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花園ラグビー場
11月は高校ラグビーの季節だ。12月27日に開幕するクライマックスの全国高校大会、通称“花園”への出場権をかけた都道府県予選が各地で行われ、週末ごとに続々と代表校が名乗りを上げる。聖地行きの切符を巡るのるかそるかの決戦は、本大会とはまた違った独特の緊張感と熱を帯びる。
11月14日に行われる東京都予選決勝では、まず第一地区の國學院久我山-成蹊戦が11時30分にキックオフを迎える。
過去41回の花園出場で5回の優勝を数える国内屈指の名門・國學院久我山は、過去3年都予選敗退と苦しいシーズンが続いたが、今季は5月の都春季大会を圧勝し、6月の関東大会も無失点でBブロックを制するなど、充実ぶりが目を引く。夏合宿では國學院栃木や大阪朝高、御所実といった全国区の強豪を大差で破り、逸材ひしめく報徳学園、春の選抜大会8強の石見智翠館とも接戦を展開。花園予選も大東大一、都国立、東京朝高と難敵を危なげなく退け、満を持して4年ぶりの出場権獲得に臨む。
対する成蹊は、春の都大会は3回戦で東京に0-76の完敗を喫したものの、秋の花園予選ではたくましく成長した姿を披露して勝ち進んだ。初戦で合同Bを47-17、準々決勝で都青山を41-0と撃破すると、「この試合で自分たちの真価が問われると話していた」と土屋嘉彦監督が語る明大中野との準決勝では、鍛え抜いた組織ディフェンスで相手のパワフルな攻撃に徹底抗戦。数少ないチャンスをものにして2トライを奪い、体を張ったディフェンスで明大中野の猛攻を1トライに封じ切って、12-7の劇的な勝利を手にした。都予選決勝進出は、花園出場を果たした2005年以来、16年ぶりの快挙だ。
ここまでの足跡をたどれば、戦力充実の國學院久我山の優位は動かないだろう。自慢のFW陣は全国トップクラスのサイズと推進力を誇り、BKにもスキルとスピードを兼ね備えたランナーが並ぶ。選手層も厚く、激しいレギュラー争いがチーム内を活性化し、全体の力が底上げされるという好循環が生まれている。
成蹊にすれば、序盤にスコアを許し久我山が余裕を持って攻める展開になれば、対抗するのは難しくなる。身上のチーム防御でひたすらプレッシャーをかけ続けて相手のエラーを誘発し、接戦に持ち込むことが勝利への第一条件だ。そこから準備したスペシャルプレーでワンチャンスを仕留め切り、タッチの差で勝利する――という展開を目指したい。
13時20分開始の第二地区決勝は、目黒学院-東京というカードになった。普段から多摩川河川敷のほど近いグラウンドで鍛錬を重ねるライバル校であり、意地と誇りをかけた激戦になることが予想される。
第二地区トップシードの目黒学院は、春の都大会決勝で國學院久我山に7-28と敗れ、続く関東大会もCブロックの初戦で東海大相模に19-52と屈したものの、3位決定戦では東農大二に54-0と完勝。久我山戦の完敗を機に生命線のフィジカルの強化に注力したことで上昇のきっかけをつかみ、夏休み明けの練習試合で東海大相模や中部大春日丘といった全国区の実力校と互角の勝負を演じて、自信を深めた。
花園予選は初戦から危なげなく勝ち上がり、準決勝では昨年の代表校である早稲田実業と対戦。雨でボールが滑りやすいコンディションの中、強みのFW力を前面に押し出してプレッシャーをかけ続け、モールを軸に3トライを奪って19-0で勝利を収めた。コンタクト局面のバトルで優位に立ち、早稲田実業の得意とする早いテンポのラグビーを封じ切ったことで、チームはさらに勢いに乗っているだろう。
対する東京は、都春季大会準々決勝で早稲田実業から20-8の大きな白星を挙げた後、準決勝で國學院久我山に0-45と完敗。しかしDブロックに入った関東大会では、深谷を24-10、関東学院六浦を26-14で破って優勝を果たした。花園予選は都東、明大中野八王子を相手に大勝を重ね、準決勝でも本郷を51-5と圧倒。キックを効果的に使って敵陣でFWの推進力を生かす巧みな試合運びを披露し、仕上がりのよさを示した。
今季のチームはサイズこそ大きくないものの機動力に長けた選手がそろっており、運動量とキレのいい動きを生かした一体感あるラグビーが持ち味。キャプテンのSH野村幹太、SO吉田勇仁とキック力のある選手をHB団に擁し、効率よく陣地を進めるキック戦術のうまさも目を引く。もちろん伝統のシャローディフェンスと決定力あるモールも健在だ。
極限の重圧がのしかかる決勝の舞台だけに、展開としてはお互いにこだわりを持つコンタクトで激しく体をぶつけ合う堅い立ち上がりになるだろう。厳しいせめぎ合いの中で我慢強く自分たちの戦い方を貫けるかが、最大のポイントになりそうだ。また両者にとって大きな得点源であるモールの攻防でどちらが優位に立てるかという点も、勝敗を分けるカギといえる。
目黒学院はPRから本来のバックローに戻った快足FWのシオネ・ポルテレや、早稲田実業戦で先制トライを挙げたSH林星安を筆頭に昨季の花園で先発を務めたメンバーが8人残っており、大舞台を戦った経験は貴重な武器になる。ちなみに初出場を遂げた1968年の第47回大会から14年連続で出場し、その間に5回の全国制覇を達成するなど黄金時代を築いたが、連続出場が途切れた1981年以降は、5回出場しているものの翌年はすべて予選で敗退。それだけに、竹内圭介監督は「今回こそは連続出場を」と意気込む。
一方、東京は2年前の第99回大会でピッチに立った選手はいないが、長年チームを率いてきた森秀胤監督のもと、狙いを定めた試合での勝負強さには定評がある。今回は挑戦者として臨む立場ということもあり、絞り込んだゲームプランで迷いなくチャレンジしてくるだろう。好勝負になることを期待したい。
文:直江 光信
直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。
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