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日本代表の秋シーズンが終わった。世界選抜(10月26日)、ニュージーランド(11月3日)、イングランド(11月17日)、ロシア(11月24日)と戦って、1勝3敗。世界ランキングから見ると順当な結果だが、この4試合で日本代表は何を学んだのか。振り返っておこう。
世界選抜戦は来年のラグビーワールドカップ(RWC)に向けて改修を終えた花園ラグビー場で行われた。2015年、2017年に続いての対戦だったが、今後オールブラックスを狙うような若い選手もおり、過去最強の世界選抜に見えた。特に前半のディフェンスのプレッシャーはすさまじく、日本代表が誇るFLリーチ マイケルやWTBレメキ ロマノ ラヴァですら跳ね返された。体格、スキルで上回る世界選抜に対し、日本代表はラインアウトで苦戦し、反則を繰り返しては苦境に陥った。後半は運動量の落ちた世界選抜から3トライを奪い、逆転勝利は間近だったが、ゴールラインを目前にボールを前に落とすミスでノーサイド。28-31という3点差で敗れた。
残念な結果だったが最後まであきらめない姿勢は見せた。今春、来日したイタリア代表とは1勝1敗。初戦はジェイミー・ジョセフヘッドコーチ体制になって以降ベストの内容で勝ったが、2戦目は別人のように敗れる。ジョセフHCはこれをメンタリティーの弱さと見て、この秋は強豪国対するメンタル面を修正した。それが世界選抜戦の後半に現れたということだろう。この試合でジョセフHCが「最重要課題」としてあげたのは次の2つだ。「規律を守る」、「セットプレーの修正」。個々の能力で強豪国に劣る日本代表は、反則、ミスが命取りになる。そして、少なくとも自分たちのボールをスクラム、ラインアウトで確保しなくては有効な攻めはできない。
このあたりを急ピッチで修正して臨んだのがニュージーランド代表オールブラックス戦だった。この試合では、5トライを奪って攻撃面の成長を見せた半面、タックルされた後にボールにしつこく絡まれてスピーディーな攻撃ができず、切り返されて10トライを失った。スクラムは修正できていたが、この試合でもオールブラックスのプレッシャーの前にミス、反則が多く、ボール争奪戦で素早くボールを出すためのプレーの精度も課題となった。
2試合の課題が修正され、好勝負になったのがイングランド代表戦の前半だ。先制トライこそ許したが、60%以上ボールを保持して攻め続け、田中史朗曰く「イングランドにラグビーをさせなかった」。長身揃いのイングランド相手にラインアウトも安定し、リーチのトライなどで15-10とリードしたが、後半は主力を出してきたイングランドの圧力に力負けした。
続くロシア代表戦は相手のキック主体の攻めに苦戦。キックを多用する相手に対し、自陣から簡単にワイドに展開してはプレッシャーを受けた。ディフェンスの出足を止めるような力強い縦のプレーも少なかった。後半、ようやく逆転したが、悪い流れに陥った前半のうちに流れを引き戻せなかったのは大きな課題だ。RWCに出てくる国の中では体格も小さく、爆発的な突破力もない日本代表は、どんな相手にも丁寧にプレーしなくては勝つことはできない。「格下」は存在しないということだ。来年のRWC開幕戦で戦う相手に苦戦したことは、良い薬になったと思いたい。
堀江翔太、松島幸太朗、レメキ ロマノ ラヴァら主力選手が負傷で不参加だったなかで、テストマッチの経験の浅い選手が経験を積んだのも収穫だろう。FB不在の中で、ウィリアム・トゥポウがFBに入って安定したプレーをしたのも前向きな材料だ。リーチ マイケル、福岡堅樹のプレーはワールドクラスだった。
11月27日、日本代表の総括会見が行われたが、ジョセフHCは、2016年からの歩みを振り返り、「ティア1と戦わなければ分からないことがある」と、ニュージーランド(世界ランキング1位)、イングランド(同4位)と戦った意義を強調した。世界選抜、イングランドとあきらめずに戦い続けたことと、ニュージーランドから5トライをうばったことを前向きに評価した。
記者会見では、この3年間で、ウェールズ、スコットランド、アイルランド、フランス、イタリア、イングランドと、シックスネーションズの6カ国とすべて対戦したことについて感想を求める質問があった。ジョセフHCはこう語った。「チームの特徴はそれぞれ違いますが、日本代表と戦う時は力ずくで勝ちに来ます。日本代表の早い展開を嫌ってスローダウンさせ、ダイレクトなプレー(SHからのフラットなパスに走り込むようなプレー)を多用してきます。日本代表は体格が小さく、フィジカル面でも劣っているからです。どんなチームに対しても日本代表は点を取ることができます。それは心配していませんが、スクラムで圧力をかけられると、FW第三列が動けなくなり、小さなSH、SOにプレッシャーがかかります。ゴール前のモールも止めるのが難しい」。
結論じみたことは言わなかったが、スクラム、ラインアウトの強化には引き続き時間をかける一方で、強豪国に対してはスクラム、ラインアウトを少なくし、攻める時間を多くして勝つしかないということだ。イングランド戦の前半のようにゲームを支配したいが、ボールをキープしているだけでは体力の消耗が激しい。そこで簡単に相手ボールにならないようなキックを使いつつ、チャンスを作ることが必要になる。ニュージーランド、イングランドと戦ったからこそ目指すレベルは明確になった。2019年は2月から始まるスーパーラグビーの舞台を活用しながらの強化になるが、いかに高いスタンダードを維持しながらトレーニングし、試合に臨み続けられるかどうかが鍵だろう。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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