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ラグビー コラム 2021年6月7日

元日本代表キャプテン廣瀬俊朗が語る 4年に一度集まるスペシャルチーム「ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ」への期待

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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廣瀬俊朗さん

コロナ禍で休止状態だったラグビー日本代表がようやく動き始めた。6月12日には、静岡県のエコパスタジアムでサンウルブズと戦い、6月26日には、スコットランドの地でブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズと戦う。長らくラグビーを見てきたファンや関係者にとってライオンズとの対戦は、にわかに信じられない夢のような話だ。ラグビー界でもっとも伝統がある4協会、イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドの連合軍である。原則として4年に一度結成され、ニュージーランド、南アフリカ、オーストラリアに遠征するドリームチームだ。日本代表と対戦したあとは、南アフリカ遠征に旅立つ。歴史的試合の価値、ライオンズの見どころについて、元日本代表キャプテンの廣瀬俊朗さんに話を聞いた。

──ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズと日本代表が試合すると聞いたときの、率直な感想を教えてください。
「ほんまかいなっ!という感じですよね(笑)。そもそも南半球の3強国にしか遠征しないチームなので、あり得ないことです。基本的にライオンズがホームで試合をすることは稀なことですから、すごく楽しみですね」

──日本代表にはどんな試合をしてほしいですか。
「日本代表にとっても、久しぶりのテストマッチ(国代表同士の試合)です。勝ち負けは大事ですけど、今まで培ってきたものを思う存分見せてくれたら嬉しいし、どんどんボールを動かして、ライオンズにプレッシャーをかけてほしいですね」

──2019年のRWCの日本代表メンバーが18名選ばれています。久しぶりでもコンビネーションは大丈夫でしょうか。
「2019年大会のベストの状態にはならないでしょうけど、ある程度のコンビネーションではできるのではないかと思います」

──日本代表に選出された36名で、注目選手は。
「SHの荒井康植については、キヤノンイーグルスの試合でもいいサポートで走り回っているし、注目しています。パナソニックワイルドナイツのベン・ガンター、ジャック・コーネルセンは活躍してくれると思いますね。コーネルセンは破壊力のある目立つ選手ではありませんが、総合力は高いと思います」

──ポスト福岡も気になります。
「みんなポテンシャルはありますから、誰がチャンスをつかんでいくかでしょうね。コーチングスタッフも、きついところでしっかりプレーできる選手を、練習、試合を通して見抜いていくのだと思います」

──廣瀬さんもライオンズと戦いたかったですか。
「めっちゃやりたかったですよ。ライオンズのメンバーがもの凄いので、誰が出てきても嬉しいですよね」

──ライオンズの試合は、どんなイメージですか。
「お客さんがめちゃくちゃ熱狂しているイメージですね。過去の試合で記憶しているのは、ウェールズのシェーン・ウィリアムズ、アイルランドのブライアン・オドリスコル、イングランドのジェイソン・ロビンソン、彼らが走り回っている記憶がありますね」

──ライオンズは、イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドの連合軍ですが、彼らが参加するファイブネーションズ(2000年からシックスネーションズ)を、子供の頃、テレビで見ていたそうですね。
「イングランドのアンダーウッド兄弟、ウィル・カーリング、ジェレミー・ガスコット、ウェールズの名キッカーのニール・ジェンキンスなんかはよく覚えていますね。放送が夜遅かったから、録画して朝に見ていましたよ。大好きでした」

──最近ラグビーファンになった人達に、ライオンズの凄さを廣瀬さんならどう説明しますか。
「丼物にたとえたら何丼かな?サーロイン、ハラミ、ラム、豚もある、鶏も、魚も乘っている。好きなものなんでも食べられるで~、という感じじゃないですか」

──いまひとつ凄みが分かりません。
「あきませんか(笑)。なんて言えばいいんだろう。メジャーリーグのオールスターでもないしなぁ」

──他のスポーツでたとえるものがないんですよね。
「だから面白いんですよ。サッカーで言えば、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイが連合軍を作るような感じでしょうか」

──今回、ライオンズに選出された選手を記者会見で発表していましたが、その演出に格の高さを感じましたよね。
「発表で名前が呼ばれた選手の喜び、所属クラブの盛り上がり、喜びようも映像で見ました。それだけ名誉なことなのだと思いましたし、外されて落胆しているインタビューもありましたよね。格式を感じました」

アラン=ウィン・ジョーンズ(ウェールズ)

