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5月23日の決勝戦で18年の歴史に幕を閉じたジャパンラグビー トップリーグには2003年の開幕年からたくさんの外国人選手がプレーしていた。当時からニュージーランド代表オールブラックス経験者は多く、サントリーはCTBアラマ・イエレミア、東芝はCTBスコット・マクラウド、神戸製鋼はLOロイス・ウィリスがいた。その後、オーストラリア代表、南アフリカ代表のビッグネームが次々に来日し、サントリーには、オーストラリア代表SHジョージ・グレーガン、FLジョージ・スミスら代表キャップが100を越えるレジェンドが加入。パナソニックのSOベリック・バーンズ、神戸製鋼のSOダン・カーターなど名前をあげればキリがない。しかし、2021年ほど外国人プレーヤーがクローズアップされたシーズンはなかった。
2019年のラグビーワールドカップ(RWC)が日本で開催されたことが大きいだろう。お馴染みの各国代表選手が増え、国籍や民族にかかわらず一つになって戦うラグビー文化が広く認知され、海外選手への関心が高まった。日本のラグビー環境の快適さを知った海外選手の多くがトップリーグへの参戦を望んだ。2023年のRWCフランス大会に向かっての強化は、どの国もこれから本格化する。2023年を目指す選手たちが違うラグビー文化を体験する機会はこの時期しかなかった。数年後に振り返ったとき、日本のラグビーファンの皆さんは奇跡的なシーズンに立ち会っていたことを実感するのかもしれない。
TJ・ペレナラ(NTTドコモ)
2021シーズンの外国人選手で驚異的なパフォーマンスを披露した筆頭は、TJ・ペレナラ(NTTドコモ)だ。その力強い動きは「小さいが俊敏」という日本のSHの概念とはまったく違った。リーグ戦第3節(対リコー)の試合終了間際、自陣からWTBマカゾレ・マピンピを走らせ、最後は自らボールを受けて左コーナーにトライした一連のプレーは強烈なインパクトだった。トップリーグの年間表彰式では、最も印象的なシーンとしてJ SPORTS賞を受けている。
ベストフィフティーンには、ペレナラはじめ海外出身選手過去最多の12名が選出されていた。ただし、この選考はリーグ戦7節を終えた時点のもので、プレーオフの決勝まで見ての選考であれば顔ぶれは違っただろう。マルコム・マークス(クボタ)、ブロディ・レタリック(神戸製鋼)など、圧倒的な存在感でチームの中心になった選手もいるが、試合のスタッツ(統計数値)でも、海外出身選手が上位を占めている。
リーグ戦の最多トライゲッター(10トライ)となったテビタ・リー(サントリー)、マロ・ツイタマ(ヤマハ発動機)は爆発的な加速力とランニングスキルを併せ持ってタッチライン際を何度も駆け抜けた。128得点(6T37G8PG)で得点王となったボーデン・バレットは、SOとしてサントリーの攻撃を司り、世界最優秀選手2度受賞の華麗なラン、正確なキックは観客を魅了した。この他、スタッツで目立ったのは、ボールを持って突進した「ボールキャリー」の数で、ヴィンピー・ファンデルバルト(NTTドコモ)が、ただ一人100回超え。NTTドコモの躍進の先頭に立った。日本代表ファンにとっても嬉しい数字だろう。
タックルされながらも前進する「ディフェンス突破」の数で1位は、クワッガ・スミス(ヤマハ発動機ジュビロ)。180cm、94kgという小さな体格で南アフリカ代表に選出されたタフなプレーは観る者の胸を打った。ラインアウトキャッチで1位は、ジョージ・クルーズ(パナソニック)で44回。しかし、イングランド代表45キャップの凄みは、主にボール争奪戦で相手をめくりあげる仕事で発揮された。海外の代表選手たちに学ぶべきは、パワーやスピードの違いなど目立つプレーではなく、チームのために献身的に仕事し続けていたことだろう。倒れてもすぐ立って身構え、次のプレーに向かう。常に周囲とコミュニケーションをとり、与えられた役割をやり通す。そんな姿勢こそ学びたい。
もう一つ、TJ・ペレナラほか、レフリーに対して試合中にコメントしているシーンをよく見かけたが、彼らが丁寧な言葉を使って、レフリーへのリスペクトを失っていないことは知っておきたい。ペレナラ、バレット、マイケル・フーパー(トヨタ自動車)らは帰国し、2023年のRWCを目指すが、来季も日本でプレーする選手は多い。彼らの存在がリーグ全体、日本人選手のレベルを引き上げているのは間違いなく、新リーグでの質の高いプレーも楽しみだ。
本コラムは外国人選手がテーマだが、スタッツを見ていて改めて感じたのはMVPに輝いた福岡堅樹の卓越した能力だ。シーズンを通してのトライ数は14で1位、タックルに触れさせずにディフェンスを突破する「クリーンブレイク」の28も1位、ボールを持って進んだ距離「ゲインメーター」は1,045mで1位。テビタ・リーが怪我でプレーオフを欠場したことを差し引いても際立つ数字だ。福岡は引退した。彼の最後の雄姿ひとつとっても、トップリーグ2021は特別なシーズンだったと、しみじみ思うのである。
文:村上晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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