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東福岡が王座奪還
3月31日(水)、埼玉・熊谷ラグビー場で、第22回全国高校選抜ラグビー大会の決勝が行われた。4連覇を目指す桐蔭学園(神奈川)と、6度目の優勝を狙う東福岡(福岡)の激突となったが、前半からFWで圧倒し、7トライを重ねた東福岡が、46-31で勝利。2016年以来の春の王者に輝いた。
3月25日(木)から始まった春の選抜大会は、5日目となった31日(水)に決勝を迎えた。「花園」こと、全国高校ラグビー大会で連覇し、選抜大会でも4連覇を目指す桐蔭学園は2回戦で京都成章(京都)、準々決勝で天理(奈良)、準決勝で大阪桐蔭(大阪)と、次々と強豪を下して決勝に駒を進めた。
一方の東福岡は花園では過去4シーズン連続ベスト4止まりで、選抜でも2016年から優勝から遠ざかっていたが、準決勝で優勝候補の一角、東海大大阪仰星(大阪)に快勝して決勝に進出していた。
メンバーはともに準決勝から1人の変更のみとなった。快晴の空の下、無観客の熊谷ラグビー場で、試合は11:00にキックオフされた。
前半開始早々、いきなり相手ボールをFWがジャッカルで奪い返し、チャンスを得たのは東福岡だった。この試合のテーマは、1つ1つのプレーに対して覚悟を持ってやるという意味を込めて「覚悟」だった。
東福岡を優勝に導いたBKリーダーSO楢本
また、相手はスキルが高く、試合巧者の桐蔭学園だったため「後半に体力残しておいても勝てる相手ではないので、前半からエンジン全開で飛ばしていこうと話していました」(BKリーダー楢本幹志朗/2年)
すると、フィジカルと接点を鍛えて今大会に臨んできたFWが、攻守に前に出て試合を支配する。前半2分、ゴール前に攻め込むと最後は、ケガから先発に復帰したキャプテンFL(フランカー)八尋祥吾(2年)が押さえて先制に成功する。8分にはPR(プロップ)西野帆平(2年)が力強さを見せてトライし、14-0とリードする。
左ライン際を快走しトライを挙げた東福岡WTB遠藤
さらに相手からボールを奪い返すと11分、自陣からFW(フォワード)とBK(バックス)一体となって攻撃を継続し、左サイドライン際をWTB(ウィング)遠藤亮真(2年)が快走。最後はステップで相手をかわしてトライを挙げて、19点をリードする。
第22回全国高校選抜ラグビー大会 決勝
【ハイライト】桐蔭学園 vs. 東福岡
17分には桐蔭学園のCTB(センター)森草知(2年)に1トライを返されたものの、24分、東福岡がゴール前のモールを押し込み、最後はHO(フッカー)赤星泰成(2年)が左中間にトライ。さらにロスタイム、再びWTB遠藤がトライを挙げて、前半は東福岡が31-7とリードして前半を折り返した。
LO小椋のトライで桐蔭学園が反撃開始
後半、24点を追う桐蔭学園はBKのメンバーを3人替え、反撃を開始する。ボールを継続し、ゲームキャプテンを務めるLO(ロック)小椋健介がピック&ゴーでブラインドサイドを突いてトライ。14-31とした。
その後もチャンスはあったが、桐蔭学園はものにすることができず、逆に東福岡が11分に途中出場のFB井上晴輝、14分にはPR西野帆平(ともに2年)がトライを追加して43-14と大きくリードし、勝負をほぼ決めた。桐蔭学園の藤原秀之監督は「2度ほどチャンスがあった。24-34にしたかった」と唇を噛んだ。
2本目のトライを挙げる桐蔭学園FB矢崎
それでも桐蔭学園は決して試合を諦めることなく、15分に途中出場のWTB原小太郎(1年)がトライを挙げると、さらに18分、24分にエースのFB矢崎由高(1年)が武器とするランで連続トライを挙げ、31-43と追い上げた。
しかし、30分の試合終了間際、東福岡も試合の流れを読んで、きっちりと中央からのPG(ペナルティゴール)をSO楢本が沈めて、46-31でノーサイドを迎えた。東福岡が2016年以来、最多となる6度目の選抜大会優勝に輝いた。
前半の失点が響いて4連覇を達成できなかった桐蔭学園の藤原監督は「完敗でしょう。(ここまで来られたのは)去年の貯金があった。(今大会は)5試合できたことが唯一、評価できることになった」。
「特徴ある天理、FWが強い京都成章、大阪桐蔭と対戦でき、最後は全部が強い東福岡と対戦できた。FW(の力強さ)が上がってこないとラグビーにならない。まず、自分たちは何ができて何ができてなかったのか、何を伸ばさないといけないかというヒントにはなった」と淡々と振り返った。
準優勝の表彰を受ける桐蔭学園の小椋
桐蔭学園のゲームキャプテンであるLO小椋は「FWで負けて、何もできなかった。東福岡は個の強さがあって、何もやらせてもらえなかった。東福岡は試合経験も豊富で、接点のプレッシャーもすごかった。(個人的には)しんどいときに走ることできなかった」と肩を落とした。
2016年以来の全国優勝となった東福岡の藤田雄一郎監督は「正直、(優勝して)うれしい。桐蔭学園さんまでたどりつきたいと思っていた。選手たちには『フィジカルバトルで戦おう』と話しました。内容がどうあれ、ポイントが上になったことは評価したい」と振り返った。
また冬に向けて「フィジカルはまだまだ伸びるし、BKももっと精度が上がってくるので、強いラグビーを再構築したい。去年までの追う立場から、(今季は)追われる立場になっているので、引き離していきたい」と先を見据えた。
東福岡の八尋キャプテン
東福岡の八尋キャプテンは「こだわっていたFWで勝って、BKでスコア取って優勝できた。チームメイトには『FWが前に出られたら、BKもおのずと勝っていける。FWが率先して前にいって身体を張るラグビーをしよう」と言いました」。
「まだまだ反省すべき点もあるし、慢心してはいけないですが、(選抜大会に)勝てたことはうれしい!個人的には2回戦でケガをして試合を休んだときは不安になりましたが、(先発で試合に出て)優勝を味わえて良かったです」と破顔した。
今年の選抜大会は、コロナ禍ですべての試合が無観客で行われた。また、各チームも練習が制限されたり、試合経験がなく、準備不足だったりと決して本調子ではない中、7日間で、5試合全てに快勝した東福岡の6度目の優勝で幕を閉じた。
「PHOENIX」(フェニックス)というチーム名のように東福岡が全国王者に復活し、強烈な印象を与えた大会となった。冬の花園まで、まだ9ヶ月ほどの時間があるものの、東福岡が2022年度の高校ラグビー界をリードしていくことは間違いない。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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