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Honda vs. NTTドコモスターティングメンバー
負ければ終わりの緊迫感こそはプレーオフトーナメントの醍醐味だ。どのチームも必勝を期してベストの準備で臨んでくるため、試合はおのずと白熱する。極限のプレッシャーが、それまで表に出てこなかったウィークポイントを露わにすることもあれば、隠れたポテンシャルを引き出してくれることもある。
今季のリーグ戦で旋風を巻き起こし、4勝3敗の3位でホワイトカンファレンスを通過したNTTドコモレッドハリケーンズにとって、このプレーオフはあらためて真価を証明する場だ。4月10日の第7節、前年0-97の大敗を喫した神戸製鋼コベルコスティーラーズに29-31と肉薄した試合内容を見れば、どのチームにも勝利できる力を備えていることは疑いない。ここから先は、優勝候補の一角として地力を試される戦いになる。
開幕から6連敗と苦しい戦いが続いたHonda HEATは、最終節で三菱重工相模原ダイナボアーズに55-7と大勝して待望の今季初白星を挙げ、その勢いに乗ってトーナメントに挑む。「暗い底の中でさまよいながらも、自分たちのやるべきことに集中し、努力を惜しまなかったことがこの勝利につながった」(ダニー・リーヘッドコーチ)。過去2年は上位勢にも互角の戦いを演じるなど確かな実績を残し、十分な手応えを感じて今シーズンを迎えただけに、プレーオフでの巻き返しにかける意気込みは強いはずだ。
SHの枠を超えた八面六臂の活躍で牽引するTJ・ペレナラを筆頭に、強力外国人選手の存在がNTTドコモの躍進の原動力になっているのは確かだ。それに加えて関係者は口々に、チームとしての一体感の高まりを好調の要因に挙げる。この点は、カルチャーを大切にするチームづくりで“クラブ再建人”として国際舞台で数々の足跡を残してきたヨハン・アッカーマンヘッドコーチの手腕だろう。
あるスタッフはいう。
「ヨハンは常にいろんなところに目配り、気配りをしているし、すごく選手に寄り添ってコミュニケーションをとるんです。だから試合に出られないノンメンバーが誰よりも必死に厳しいトレーニングに取り組むし、そうした姿を見て試合メンバーは責任感を抱く。全員が温度差なく、自分のすべきことをやるといういいサイクルができている」
Hondaもまた、昇降格を繰り返していた時代の反省から確たるカルチャーを築き上げることに取り組み、近年着実に進歩を重ねてきたチームだ。2017年の就任以来、先頭に立ってクラブを牽引してきたFL小林亮太主将は三菱重工相模原戦後、「しっかり前を向いてやるべきことをやり続ければ、自分たちのラグビーができて結果が出るということを確認できた」と実感を語った。厳しい状況の中でも方向性を見失わず、本来の強みに立ち返って這い上がるきっかけをつかんだことは、クライマックスへ向けた貴重なプラス材料になるだろう。
Hondaスターティングメンバー
どちらにとっても中2週と十分な準備期間を経て迎えるこの試合のメンバーを見ていくと、まずHondaの先発は前節とまったく同じ顔ぶれ。そのゲームでは今季初めてスタメンで起用されたSO呉洸太がマンオブザマッチを獲得し、HO呉季依典も2トライを奪取、LO中川真生哉も80分間を通して攻守に好パフォーマンスを発揮するなど、若手選手の活躍が目を引いた。その勢いを持続し、さらなる活力をもたらすことが期待される。日本代表が世界に誇るタイトヘッドPR、具智元がリザーブで3月28日の第5節宗像サニックスブルース戦以来となるメンバー入りを果たしたことも、明るいニュースだ。
NTTドコモスターティングメンバー
一方のNTTドコモは、前節の神戸製鋼戦から西川和眞、北島大の両PRが入れ替わってスターターに名を連ね、キャプテンのLOローレンス・エラスマスも5番に復帰。また切れ味抜群のステップを誇るWTB茂野洸気が14番に入った。鍵を握るHB団は相性の良さを感じさせるSHペレナラとSO川向瑛のコンビで、WTBマカゾレ・マピンピやFBトム・マーシャルら決定力あるランナーが並ぶラインをいかに動かすかが注目される。
マスト・ウィンのトーナメント戦では堅い試合運びになる傾向が強いだけに、セットプレーの攻防はひとつの焦点となるだろう。Hondaには2019年ワールドカップ優勝メンバーのLOフランコ・モスタートを筆頭にPRマティウス・バッソンとFLポール・スクーマン、NTTドコモにはLOエラスマスにHOフランコ・マレー、FLヴィンピー・ファンデルヴァルトと、両チームともセットプレー大国である南アフリカ出身の選手がそろっている。スクラムやラインアウトでの主導権争いは要注目だ。またSHペレナラを起点にテンポよくボールを動かすNTTドコモのアタックに対し、激しく前に出るHondaのディフェンスがどこまで圧力をかけられるかも、勝負の行方を左右するポイントになる。
文:直江 光信
直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。
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