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11月27日(火)、東京都内のホテルでラグビー日本代表のジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)は今秋の総括会見を開いた。
直前に、ジョセフHCは「チームジャパン2019 総監督」の立場でサンウルブズの「2019年シーズンチーム発表記者会見」に出席し、すぐに場所を移動しての会見となった。
◆日本代表 秋のシリーズ勝敗
・10月26日 vs.世界選抜 ●28-31(前半7-24)
・11月03日 vs.ニュージーランド代表 ●31-69(前半19-38)
・11月17日 vs.イングランド代表 ●15-35(前半15-10)
・11月24日 vs. ロシア代表 ○ 32-27(前半10-22)
まず、同席した薫田真広強化委員長がこうコメントした。「2018年を振り返ると、ジョセフHCをはじめ、日本代表のコーチングスタッフがサンウルブズの強化に関わって非常に大きな成果があった」。
そして、「5月に2019年ワールドカップに向けた日本代表第1次トレーニングスコッドを発表した。それにより、選手間で競争意識が高まり、トップリーグのチームからから今まで以上の支援をいただき、結果につながったと思います」と2018年を総括。
2019年に関しては「12月17日に第3次のスコッドの発表を予定しています。選手たちはスタートのタイミングは違うが、5月まではサンウルブズとして活動します」。
「6月に(宮崎で合宿する)日本代表のスコッドを発表し、7月下旬から8月の上旬でPNC(パシフィックネーションズカップ)を予定しています。そして、9月にワールドカップの開幕を迎えます」と語った。
◆ここまでの日本代表、強化の振り返り
続いてジョセフHCがマイクを握り、20分ほど、2年前から時系列に沿って振り返った。
「2017年のスーパーラグビーと、その後の6月のアイルランド代表との対戦で判明したことは、テストマッチを戦うだけの力量が選手たちに足りていないということでした。
1つ目は強さがなく、フィットネスも足りない。2つ目にはコーチとして選手たちと過ごす時間、強化に充てる時間が少なすぎたと感じた。それを克服するためフィットネステストをする、高いスタンダードを維持する、自己責任持たせるということでした。
そして、もっと選手たちをコーチングする時間を得るために、2018年はサンウルブズを率いる決断に至りました。
昨秋は準備期間が1週間しかなく、世界選抜、オーストラリア代表に敗れた。だが、欧州ツアーではトンガ代表には完勝、フランス代表には勝てるところまで持っていったが、引き分けとなった。
そこで明らかになったことは、時間をかければかけるほど理解力が高まり、フィットネスが上がり、高い強度の試合を戦えるだけの力が身につくと感じました。
2019年もトニー・ブラウンHCがサンウルブズを指揮することで密な関係性を築き上げることができ、2019年のワールドカップに向けて、さらなる強化をはかれると思います。
今年に関しては、6月はイタリア代表、ジョージア代表戦を行い、3戦2勝だったが。少しがっかりした。初戦のイタリア戦では勝ちを得たのに、2戦目で負けた。精神力が不足しているとコーチ陣としては見極めた。
1年後には世界の強豪に対して勝ちにいかないといけない。勝ちにいくためには、自分たちは勝てるという信念を持たないといけない。9月に和歌山合宿で集合した際には、ラグビーチームとして意識改革、どのように精神力を鍛えるかを話した。
世界選抜、オールブラックス、イングランド代表、ロシア戦代表では、やはり世界の強豪と実際に対戦しないと鍛えることはできない。W杯の準備期間として、あと1年となったが、ティア1のチームとの対戦が重要と捉えています。
チームの信念、どのくらい勝つことに対して確信を持てているかというところは、まずは世界選抜戦でハーフタイムから挽回できた経験にあった。あの試合は引き分けまで持っていける試合だと思っている。
