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丸山凜太朗(東海大学)
夏合宿を実施できなかった東海大学にとっては、試合間隔が大幅に空いた状態で迎える秋の開幕戦。初戦の硬さに雨の影響も重なって、80分間を通して細かなエラーや連携の乱れはつきまとった。それでも最終的に57-5とスコアが開いたのは、ラグビーの土台となる部分で関東学院大学を大きく上回ったからだった。
開始1分すぎ。スクラムを一気に押し込んでペナルティを獲得すると、タッチキックで前進して敵陣22メートルライン付近のマイボールラインアウトのチャンスをつかむ。フィールドの中央で強いランナーを当てて相手ディフェンスを集め、SO武藤ゆらぎのラインブレイクからFLオフィナ・アフが外を抜け出し早々に先制点を刻んだ。
7分にはキックレシーブから切り返し、左サイドのオープンスペースをCTB丸山凜太朗→WTB谷口宜顕→リターンで丸山と、お手本のようなカウンターアタックで仕留め切る。部のプライドであるコンタクト力を押し出してもぎ取った1本目に続き、優れたスキルと的確な状況判断できっちり好機をものにして立て続けに2つ目のトライを挙げた。この時点で、試合の流れは大きくブルーのジャージーの側へと傾いた。
以降、東海大学はセットプレーや接点の攻防で厳しくプレッシャーをかけ、着実に得点を伸ばしていく。18分に連続展開からCTB丸山がふたたびゴールラインを超えると、25分にWTB谷口、42分にはNO8ノア・トビオがトライを追加。ハーフタイムを迎える段階で、スコアは31-0まで広がった。
後半もゲームは東海大学の主導で進む。8分、ゴール前の左ラインアウトからモールを押し切ると、17分にスクラムのプッシュオーバー、24分にはラック連取できれいにオーバーラップを作り入替でピッチに入ったばかりのFLレキマ・ナサミラがトライを追加。その後、関東学院大学の意地の反撃を受け守勢に回る時間帯もあったものの、失点を39分の1トライのみに抑えてフィニッシュした。
ラグビー 関東大学リーグ戦2021
【ハイライト】東海大学 vs. 関東学院大学
久しぶりの実戦、さらには滑りやすいグラウンド状況もあってイージーミスや軽いプレーが時折顔をのぞかせた東海大学だったが、強みであるフィジカルの優位性は終始揺るがなかった。「こういうコンディションだったので、やりたいことよりもやらなければいけないことを判断しながらプレーしていくことが大事。そこは選手たちがよく考えながらやっていたと思います」と木村季由監督。「達成度はまだ点数をつけられるレベルではない」(同)というのは正直な感想だろうが、その状態でもこれだけの点差をつけられたのは、地力の高さの証といえる。
東海大学
試合を支配する大きな要因となったのは、スクラムの推進力だ。攻守の起点となる局面で圧力をかけられたことで、ミスが連続する中でも余裕を持ってゲームをコントロールすることができた。伝統的に強いこだわりを持って取り組んできた部分であり、前に出て激しく体を当てる一人ひとりの頑健なタックルとともに、今後の戦いでもチームを支える太い柱になるだろう。
SO武藤とCTB丸山のダブル司令塔も、期待通りのパフォーマンスを発揮して多くのチャンスを作り出した。特に丸山はラン、パス、キックと幅広く持ち味を披露し、2トライ5ゴールの20点をマークする活躍でプレーヤーオブザマッチを獲得。臨機に位置取りを変えながら鋭く的確に防御の穴を突く多彩なアタックは、どの対戦相手にとっても間違いなく脅威となる。
「相手のミスをしっかりスコアにつなげられたのが、得点を重ねられたところかなと思います。ただ、型で取り切れた場面が少なかったのは課題にしていかなければいけない」(東海大学・木村監督)
関東学院大学
関東学院大学はアグレッシブにボールを動かす果敢なスタイルを貫いたが、接点で圧力を受けてペナルティやイージーエラーが頻発し、思うように得点機をスコアへ結びつけられなかった。雨でスクラムが増える展開となり、狙い通りにゲームを組み立てられなかったことも、完敗の一因だった。それでも最後まで戦う姿勢を維持し、ラスト10分に東海大学を押し込み続けて39分のトライで一矢を報いたことは、この先の連戦にきっとつながるはずだ。
「いいところも見つかったし、課題も見つかった。次の法政大学戦に向けて、それをひとつずつ修正しつついいところを伸ばして、関東らしいラグビーをしていきたいと思います」(関東学院大学・SH三輪悠真主将)
国際級のサイズを誇るFB川崎清純のスケールの大きい走りをはじめ、磨き上げてきたスピーディーなアタックは随所に可能性を感じさせた。この日苦しんだFW戦、特にセットプレーが改善されれば、リーグ戦を盛り上げるおもしろい存在になりそうだ。
文:直江 光信
直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。
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