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ラグビー コラム 2018年12月17日

神戸製鋼が15年ぶりの優勝、「ロッカールームは笑顔でいっぱい」。トップリーグ

ラグビーレポート by 斉藤 健仁
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深紅のジャージが2003年以来の歓喜に沸いた。

12月15日(土)、東京・秩父宮ラグビー場で第56回日本選手権を兼ねたトップリーグ総合順位決定トーナメント決勝が行われた。

今シーズン無敗の神戸製鋼コベルコスティーラーズが3連覇を狙ったサントリーサンゴリアスを55-5で圧倒し、トップリーグでは15年ぶり2度目の栄冠に輝いた。

また、日本選手権では18シーズンぶり10度目の優勝となり、最多優勝記録を更新した。

1万7000人以上の観客が見守る中、神戸製鋼、SO(スタンドオフ)ダン・カーターのキックオフで試合開始。

神戸製鋼WTBフレイザーとFLハッティング

今シーズン好調の神戸製鋼は、前半3分、ターンオーバーから攻撃を継続し、SH(スクラムハーフ)日和佐篤、SOカーターからWTB(ウィング)アンダーソン フレイザーとつないで右中間にトライ。SOカーターがゴールも決めて7-0。

さらに神戸製鋼はスクラムからアタックを継続し、NO8(ナンバーエイト)中島イシレリがブレイクし、オフロードパスを受けたWTBフレイザーが再びトライ、12-0とリードを広げる。

サントリーも負けじと18分、ターンオーバーからWTB尾崎晟也が右タッチライン際を快走。インゴールに飛び込んで5点を返し、12-5とする。

ゴールを決める神戸製鋼SOカーター

だが、その後もディフェンスで相手にプレッシャーをかけ続けた神戸製鋼ペースのまま試合は進む。

32分にSOカーターがPG(ペナルティゴール)を決め、3点を追加すると、前半終了間際の37分、ビッグプレーが出る。

サントリーFB松島幸太朗のキックを、今シーズン、コカ・コーラから加入した神戸製鋼のHO有田隆平がチャージし、そのままトライ。SOカーターのゴールも決まり、22-5として前半を折り返した。

サントリー松島、トライに絡めなかった

チャージされたサントリーFB松島は「外から裏に転がすオプションを言われて、そこはロングに蹴ろうとして詰められた。選択オプションが悪かった」と肩を落とした。

一方、神戸製鋼のHO有田は「運がよかっただけ。チームでいいプレッシャーをかけていたから取れたトライ」と胸を張った。

トライを決める神戸製鋼CTBアシュリークーパー

後半、先に点を取って追い上げムードを作りたかったサントリーは、自陣から積極的にアタックをしかける。

だが、6分、神戸製鋼はCTBアダム・アシュリークーパーのタックルからターンオーバー。そのままボールを継続し、最後はSH日和佐からCTBアシュリークーパーと繋ぎトライ。SOカーターのゴールも成功(29-5)。

2トライを挙げた神戸製鋼FB山中

さらに神戸製鋼がたたみかけて、8分、相手キックオフボールをキープし、最後はFB(フルバック)山中亮平がトライ。34-5として勝負を決めた。

勢いの止まらない神戸製鋼は、14分、LOトム・フランクリンが相手ディフェンスを倒しながら独走トライ。

17分、今度は敵陣5mラインアウトから攻撃を継続し、最後はFL(フランカー)グラント・ハッティングがトライし48-5と一方的なゲーム展開となる。

ノーサイド直前の38分にもFB山中がダメ押しのトライ。途中出場のSOヘイデン・パーカーのゴールも決まり、55-5でノーサイド。前半から攻守に渡って前に出続けた神戸製鋼が8トライを挙げて圧勝した。

いいところをほとんど出せず、3連覇ならなかったサントリーの沢木敬介監督は「前半、ゲームの入りのところから、サントリーじゃないプレーが何個も続いて、自分たちのペースに持ち込むことができなかったことが一番の敗因」。

「決勝は当たり前のことをどれだけ平常心で精度高くできるか、ということが大事で、それをできたチームが勝つ。僕ら2年勝っていて、わかっていると思ったつもりでしたが、3年目でプレッシャーもあったのかもしれません」。

「そこをしっかりコントロールできなかったのは、全部僕の責任です」と自らを責めた。

SH流大キャプテンはサントリーらしいラグビーができなかった要因として、「ボールを簡単に失ってしまった。ディフェンスでは、トライを取られましたが、すごくいいディフェンスをしている時間帯もありました」。