そこでは、しっかりとしたマインドセットで試合に意気込んで、取り組めていることが明らかになった。そしてオールブラックス戦はかなり苦戦すると思われていたが、世界のベストなチームに対して、トライ取れたことはポジティブな結果だったと思う。
イングランド代表戦もハーフタイムまでリードしていたのに、最後負けたことは残念なことではあったけが、あそこまでの戦いを見せられたところ、最後まで絶対に諦めない、という精神を持って戦い続けたところは評価できる。
ロシア代表戦はまったく違ったチャレンジになった。世界でもっとも大きなスタジアムで8万人の前でプレーしたところから、3000人の観客の前で試合しないといけないという中で、フィジカルでコミットしているロシア代表に対して、選手たちは必死に、がむしゃらに、勝ちを取った」。
◆ワールドカップイヤーの強化計画
さらに、指揮官は2019年ワールドカップに向けてのベストにもっていくための準備、計画を続けた。
「2つのプログラムが同時進行で行われる。ワールドカップトレーニングスコッドの中には、サンウルブズに選ばれた選手と選ばれなかった選手がいるが、選ばなかった選手は別のチームで、自分がそのチームを率います。
トレーニングスコッドの全選手たちにスーパーラグビーレベルのプレッシャー、負荷がかかった試合を経験させて強化したい。試合のプレッシャー以外でも選手たちのスキル育成、コンディションアップ、フィットネスも上げたい。
サンウルブズの選手は1月の合宿から始動します。サンウルブズに関わっていない選手は、2月は東京で、3月は沖縄合宿がある。セカンドプログラムの方でも3月末から試合を考えている。6月から日本代表の選手として活動が始まり、宮崎では10日間の合宿が3回あります。
7月末から8月上旬にPNCに参加することも決定している。その後に網走でコンディショニングキャンプを行います。9月にテストマッチを行い、9月20日にワールドカップの初戦を迎えます」。
さらにジョセフHCは個々の選手についても言及した。
「特に突出してお伝えしたいのは、キャプテンのリーチ マイケルです。彼はこの1年で主将として非常に成長した。それはフィールド内外で成長が見られた。
いろんな責任をしっかりと役割を果たしてくれて、時にはアシスタントコーチかなというくらい活躍してくれた。フィールドの外でもお手本で、桜のジャージーに熱い思いを持っています。
ティア1チームと対戦するにあたって、日本代表が常に抱えていた問題が、選手層の薄さだった。日本人もいい選手が出てきて、インターナショナルレベルまで近づいている。
フロントローでは稲垣啓太、堀江翔太、具智元、バックスでは若手の福岡堅樹、松島幸太朗も非常な大きい成長を遂げている。若手で付け加えたいのは姫野和樹、中村亮土です。
そして、ワールドカップでの目標に関して指揮官は、「自分たちのファイナルとして捉えているのはワールドカップのトップ8に進出することです。
プール戦の初戦でぶつかるロシアは手ごわい相手です。しっかりとした精神力を持って、勝てると信じてやっていけば勝機は訪れると思います。チームも成長しているし、選手たちも成長している。
だが、ティア1の国に勝つには1回のチャンスしかないと思う。これが我々のワールドカップに向けての計画と目標です。引き続きマインドセット、メンタリティの構築の取り組みに励んでいきたい」と意気込んだ。
ジョセフHCは熱弁を振るった後、記者の質問に答えた。
―― ワールドカップ本番で、どのように戦いたいか?
「細かいところまで言えないが、今回学んだことはティア1のチームは総じて体格大きく、経験値も高い。そういうチームに対して、ティア2よりボールキープの率を高めないといけない。イングランド代表に対してはボールを持って攻撃し続けた。
だが、ターンオーバーの数が多かったり、ペナルティを犯したりして得点を取られた。それに対してロシア代表戦ではキックを多用した。イングランド代表戦より3倍で多く蹴って、その試合には勝った。
対戦相手によるが、常に我々の戦う内容、戦法を調整しないといけない。だからこそ、スーパーラグビーで戦い続けることが大事。ラグビーの戦い方、プレーのスタイルもめまぐるしく変わるので、そこに対して対応しないといけない」。
―― ワールドカップではアイルランド、スコットランド、ロシアと北半球勢と3戦する。その対策は?
