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ラグビー コラム 2020年12月22日

連覇を狙う桐蔭学園を含めた3強の争いか?第100回全国高校ラグビー大会のみどころ

ラグビーレポート by 斉藤 健仁
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連覇を狙う桐蔭学園

記念すべき100回目を迎える高校生ラガーマンたちの熱き戦いが、いよいよ始まる。

12月27日からラグビーワールドカップ会場の1つだった、大阪・東大阪市花園ラグー場を中心に「花園」こと、「第100回全国高等学校ラグビーフットボール大会」が開催される。

今大会は各都道府県の予選を勝ち抜いた51校(北海道と東京は2校、大阪府は開催地枠も含め3校)に加え、記念大会のため例年より12校多い、63校が出場する。

過去9年間の各都道府県予選を集計し、累計校数が多かった埼玉、愛知、福岡の3県は出場枠が1つ増え、計2校出場。また全国9ブロックで、都道府県予選で2位チームによるブロック予選が行われ、優勝した9校も出場を決めた。

今大会は新型コロナウィルス感染拡大防止のために、全試合無観客で行われることになった。例年よりも出場校数が増えていることや、準々決勝まで3つのグラウンドにまたがって開催され、多くのファンが集うことなどが考慮され、感染リスクを抑えるために苦渋の決断となった。

大会日程は12月27日(日)、28日(月)に1回戦、12月30日(水)に2回戦、そして1月1日(金)の元日に3回戦が行われベスト8が出揃う。

そして、各校の主将の抽選により準々決勝の組み合わせが決まり、準決勝の組み合わせも1月3日(日)の準々決勝の試合後に抽選される。1月5日(火)に準決勝、そして今大会は1月9日(土)に決勝が開催される

コロナ禍により、春の全国選抜大会を筆頭に多くの大会中止された影響で、今大会のシード校は過去9年の大会で、ベスト8進出した都道府県を集計し、その上位の8都府県の代表8校がシード校に選ばれた。

シード校となったのは目黒学院(東京第1)、桐蔭学園(神奈川)、京都成章(京都)、東海大大阪仰星(大阪第1)、大阪朝鮮高(大阪第2)、関西学院(兵庫)、御所実業(奈良)、東福岡(福岡第1)の8校がシードされた。今大会は63校が出場するため、2回戦からの出場は東海大大阪仰星のみとなった。

中でも優勝候補と目されているのは桐蔭学園と東海大大阪仰星、東福岡の3校だ。3校とも2月に行われたブロック大会も制している。また、過去10年間を見ても2012年度(常翔学園が優勝)と2018年度(大阪桐蔭が優勝)の2大会以外は、この3校が優勝旗を持ち帰っている。

桐蔭学園のLO青木

昨年度の高校「3冠」を達成し、連覇がかかる桐蔭学園は伝統の継続ラグビーは健在で、守備力にも定評がある。突破力に長けた主将のNO8(ナンバーエイト)佐藤健次、LO(ロック)青木恵斗(ともに3年)が揃うFW(フォワード)は強力。決定力のあるFB(フルバック)秋濱悠太(3年)も含め、花園の地を踏んでいる選手も多く経験値も高い。

過去、優勝5回の東海大大阪仰星は、予選決勝で2年前の花園王者・大阪桐蔭に逆転勝ちしたように、主将CTB(センター)近藤翔耶(3年)を中心に一体感がある。PR(プロップ)倉橋歓太、LO谷田崇晃(ともに3年)、NO8薄田周希(2年)らは前に出る力があり、血縁関係こそないが「大畑大介2世」の呼び声高いWTB(ウィング)大畑亮太(3年)のスピードも魅力だ。

6回の優勝を誇る東福岡は、SO(スタンドオフ)寺下功起、WTB/FB坂本公平、WTB江口翔(いずれも3年)ら展開力のあるBK(バックス)が揃い、ボールを広く動かすラグビーが伝統だ。ただ、今年度のチームは主将のLO永住健琉を筆頭にPR本田啓、HO村尾幹太、身長191cmのLO田島貫太郎、FL福井蓮(いずれも3年)ら、FW陣も力強くモールも強固だ。

優勝候補の一角、東福岡(写真は昨年度の大会から)

また、「西高東低」と言われて久しい高校ラグビー界。他にも関西以西のシード校や強豪校は、優勝候補の一角を占めることになるだろう。特に初優勝を目指すシード校の2校も実力は十分だ。

その1つは昨年度を含め、準優勝4回の御所実業だ。予選決勝ではライバルの天理を逆転で下し、2大会連続の出場を決めた。伝統的に守りのチームだが、大きな得点源はPR小林龍司、LO平井半次郎、中森樹生、NO8蓑洞功志(いずれも3年)らが組むモールだ。FWが作ったギャップを突いて、主将SH(スクラムハーフ)登根大斗、SO安田昴平(ともに3年)がトライを狙う形も武器だ。