「実際にボールを取り返して、さあアタックという時にボールキャリアのところでミスがあったり、ブレイクダウンでミスがあったりしました」。

「リーグ戦で(神戸製鋼に)負けた時もそうでしたが、自分たちのアタックで簡単なエラーでボールを失うことが今日も多々あった。どこかで隙もありましたし、相手のプレッシャーもあったと思います」と振り返った。

キャプテン経験もあるベテランLO真壁伸弥は、「セットプレーで戦えていたので、もっとセットプレーラグビーをすればよかった」。

「自分たちのラグビーを貫こうとしたが、インプレーであれだけ食い込まれるならラインアウトとスクラムでセットプレーラグビーすれば、タラレバですが、よかったのではないかなと後悔しています」と話した。

今シーズン、無敗で優勝まで駆け上がった神戸製鋼デーブ・ディロンHC(ヘッドコーチ)は「試合に向けての準備も素晴らしかったですし、一つひとつの小さなことも素晴らしい形でできたことがこのゲームの結果につながったと思います」。

「横にいる橋本ゲームキャプテンはもちろん、福本(正幸)チームディレクター、そして(2年前に亡くなった)平尾(誠二)さんを代表して戦うことができ、優勝を勝ち取ることができ本当に素晴らしかった」。

「自分たちが何を代表してプレーしているのかということに立ち帰りました。その上で会社の歴史を学びました。神戸製鋼のラグビー部は90年の歴史があります」。

「自分たちが会社そのものの歴史を含めて学ぶことによって、自分たちがこのチームでプレーする意味づけにつなげていきました。これまでのスチールワーカー(鉄鋼マン)と自分たちを結びつけ、一つになりプレーをしてきました」と誇らしげだった。

ゲームキャプテンを務めたFL橋本大輝は「感無量です。試合では気持ちの面で相手を圧倒できたと思いますし、15人だけでなく、メンバー外、会社のみなさん、ファンのみなさんの力があってああいうゲーム内容になったのかなと思います」と率直にコメントした。

優勝できた要因をゲームキャプテンは「『チームに所属している』という歴史の重みやプライドという部分が高くなって、ラグビーでも私生活でもいい面が出て、チームの一体感やいい部分が出た」。

「チームの歴史や、会社の歴史を振り返った、そういう部分が大きかったのかなと思います。ディフェンスでは気持ちの部分がすごい前に出ていて、ファイナルという特別な場所で、気迫が一番強く出たと思います」と胸を張った。

クラブハウスから持ってきた平尾さんの遺影

また、橋本キャプテンは「ミスターラグビー」と言われたOBの平尾さんの遺影をもって壇上に登ったときの思いを聞かれて「平尾さんとは亡くなる前に優勝しようと約束していましたので。これ以上のことはないくらいに嬉しかった」

「歴史を作るといって、うちのチームは戦ってきましたので、その歴史を作れて、これを後輩たちにつなげていきたい」としみじみと語った。

ノーサイド後、涙を見せていたFB山中は優勝を誰に伝えたいかと聞かれて「やっぱり平尾さんですね。大学のときも、いろいろあったときもサポートして気に掛けてくれて、チームに復帰したときも期待してくれていた」。

「(平尾さんは)ずっと優勝を目標にしていたので、それが叶ったから嬉しいですね!」と声を弾ませた。

すばらしい捌きを見せた神戸製鋼SH日和佐

今シーズン、サントリーから神戸製鋼に加入して、3度目の優勝となったSH日和佐は「春からやってきたことが出せていい試合だった。有田がチャージしてトライ挙げたところが一番のキーポイントだった思います」。

「(古巣との対決でしたが)サントリーは今でも大好きですし、対戦相手と考えると強いチームに勝てた。相手どうこうより自分たちのラグビーをしようと準備してきました。(カーターとは)コミュニケーションとれたのですごくやりやすかったです」と笑顔を見せた。

そして、今シーズンのリーグMVPにも輝いたSOカーターは「神戸製鋼にとって特別な試合だった。優勝するまで、長い期間あったので、今回、トップリーグで優勝できて本当にうれしく思います」。

「今回の試合の週、いろんな感情がありました。長く神戸製鋼にいる選手は優勝したい気持ち強いので、その気持ちを持ってプレーした。今日のチームパフォーマンスを誇りに思っています」。

指示を送るSOカーター

「今日のチームパフォーマンスは自分のためよりも、長くチームにいる選手のためだし、以前、神戸に在籍した選手、ノンメンバー、チームスタッフもそう」。

「チームのパフォーマンスができたので、ロッカールームは笑顔でいっぱいでした。今日のパフォーマンスを誇りに思っています」とすがすがしい表情で語った。

こうして、神戸製鋼が平成最後のトップリーグの王者となり、短期決戦だった今年のトップリーグは幕を閉じた。

斉藤健仁

斉藤 健仁

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント

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