブルーレヴズが意欲と勢いで上回る内容。しかしそんな展開にもまるで動じないのがサンゴリアスの真骨頂だ。そして迎えた後半の立ち上がり、大事な大事なこの場面で、見事に真価を発揮する。
まずは42分、ラインアウト起点のアタックでCTBケレビのオフロードからNO8タタフが抜け出すと、そのままポスト下へ力走して逆転。さらに47分には相手のミスキックで得たチャンスをWTB尾崎晟也が逃さずトライへと結びつけ、32-24とスコアを拡大する。
ジャパンラグビーリーグワン2022ディビジョン1
【第13節ハイライト】 東京サンゴリアス vs. 静岡ブルーレヴズ
ブルーレヴズもここで懸命に食らいつき、粘り強いディフェンスで劣勢をしのいだ後の61分にFB奥村翔が正面のPGを決めて、32-27とふたたび逆転圏内に詰め寄った。しかしラスト20分の走力勝負に絶対の自信を持つサンゴリアスは、ここからもう一段ギアを上げて加速。64分、流れるような連続展開を仕留めきって途中出場のFLトム・サンダースがゴールラインを越えると、66分にもターンオーバーからの切り返しでSH齋藤直人がノーホイッスルトライを挙げ、一気に19点差まで引き離す。
その後もサンゴリアスはアグレッシブな姿勢で攻守に圧力をかけ続け、ブルーレヴズの激しいファイトに徹底抗戦。77分に入替出場のWTB尾崎泰雅がしなやかなランでインゴールへ走り抜けると、最後はFBマッケンジーがフォローの風を利した50メートルのロングPG成功で締めくくり、最終スコアを56-27としてフルタイムを迎えた。
これでサンゴリアスは勝点を56に伸ばし、3試合を残した段階で上位4チームによるプレーオフへの進出が決定。トップリーグ連覇を果たした2017年度以来4シーズンぶりのタイトル奪還に向け、12チーム中一番乗りで第一関門を突破した。チーム内競争の活性化とコンディショニングを踏まえた選手起用も含めまだまだ余力を感じさせる試合内容で、頂点へ着実に歩を進めているという印象だ。
何より際立つのは、勝負どころの集中力と攻守が切り替わる局面でのトランジションの速さ。この試合でもブルーレヴズの意識がわずかに途切れた瞬間の隙を見逃さず、ボール奪取からすかさず攻めに転じて得点に結びつけるシーンがたびたび見られた。スタッツを見てもポゼッションは56%対44&とブルーレヴズが大幅に上回っているものの、スコアでは逆に29点もの差がついている。今後チームのスタイルがさらに研ぎ澄まされていった先にどんなラグビーを見せてくれるのか、楽しみは尽きない。
ブルーレヴズはこれで4勝9敗となり、勝点20で順位は8位のまま。現在4位の横浜キヤノンイールグルスとの勝点差は「21」に広がり、プレーオフ進出の可能性がなくなった。しかしこちらもまだリーグ戦は続く。記念すべきリーグワンの初年度にしっかりと爪痕を残し、来季以降の飛躍へつなげるためにも、残り3節でひとつでも多くの勝利をファンに届けたい。
文:直江 光信
直江 光信
1975年生まれ、熊本県出身。県立熊本高校を経て、早稲田大学商学部卒業。熊本高でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。早大時代はGWラグビークラブ所属。現役時代のポジションはCTB。著書に『早稲田ラグビー 進化への闘争』(講談社)。ラグビーを中心にフリーランスの記者として長く活動し、2024年2月からラグビーマガジンの編集長。
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