もう1校、近畿大会2位の京都成章も初優勝を狙っている。「ビラニアタックル」と称される激しく前に出る守備が伝統だ。FWは身長191cmのLO本橋拓馬や、NO8堀田凌永(ともに3年)が突破力に優れ、共同主将のSH宮尾昌典(3年)とSO辻野隼大(ともに3年)のハーフ団がチームを引っ張る。

京都成章LO本橋(写真は昨年度の大会から)

また、2大会ぶりに出場する大阪朝鮮高(大阪第2)はフィジカルが伝統的に強いチームだ。FWは主将のNO8金勇哲(3年)を筆頭に推進力に長けており、BKではステップが上手くスピードもあるFB金昂平(3年)が中心だ。

シード校の1つ、関西学院はメンバーが充実。予選決勝でライバルの報徳学園を破り、5大会ぶりの花園出場を決めた。主将のHO(フッカー)平生翔大を筆頭に、PR市川晃己、CTB川村祐太(いずれも3年)が中心選手だ。

他にもノーシードながら上位進出が予想されるのは、優勝5回を誇る常翔学園(大阪第3)だ。今年度もFW、BK一体となって前に出る力がある。主将LO木戸大士郎(3年)を中心にFWは強く、SOは昨年から仲間航太(2年)が務め、WTB亀井郁弥、FB佐々木開(ともに3年)は決定力に長ける。

他にも突破力に長けたCTB村田佳翼(3年)がいる尾道(広島)、SH高島大輝とSO竹林珠夏(ともに3年)が牽引する石見智翠館(島根)、主将のFL内川朝陽や、SO徳永優太(ともに3年)ら中心の佐賀工業(佐賀)。

また、HO楳原大志、FB山田駿也(ともに3年)らが引っ張る長崎北陽台(長崎)、PR松野颯舞(3年)を中心にモールと守備が武器の四国王者・松山聖陵(愛媛)、フィジー出身のNO8セコナイヤ・ブル(3年)のいる大分東明(大分)なども上位進出を狙っている。

一方、東のシード校。桐蔭学園以外は優勝5回の伝統校・目黒学院(東京第1)のみとなった。主将SH飯島乾太、SO小俣一樹(ともに3年)がボールを動かし、PRシオネ・ポルテレ、LO川嶋凌太、WTB林星安(いずれも2年)らはボールを前に運ぶ力がある。

他にもシードこそされなかったが東からは3校を推したい。一昨年度大会ベスト4の流通経済大柏(千葉)には、今年度はFLでもプレーする身長202cmのディアンズ・ワーナー、決定力の高いWTB小澤ジョージィ(ともに3年)がおり、今大会も上位進出をうかがう。

日本航空石川(石川)はNO8パトリク・ヴァカタ(3年)らがいるモールは強力で、SO嶋竜輝(3年)のゲームメイクも光る。中部大春日丘(愛知第1)には主将のNO8福田大晟、PR乳井大士、SH大海柊人、SO堀日向太(いずれも3年)、WTB小池陽翔(2年)、さらに1年生ながら先発している身長191cmのLO物部耀大朗などとタレントが揃う。

他にも予選決勝でダブルハットトリックを達成したWTBナイバルワガ トマシ(3年)を擁する秋田工業(秋田)、LO最上太尊(2年)やNO8渡邉元(3年)ら、FWに強い選手が揃う仙台育英(宮城)、NO8吉田爽真と主将のSH細矢聖樹(ともに3年)が中心の國學院栃木(栃木)、SH高橋佑太朗&SO黒川和音の2年生ハーフ団が攻撃のタクトを握る茗渓学園(茨城)なども力がある。

東海大相模、台風の目となるか?

都道府県予選2位チームによるブロック予選を勝ち上がったのは、函館・ラサール(北海道)、黒沢尻北(東北)、東海大相模(関東)、開志国際(北信越)、四日市工業(東海)、報徳学園(近畿)、創志学園(中国)、新田(四国)、長崎南山(九州)の9校。

この中では、激戦となった近畿ブロックを勝ち上がった報徳学園、1月のサニックスワールドユースの予選会と関東ブロックを制した東海大相模も侮れない。

そして、今大会で都道府県予選を勝ち上がっての初出場校は、文武両道でも知られる川越東(埼玉第1)のみで、ブロック予選からは開志国際、四日市工業、創志学園の3校が嬉しい初出場となった。

花園は負けたら終わりのノックアウト方式、今季はコロナ禍で唯一の全国大会となった。高校ラガーたちが3年間のすべてを出し切る熱さがあるからこそ、見ているものの心を打つ。果たして100回目の記念大会を制するのは優勝常連の強豪校が、それとも初優勝校となるのか。

文/写真:斉藤健仁

斉藤健仁

斉藤 健仁

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント

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