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今年は南アフリカ代表が参加せず、南半球3か国対抗戦となった「トライネーションズ2020」(ザ・ラグビーチャンピオンシップ)は、10月31日(土)に開幕した。
ブリスベンで行われたブレディスローカップ第4戦
その第2戦は11月7日(土)、オーストラリアのブリスベンにあるサンコープスタジアムで「ワラビーズ」こと、地元オーストラリア代表が、先週に引き続き「オールブラックス」こと、ニュージーランド代表を迎え撃った
両国の対戦は、毎年「ブレディースローカップ」の試合も兼ねており、今週の試合は今年の最終戦となる第4戦も兼ねている。先週、オールブラックスが43-5と大勝し、2勝1分。すでに18年連続の「ブレディースローカップ」保持は決定したが、ワラビーズとしては、なんとかしてホームのファンの前で、オールブラックス相手に勝利したいところだった。
今年からオーストラリア代表の指揮を執る、ニュージーランド出身のデーヴ・レニーHC(ヘッドコーチ)は、普段はバックスリーでプレーすることの多いリース・ホッジをSO(スタンドオフ)に起用、FL(フランカー)ラクラン・スウィントン、WTB(ウィング)トム・ライトといった2人の初キャップの選手を先発させた。
一方のオールブラックスも、SH(スクラムハーフ)アーロン・スミス、SOリッチー・モーウンガ、CTB(センター)ジャック・グッドヒューらを休養させ、これまでFB(フルバック)でプレーしていたボーデン・バレットを10番にシフトするなど、こちらもメンバーを変えてきた。
SOボーデン、弟のLOスコットとFBジョーディーも揃ってメンバー入りし、昨年のワールドカップのカナダ戦以来になる、パレット3兄弟揃っての先発となった。また、WTBリーコ・イオアネの兄アキラもFLでデビューとなり、兄弟として初めてオールブラックスとして試合に出場した。
サンコープスタジアムでは、1986年に初めてワラビーズとオールブラックスのテストマッチが行われ、それ以来、7戦でオールブラックスの4勝2敗1分。直近では2017年に対戦しており、この時はオーストラリア代表が23-18で勝っている。また、過去7戦全てで、7点差以上のスコアになったことがなく、今回も当然、接戦が期待されていた。
気温は22度、時折暖かい風が吹く中、この試合が100キャップの節目となる、地元レッズの元キャプテン、ワラビーズのPR(プロップ)ジェームズ・スリッパーがまず入場し、観客から拍手で迎えられた。
両国の国歌の後、この日は9番をつけたSHのTJ・ペレナラのリードで、オールブラックスのハカ「カパオパンゴ」が披露され、試合はオーストラリアボールでキックオフされた。
先制したのは、ホームで意地を見せたいワラビーズだった。前半3分、SOホッジが裏にキックし、FBトム・バンクスがキャッチしオフロードパス。そのパスを受けたWTBライトが右中間にトライを挙げて5-0とする。
オールブラックスもすぐに反撃する。8分、連続攻撃を仕掛けて、FBジョーディー・バレットがオフロードパスでチャンスを演出し、CTBンガニ・ラウマペのパスが相手に当たり、転がったボールをWTBリーコ・イオアネが拾い上げて左隅に押さえて、5-5の同点に追いつく。
21分にオーストラリア代表SOホッジがPG(ペナルティゴール)を決めて8-5とリードした直後の23分、WTBライトがニュージーランド代表PRオファ・トゥウンガファシにアゴにハイタックルを受ける。TMO(テレビジョンマッチオフィシャル)の末、トゥウンガファシは一発レッドカードで退場。オーストラリアが数的優位となる。
それでも32分、オールブラックスはFBバレットがPGを決めて、8-8の同点に追いつく。すると34分、今度は初キャップだったオーストラリア代表FLスウィントンが、ハイタックルでレッドカードを受けて14人対14人のイーブンとなる。
さらに40分、オーストラリア代表は、WTBマリカ・コロインベテがイエローカードをもらってしまうが、なんとか守り切って8-8の同点で前半を折り返した。
後半、数的不利な状況でも得点を取られなかったオーストラリア代表は、10分、SOホッジのPGで、再び11-8とリードする。しかし、オールブラックスは13分、モールを押し込み、最後はHO(フッカー)コーディ・テイラーが押さえ、ゴールも決まって15-11と逆転に成功する。