「1つ1つのチームに特徴や差がある。アイルランド代表、スコットランド代表も独自のスタイルがある。ただ、ジャパンと戦うとき、基本の戦略は力ずくで勝ちに来ます。
内容的にはゲームをスローにしたり、セットプレー持ち込んだりしてダイレクトに攻めてくる。なぜかというと日本は経験不足、サイズ不足、フィジカル不足だから、そこを狙って来る。
だが、得点を取ることに関しては懸念してない。オールブラックスに対しても5トライ、フランスに対してもトライを取ったので、ジャパンはトライを取る力はあります。
どこが劣勢になるかというと、スクラムです。スクラムにかなりの圧力をかけてくるので、(スクラムを組んでいて)FL(フランカー)が対応できないところで、9番、10番を狙ってきます。モールも仕掛けてきます。
前進されたらなかなか困難です。スクラムやモールが苦しむだろうと想定されるが、アタックに関してはしっかりとした手応えがあります」。
―― イングランド戦の後半、ロシア戦の前半にペナルティが多かったことに対しての改善点は?
「ペナルティはかなり厳しく取り締まられた。イングランド代表戦では前半1本、後半8本のペナルティだった。だが、それが本当にペナルティだったのか、自分の中では疑問。
ただ、ペナルティを犯したことによってテストマッチに影響与えたということなので、そこで学んだことは、試合中にレフリーが見解を変えた時、それに対して対応する努力が必要です。
選手たちもチームとしても試合の流れを感じないといけない。レフリーが見解を変えたところで、即座に適応しないといけないということがイングランド代表戦では大きな教訓となった。
ロシア代表戦に関してもかなり酷な判断をされていたけど、ロシア代表の圧倒的なフィジカルの強さ、コミットした選手たちに対して、レフリーも日本代表に対して平等に吹いてくれなかった。
ミスも多発していた中、ロシアのディフェンスが強力な中、なかなか流れに乗ることができなかった。それにも関わらず、挽回して勝つことができたのはポジティブな成果と思います。なぜなら1年前なら苦しい状況に追い込まれると、挽回することができなかった」。
2019年は2つのブログラム、60名の大きなスコッドで戦うが、そこから6月の日本代表のほとんどが選ばれる方針だという。
「全体的には60名の中から選びます。60人の中には日本代表の資格のない人もいますし、この先何が起こるかわからないし、日本にはまだまだたくさん選手います。
例えばツアー直前に堀江がケガしたが、彼の不在で若手の堀越康介にチャンスが回ってきた。若い選手に高い強度の試合を経験させることができました。6月、7月にキープレーヤーにケガがでないとも限らない。
日本ラグビーはケガ人が出たところで同じ能力を持った選手を補填できない。だからこそ、並行しての強化が必要です」。
最後に、強化したいポジションを聞かれてジョセフHCは「全てのポジションを強化しないといけない」と大きな笑顔を見せて、こう続けた。
「どのポジションも層を厚くすることが必要ですか、キープレーヤー、経験のある選手、究極的なプレッシャーがかかった中でも正しい判断をしてプレーを遂行するほどの選手は30人いない。
だからこそ、ワールドカップに向けて、層を厚くすることを主に取り組んで強化しないといけない」という言葉で締めた。
10月、11月のシリーズを主力として戦った日本代表選手たちは12月、トップリーグを戦い、それを終えると、すぐにサンウルブズに参加せず、2月まで休みになる選手がほとんどだという。
2019年はいよいよワールドカップイヤーを迎える。「2つのプログラム」、つまり、トニー・ブラウンHCが指揮を務めるサンウルブズと、ジョセフHCがコーチングにあたるもう1つのチームで、60名ほどの選手を強化しながら選手層を厚くし、ワールドカップ本番に向けた準備を進めていく。
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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