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1月3日、東大阪市花園ラグビー場で準々決勝の4試合が行われ、東福岡(福岡)、大阪桐蔭(大阪第1)、桐蔭学園(神奈川)のAシード3校が順調に勝ち上がった。
そして、4試合目は夏の7人制ラグビーの王者・流通経済大柏(千葉)と、地元大阪の強豪・常翔学園(大阪第3)のBシード同士が激突した。
流通経済大柏は、後半15分まで0-14とリードされた逆境の中でもあきらめず、残り15分で3トライを挙げて、見事な逆転勝利を飾った。
26回目の花園で、同校として初、そして千葉県勢としても初めてベスト4に駒を進めた。
流通経済大柏の相亮太監督は常翔学園の大阪予選の戦いぶりを分析し、(相手のフィットネスが落ちてくる)「45分まで我慢。その後の15分、走り切ろう」と選手を送り出した。
前半は相手の攻守に渡るプレッシャーの前に、0-14とリードされて前半を折り返す。後半、もう1本トライを取られるとかなり厳しい状況になってしまう……。
ハーフタイム、相監督は「とにかく攻めよう! このまま何もしないで負けてはいけない。開き直って自分たちのラグビーをしようと」と指示した。
流通経済大柏は、風下だったこともあり、ボールを積極的に展開するが、それでも常翔学園のゴールラインは遠かった。
やっと1トライを返したのは後半17分。相手の強引なパスをWTB(ウィング)永山大地(3年)がインターセプトし、そのまま右中間にトライ。
さらに22分、「花園で戦うためには必要なオプションなので、年間を通して準備してきた」(相監督)というモールで押し込み、最後は右に展開。CTB(センター)土居大吾(3年)がトライを挙げて14-12に迫った。
残り5分、相手ペナルティで、中央やや左でPG(ペナルティゴール)のチャンスを得る。決まれば逆転となる。
当然、セオリーはPGであり、相監督は一度、ゴールポーストを指さしてから選手たちの顔を見ると、「うーん…という顔をしていて、勝負させてくださいという表情だった」ので、タッチラインの方向を差し直した。
「BK(バックス)に力のある選手が多かったですが、この1・2カ月くらいからFW(フォワード)が主張し始めてきた。彼らの選択を信じていた」と指揮官は選手たちの判断を尊重した。
キャプテンPR(プロップ)葛西拓斗(3年)も、「監督と目が合いました。何度も練習していたので、モールで行こうと思った」という。
そして、5mラインアウトからモールを形成して押し込んで、最後は2年生HO(フッカー)作田駿介がボールを押さえて、ゴールも決まって19-15と逆転に成功する。
「自分一人ではなくて、BKのみんなの力や、FWの先輩たちが(モールの)前で頑張りがあったからだと思う。自分がトライを取れたことは本当に嬉しい!」とHO作田。
また、相監督も「モールを押し切ってくれました。常翔学園のFWは強いです。彼らは僕の想像をはるかに超えてくれました」と目を細めた。
ロスタイムも含めて残り5分ほど、流通経済大柏はボールをキープして時間を使い、最後の相手の攻撃も防ぎ切って、19-15でノーサイドを迎えた。
1992年に初出場を果たし、今年度で24年連続26回目の花園出場となった千葉の名門が、初めてベスト8の壁を破った歴史的瞬間だった。同校史上初ということだけでなく、千葉県勢としても初の準決勝進出となった。
新チームになったとき、日本一を目標に掲げて、逆算して選手たちを鍛えてきたという相監督。その中で例年よりも選手たちの自主性に任せてきた。
「トレーニングやゲームの大枠は指示しますが、あとの判断は選手に任せます。今日の試合も8割くらいは僕の指示を無視していましたね(苦笑)」と破顔した。
また、今年度の春先、「日本一を取るためには日本一を勉強しよう」と相監督の大東文化一高の先輩である、藤原秀之監督が率いる桐蔭学園に赴く。
「桐蔭学園は基礎、基本の一番大事なところを徹底的に練習していた。大きいFW、スキルの高いBKであっても、基礎、基本をおろそかにすると自分たちがボールを持っている時間が少なくなる」。
「難しいことじゃなかった。目から鱗だった」と実感した相監督は、パススキルやタックル後のボディコントロールなどの基本プレーを徹底した。
選手たちの自主性に任せる。基本を大事にして練習を行うなどの積み重ねが、花園という大舞台の、一番大事な時間帯に集約されて、見事な大逆転に結びついた。
現在の3年生は、相監督が監督に就任して初めて中学時代に声を掛けてきた選手たちであり、「僕の目指しているラグビーの完成形に近くなってきた。僕の手から離れましたね」と選手たちの成長を実感していた。
大東文化大、リコーブラックラムズでFL(フランカー)やLO(ロック)として活躍し、日本代表スコッドにも選ばれたことのある相監督。
大東文化一高時代の恩師・神尾雅和監督の背中を見て、「将来は先生になりたい」と思い、リコーでプレーしながら日大で教員免許を取得、大学院にも通った。
2013年に現役引退すると、2年間のコーチを経て、流通経済大柏の監督になって4年目となる。
相監督は「今日も観客席のお客さんと話しながら、客観的に楽しんで見ていましたね。勝つことも大事ですが、教育現場ですから、教育的価値をラグビーから学んでほしいしと教員になりました」。
「教員という職業に携わって、選手たちに関われて幸せだと思います」としみじみと話した。
準決勝は、大阪王者の大阪桐蔭(大阪第1)との対戦である。相監督は「大阪桐蔭は本当に、日本一実力のあるチームですが、次の試合も楽しみでしかないですね」。
「選手の成長が手に取るようにわかるので、1日でも長く試合がしたいと思います」と腕を撫した。
流通経済大柏は、相監督となってから初のベスト8、さらに創部史上初のベスト4進出を決めた。その勢いのまま、Aシードの大阪桐蔭にチャレンジする。
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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