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日本代表vs.オーストラリア代表
国内で実施される2年ぶりのテストマッチ(国代表同士の試合)は、10月23日(土)、昭和電工ドームで行われた。キャパシティーの50%という制限のなか、観客は17,004人。開閉式の屋根は明けられ、青空から太陽の光が降り注いでいた。選手入場では、マイケル・フーパーキャプテンを先頭にしたオーストラリア代表選手たちの体の分厚さが際立った。特に、FLロブ・レオタ、NO8ロブ・ヴァレティニの胸板、肩の盛り上がりは激しいコンタクトプレーで日本代表に圧力をかけてくる姿を想像させた。一方、日本代表は脂肪がそぎ落とされた肉体で入場。ハイテンポでボールを動かし続け、スピードで勝負するためのハードトレーニングが垣間見えた。
午後1時45分キックオフ。いきなりオーストラリアの波状攻撃が始まる。日本代表はこれを粘り強いタックルで耐え、ミスを誘って転がったボールにLOジャック・コーネルセンが飛びこみ確保。SH流大が相手陣深くボールを蹴り込み、これをFBセミシ・マシレワが追う。しかしオーストラリアも反応よく自陣に戻り、ピンチを脱する。互いの反応スピードの速さが好ゲームを予感させるシーンだった。
前半4分、フィールド中央での最初のスクラムで日本代表が反則を取られる。PR具智元の頭が組み合う前から相手の肩に当たり、距離を詰めすぎているという反則だった。「意外に距離があった」(PR稲垣啓太)。レフリーが日本代表の想定より距離を取らせたということだ。このレフリングに対応するのに時間を要し、前半の日本代表はスクラムで苦しむことになった。「もっと早くアジャストするべきでした。距離をとらされて足が下がっていたので後半は一歩前に出すようにしました」(稲垣)。
結局、この反則でオーストラリアボールのスクラムになり、その後の連続攻撃でトライを奪われてしまう。前半7分、天才SOクエイド・クーパーがタックラー2人の間に体を入れながら右手でオフロードパス。そこにWTBトム・ライトが走り込んだものだ。最後のパスはお見事だが、起点が日本代表の反則から始まったのは残念だった。
松田力也
日本代表も前半16分にSO松田力也がPGを返したが、オーストラリアのボールを狙ったタックルに何度もボールを失い、勢いある攻撃に食い込まれるシーンが多かった。22分、日本代表ゴールに近いオーストラリアボールのラインアウトからモールを組まれ、ディフェンスが吸い寄せられたところで、ワイドにボールを展開され、最後は交代出場のFBジョーダン・ペタイヤに右コーナーに飛び込まれる。
しかし、日本代表も負けてはいない。直後のキックオフでオーストラリアがキャッチミスすると、そこから連続攻撃を仕掛け、最後は松田が「外から声が聞こえたので、その声と自分のスキルを信じて蹴りました」と、右タッチライン際にいたWTBレメキ ロマノ ラヴァにキックパス。キャッチしたレメキがタックラーをかわしてインゴールにボールを押さえる。松田が難しい角度のゴールも決めて、10-14。30分には、テストマッチデビューのFLベン・ガンターがジャッカルで反則を誘い、松田がPGを決めて、13-14と1点差に迫る。
13-17で折り返した後半、立ち上がりはオーストラリアの流れになる。後半2分、日本代表陣22mライン付近でオーストラリアボールのラインアウト。サインプレーが決まってPRタニエラ・トゥポウがインゴールへ。10分には日本代表のレメキが危険なタックルでシンビン(10分間の一時退場)になっているうちに、FLロブ・レオタにトライされ、13-27と突き放される。
中村亮土
このまま引き離されるのかと感じた人は多かったかもしれない。窮地を救ったのは中村亮土だった。自陣から攻めたオーストラリアのパスを出足良くインターセプトしてトライ。20-27としたのだ。これで1トライ、1ゴール差。大いに盛り上がる観客席をさらに興奮させたのが、58分のスクラムだった。相手ボールを猛プッシュして反則を誘うと、苦しんでいた具智元が吠える!スタジアムが一体となる。その後の攻防はさらに緊張感が増した。34分には、交代出場の田村優が40m以上のPGを決めて、23-27。疲れの見えるオーストラリアをさらに攻め立てたが、この日の日本代表は肝心な場面で反則、ミスが出た。
ラグビー日本代表テストマッチ2021
【ハイライト】日本代表 vs. オーストラリア代表
ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチ
最後は自陣からボールをキープして攻めようとしたが、ジャッカルされて反則を犯し、オーストラリアボールのラインアウトからモールを押し込まれて万事休す。モールのディフェンスでは健闘していた日本代表だが、メンバーが入れ替わったことも影響してか、ここではあっさりディフェンスを崩され、23-32で敗れた。ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチは、「7月から時間があいての試合としては、よいプレーができた」と評価しつつ、課題にも触れた。「課題の一つは規律面です。17回もの反則(公式記録では14回)がありました。これでは南アフリカに連勝するようなチーム(オーストラリア)に勝つことはできません」。モールで押し込まれたところ、ブレイクダウン(ボール争奪局面)でオフサイドの位置から入ってしまうなど、判断、スキルの面でも課題が出た。「ヨーロッパ遠征に向けて改善したい」(ジョセフヘッドコーチ)。ただ、ディフェンス面については「相手の勢いを止めることができていたし、ラインブレイクされても戻ってターンオーバーすることもできていた」と手ごたえを感じていた。
危険なタックルほか防げる反則も多く、細かなパスがつながらないなどプレーの精度は低かったが、ここは試合を重ねることに改善できるはずだ。「勝つ準備をしていたので悔しいです」。バイスキャプテンの中村亮土は厳しい表情だった。世界ランキング3位のオーストラリアを相手に誰も善戦だと思っていない。勝ち損ねたと感じている。理詰めの準備ができているからこそだろう。アイルランド、ポルトガル、スコットランドと戦うヨーロッパ遠征での一戦ごとの成長を期待したい。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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