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2018年秋の日本代表戦を締めくくるロシア代表との一戦が、11月24日、イングランドのグロスターで行われる。ロシアは、来年のラグビーワールドカップ(RWC)2019の開幕戦で日本代表と戦うことが決まっている。最新の世界ランキングは19位で、日本の11位よりも下に位置する。必勝態勢で臨まなくてはいけない相手ではあるが、秋の代表戦の中では、テストマッチ(国代表同士の試合)の出場数が少ない選手に経験を積ませる唯一のチャンスでもあり、世界選抜(10月26日)、ニュージーランド(11月3日)、イングランド(11月17日)と対したのとは違う編成で戦うことになる。
ジェイミー・ジョセフヘッドコーチは「このレベルで戦う力量があるのか見たい」と話し、SH茂野海人(9番)、SO松田力也(10番)をハーフバックスで先発起用してきた。現在の日本代表は、各ポジションの役割を明確にしてフィールドを幅広く使い、ボールを大きく動かすスタイルだ。9番、10番はグラウンドの横幅いっぱいに配置された選手たちに的確な判断でパスを出し、ときには防御背後へのキックも使いながらディフェンスを崩していく役目だ。体格の大きなロシア相手には、日本代表のスピーディーな連続攻撃が効果的だが、ディフェンスのいないスペースに判断よくボールを運ぶことができなければ、パワフルな選手たちのハードタックルを食らい、リズムを崩すことになりかねない。茂野、松田にはこのチャンスをものにして、ロシアを翻弄する攻撃を展開してもらいたい。
茂野は、2017年5月13日の香港戦以来の日本代表戦だ。WTBで先発するロトアヘア アマナキ大洋も同じく、香港戦以来の出場。2016年秋のヨーロッパ遠征ではウェールズとの3点差の好勝負で活躍しており、今回も実力を示せば日本代表WTBのレギュラー争いはさらに熾烈なものになる。LOヘル ウヴェは17日のイングランド戦で負傷し戦線離脱。イングランド戦はNO8だった姫野和樹がLOに移動し、ツイ ヘンドリックがNO8に入る。つまり、イングランド戦から先発で4名の変更となる。若い力を試すという意味では、リザーブ(控え)8人の中に、サントリーサンゴリアスでルーキーイヤーから活躍するHO堀越康介、CTB梶村祐介が入っている。梶村は出場すれば日本代表初キャップだ。
対するロシアは、2018年のヨーロピアンカップで4位も、上位のルーマニア、スペインが出場資格のない選手がプレーしたことで失格となり、2011年以来2度目のRWC出場を決めた。ヘッドコーチは元ウェールズ代表FLリン・ジョーンズ。おもにウェールズ、イングランドのクラブレベルで指導経験を積んだ人で、今年の8月に就任した。世界的に有名な選手がいないが、イングランドのセール・シャークスに所属するLOアンドレイ・オストリコフ、7人制ロシア代表のCTBウラジーミル・オストロウシコといった実力者がいる。侮ってはいけない相手だ。
イングランド戦で後半逆転されたのは、前半のスピーディーなアタックが後半に入ってできなくなったからだ。世界のトップレベルでは、ボールを持った選手がタックルで倒された後、ほんの少し2人目のサポートが遅れるだけでボールが出せなくなり、ターンオーバーされてしまう。2人目、3人目が常に相手より先に動いてボールが確保できれば日本の攻撃がロシアを圧倒することになるだろう。一人一人のブレイクダウン(ボール争奪局面)での仕事の質が問われる。逆に、ブレイクダウンで圧力をかけられ、スクラム、ラインアウトのセットプレーで後手を踏めば苦しい。
危なげなく快勝してほしいと思う反面、苦しい状況の中で活路を見出すところも見たいという贅沢な思いがある。RWC2019の開幕戦に向かって互いに手の内を探り合う試合でもあり、シンプルなプレーで抜群のスピードを持つ福岡堅樹、パワフルなロトアヘアの特徴を引き出してトライを重ねたい。イングランド戦で不慣れなFBながら安定感あるプレーを見せたウィリアム・トゥポウは、ロシア相手にはアタック面で目立ってほしいところ。グラウンドコンディションによっては、スピーディーな展開が難しくなるかもしれないが、さまざまな選択肢を磨いてきた成果を見せてもらいたい。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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