オーストラリア代表は19分、SOホッジがPGを決めて14-15と1点差に追い上げる。さらに28分、オールブラックスのLOスコット・バレットが、倒れたままプレーに関与しイエローカードとなり、今度はワラビーズが数的有利となった。
30分、直後のPGはSOホッジがしっかりと決めてオーストラリア代表が17-15と再びリードする。さらに35分、ワラビーズはゴール前に攻め込み、最後は途中出場のPRタニエラ・トゥポウがねじ込んでトライ、ゴールも決まって24-15とワラビーズがリードを8点に広げた。
39分、オールブラックスも途中出場のLOトゥポウ・ヴァアイが中央にトライを挙げて、22-24と2点差に追い上げる。残り1分、オールブラックスに逆転の可能性が残っていが、ワラビーズのWTBコロインベテがビッグタックルを見せて攻撃の芽を摘み、そのままノーサイドを迎えた。ワラビーズがオールブラックスに対して、2019年8月以来となる勝利を収めた。
フォスター体制となり初黒星となったオールブラックスのキャプテンFLサム・ケインは「試合はカードで少し形を失った。それでもオーストラリアはとても良く適応し、FW(フォワード)と多くのキックオフを通して試合をコントロールした」。
「私たちはディフェンスがあまりにも消極的だと思った。ちょっと現実を見て、私たちは自分自身を厳しく見つめ、来週はもっと良くならなければならない」と反省しきりだった。
イアン・フォスターHCは「判定には異論はない。両チームとも雑なゲームになってしまい、規律が悪かった。特に最後のイエローカードは余計だった。私たちはまだ試合を諦めていなかったので、本当に痛かった」。
「負けることはもちろんいいことではない。試合の終盤はまだチャンスがあった。落ち着かなければならなかったのに、実際には多くのペナルティを犯してしまった。そこから学んでいかないといけない。今日はワラビーズの情熱に我々が反応できなかった」と唇を噛んだ。
トライネーションズ(ザ・ラグビーチャンピオンシップ)2020 第2戦
【ハイライト】オーストラリア vs. ニュージーランド(11月7日)
ワラビーズの指揮官として初勝利を挙げたレニーHCは「1勝1敗ではブレディースローカップに勝てない。私たちが十分な努力をすれば、相手が誰であっても結果を得ることができるということ。しかし、数週間のうちにアルゼンチンに勝たない限り、今夜の勝利があまり意味のあるものにならない」。
「私たちはゲームを成長させようとしている。コロナウィルスのために時間が取れなかったことがたくさんあったが、それでもこのチームがやってきていることにワクワクしている。でも今夜、調子に乗るつもりはない。今夜は素晴らしい結果だったが、私たちはそれを積み重ねていかなければならない」と、大会がまだ続くため、冷静に振り返った。
ワラビーズのキャプテンとして50キャップ目の試合を白星で飾ったFLマイケル・フーパーは「私たちにとって良いスタートであり、これを標準にしたい。私たちは、チームとして目標をはっきりさせている」。
「そして選手たちは、個人の感情を抑えて互いに切磋琢磨し、互いにより多くのことを要求することで、どんどんチームを引き上げていくと思う。若い選手たちが持ってきたものや、その逆もまた、私たちのゴールに達するために重要になるだろう」と先を見据えた。
若手も起用しつつ、オールブラックスに勝利できたことは、レニーHCが就任した新たなオーストラリア代表にとっては、2023年のワールドカップに向けて大きな勝利となったにちがいない。
敗れたニュージーランドはトライネーションズとしては1勝1敗となり、次戦は来週11月14日(土)に、オーストラリアのシドニーで「ロス・プーマス」こと、アルゼンチン代表と対戦する。
オールブラックスに一矢報い、こちらも1勝1敗と五分に戻したオーストラリアは、1週休みを挟んで、11月21日(土)にオーストラリアのニューカッスルでアルゼンチン代表を迎え撃つ。
文:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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