──野球のドラフト会議の発表のようでしたね。ところで、発表されたメンバーを見てどんな感想でしたか。
「強力FWの南アフリカ代表と戦うわけだから、FWが大事なのだと感じました。キャプテンのLOアラン=ウィン・ジョーンズ(ウェールズ148キャップ)は注目ですし、FW第三列は誰が先発するのだろうと気になるほど層が厚い。ハミッシュ・ワトソン(スコットランド)、タウルペ・ファレタウ(ウェールズ)、トム・カリー(イングランド)もいる。どういうメンバー編成になるか楽しみです。WTBも20歳のルイス・リース=ザミット(ウェールズ)がいて、SOはダン・ビガー(ウェールズ)、オーウェン・ファレル(イングランド)、フィン・ラッセル(スコットランド)と誰が出ても不思議はない。試合をしながらベストな組み合わせを決めていくのでしょうね。いろいろ組み合わせを予想していくのも、ファンの楽しみですね」

ハミッシュ・ワトソン

──今年のシックスネーションズの最優秀選手はハミッシュ・ワトソンでしたね。
「それほど大きくないですけど、ボール争奪戦で激しいプレーをする。南アフリカの選手を困惑させるようなプレーができたら盛り上がりそうですね」

──ウォーレン・ガットランドヘッドコーチは、ライオンズでは3回目の指揮になります。どんな戦いを仕掛けてくると思いますか。
「ガットランドさんはウェールズの元ヘッドコーチで、スコットランド、ウェールズのコーチがいますが、エディーさんはじめイングランドがいないのが面白いですね(笑)。コーチングスタッフの中でもいろんなアイディアが生まれ、今までにない化学反応による面白いプレーを見たいですね。僕としては隙があれば果敢にアタックを仕掛けるラグビーが見られたら嬉しいです」

──迎え撃つ南アフリカ代表は、どんなチームですか。
「どんでもなくパワーのある人たちが、その力を出し切ることだけに徹するチームです。細かいことをするのではなく、スクラム、ラインアウト、ディフェンスが強くて、俺達はこれで行くから見ていてくれ!そんなチームです」

廣瀬俊朗さん(2015年)

──2015年のRWCで日本代表は初戦の南アフリカ代表に勝ちました。この時メンバー外だった廣瀬さんは南アフリカ代表役をして試合への準備をサポートしたそうですね。
「南アフリカの役、やりましたね。9番からボールを蹴り上げるプレーが多くて、面白みはなかったです(笑)。RWC2019で優勝した南アフリカ代表も大きくスタイルが変わったわけではありませんが、黒人のシヤ・コリシがキャプテンになり、ぐっとチームが結束した感はありました」

──南アフリカ代表のメンバーで注目している選手はいますか。
「トップリーグのクボタスピアーズで活躍したマルコム・マークスには出てほしいですね。クボタで献身的にプレーする姿を見てファンになりました。ジェシー・クリエル(キヤノンイーグルス)もパフォーマンス良かったですね。トップリーグでプレーした選手の活躍は気になります」

──今回のライオンズ戦は、日本代表、南アフリカ代表にとって、2023年に向かっての準備としても位置付けられますか。
「試合数が限られている中で、すべての試合は2023年に向けての準備になると思います。新しいメンバーも入って来るので、そういったメンバーがテストマッチの舞台でどれだけやってくれるか。そこを見定めていくことも大事な要素になっていきます」

──廣瀬さんは、どちらのチームを応援するのですか。
「ライオンズかな。4年に一度集まるスペシャルチームで、いつもはライバルの選手達がどのように結合して、どんな美しいラグビーを見せてくれるのか関心があります。ラグビーはお互いを大切にして、チームへの誇りがないと良いプレーができません。きっと良いチームができると思いますが、それがなぜなのかは気になるところです。根底にはお互いのことをリスペクトするラグビーの精神性みたいなものがあるのでしょうね。また、政治的な問題が様々に起きているエリアのチームがラグビーを通して結束するのは社会的意義も大きいかもしれません。コロナ禍でいろんなものが分断しているなかで、それを乗り越えて一つになるというメッセージがツアーを通じて出せると良いと思います」

インタビュー動画

【元JAPAN主将・廣瀬俊朗インタビュー】4年に一度のドリームチーム「ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ」

──それぞれのファンの人達も、ライオンズに関してはひとつになって応援しますね。
「その通りで、イングランドとウェールズ、イングランドとスコットランドなど、ふだんはいろいろ言い合っているのに、ひとまず置いておいて、みんな仲間になる。それもライオンズの魅力ですね」

──南アフリカでの試合は無観客で行われるようです。
「コロナ禍はまだもう少し続きます。その中で、どのようにスポーツ大会を運営していくのかも参考になるでしょう。無観客のなかでどう盛り上げるか、ライオンズの運営サイドもいろいろ考えているでしょうから、ファンの巻き込み方、盛り上げ方にヒントをもらえるかもしれません」

──ラグビーを広めたいという廣瀬さんの活動にもヒントになるかもしれないですね。
「改めてラグビーの価値、良さをたくさんの人に知っていただくきっかけになると思います。ライオンズというのは、イギリス、アイルランド共和国で行われていることですが、他のエリア、スポーツでも、国境を超えて一つのチームを作り、ツアーに行こうというようなことをするきっかけになったら良いと思いますね」

文:村上 晃一

村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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