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ラグビー コラム 2018年11月21日

「スクラム組もうぜ」。木川コーチに聞く、強力スクラムの秘密。大東文化大学ラグビー部

ラグビーレポート by スポーツ大東編集部
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現在、6戦全勝で関東大学ラグビーリーグ戦1部の首位を走る大東文化大学。ラグビーファンの間で大東文化の強みとして真っ先に挙がるのは、重量級FW(フォワード)による圧巻のスクラムだろう。

大東文化の強みであるスクラム

昨年度から、他大学を圧倒するスクラムを見せつけるようになった大東文化。しかし、それ以前まではセットプレーよりもアタックで観客席が沸くことが多かったはずだ。それがなぜ、スクラムが新たな強みとして挙がるまでになったのか。

今回は、大東文化のスクラムコーチを務める木川隼吾さんに、スクラム強化のために行った取り組みについて、そして選手間で生まれた『変化』について、話を伺った。

◆コーチ就任以後の取り組み

現役時代はPRでスクラムを組んだ木川さん

2016年の夏ごろに就任した木川さんは、まず“基礎の徹底”に取り組んだ。「コーチ就任当初の大東は、スクラムを黙って組んでいた」と振り返る木川さん。

「不満を言うのではなく選手同士で問題を見つけ、それを解決するためにどうすればよいかを話し合えば、1つ上のステップに進めるのでは」と、選手たちに積極的なコミュニケーションを取らせるようにした。

もう1つの基礎は、自分の中で強い姿勢が何かを知り、実際にできるようにすること。

「スクラムは突き詰めると単純になり、無駄な動きを省くと強くなる」。強い姿勢を取れればスクラムで余計な体力を消費せず、フィールドプレーにも影響を及ぼさないという。

1人でとれるようになったら複数人で組ませ、最終的には8人で組んでも強い姿勢をとれるようにした。「8人が、強い姿勢から何まで共通認識をもって組む」ことを徹底させた就任1年目、大東文化は相手にスクラムで押されることがなくなった。

相手に押されなくはなった一方で、『押せなかった』スクラムを踏まえ、木川さんはコーチ2年目を迎えた昨年度最初のFW練習で、「今年はスクラムを武器にしよう」と選手たちに伝えた。

その言葉に選手たちは奮起し、昨年度はスクラムで他大学を圧倒、リーグ戦では22年ぶり8度目の優勝を勝ち取った。大学選手権ではベスト4に終わったが、木川さんの言葉通り、スクラムは大東文化の新たな『武器』となった。

そして、コーチ3年目の今年度。メンバーがほぼ変わらずにきたことでスクラムがある程度形になってきたため、現在はひざや肩の位置など細かなスキルに取り組んでいる他、各試合への対策も行っている。

このように段階的にスクラム強化を図る中で、選手間である変化が起きているという。

◆選手間で生まれた『変化』

それは、上級生を中心としたAチームのメンバーが、下のメンバーにスクラムを教えている(コーチングしている)ことだ。

「自分の中で考えを整理し言葉にすることは、その選手にとってもプラスになる」。実際にスクラムを組む過程で疑問が生まれれば、選手から木川さんへこういうスクラムをやりたい、という話もしてくれるようになった。

「僕が実際に組んでいるわけじゃないし、(組んでみた選手の意見が)正しいこともある。自分の意見を一方的に押し付けるのではなく、コーチと選手がお互いに話しあえる関係性で、スクラムを作っていきたい」。

スクラムに関しては決まりごとが色々あるものの、その上の部分はある程度自由にしてもいいというのが木川さんのスタンスだ。

スクラムの前にコミュニケーションを取るFW陣

また、試合中はスクラムの判断を選手に任せているという。「組んでみてちょっと違うなと思えば、組み方を変えるのは全然あり」。

「やってきた対策とは全く違うスクラムを大東が組んできて、対戦相手も結構嫌なんじゃないか」と、スクラムでの自主性を説く。

そのスクラムで注目が集まるフロントロー3人も、それぞれ個性があると語る。現役時代の自身と同じポジションである、ルースヘッドPR(プロップ)の古畑翔(スポ科4=大阪桐蔭)には「社会人でも通用する将来性がある」と太鼓判を押す。

「僕は体が小さくスピードで勝負するタイプだったが、翔の場合はパワー。それに加えてスキルもついてきているが、あの上半身の強さは大学で一番」と期待のコメントだ。

HO(フッカー)であり、主将の平田快笙(環境4=大東大一)には、スクラムでの高いリーダーシップを評価。

そして、4年生2人とともに組むタイトヘッドPRの藤井大喜(社経3=黒沢尻工)の良さは「スクラムが色々動いてもそこに合わせる器用さがある」対応能力だという。

◆スクラムでの注目ポイント

「押されたとしても、8人が共通認識をもって組んだ結果なら別に良い。そこで姿勢を1人だけ作れていない、やることができていないのであれば、押せたとしても良くないと思う」。

スクラムで8人が共通認識を持ち全員が同じ方向を向いて組むことが、スクラムにおいて譲ることのできないポイントと木川さんは語る。

スクラムではフロントローの顔に注目(写真は平田主将)

ラグビーを始めて観戦する人がスクラムで注目してほしいポイントについて伺ってみると、木川さんは「フロントローの『顔』ですかね」と答えた。「良いスクラムを組んでいるといい顔をしていて、その後のフィールドプレーもよくなる。

スクラムが劣勢の場合は暗い顔をして、フィールドプレーも悪くなる子が多い」。大学ラグビーはもちろん、トップリーグや日本代表の試合を観戦する際は、スクラムを組む前のフロントローの『顔』にも注目してみてはどうだろう。

大学日本一に向けてスクラムコーチとしてできることを、木川さんは「今のFWはスクラムに自信を持っているので、そこでは相手を上回りたい。(自分は)それの手助けができれば」と語った。

大東文化の強力スクラムの秘訣は、単純な体重の重さなどにあるのではない。試合中は相手に対応して組み方を変え、練習中も選手同士で課題解決のために話し合うその『自主性』こそ、真の強さの秘訣なのだ。

◆木川隼吾(きかわ じゅんご)
埼玉県出身。ポジションはプロップで、中学からラグビーを始める。その後、進んだ深谷高校、大東文化大学では主将を経験した。大学卒業後は三洋電機ワイルドナイツ(2011年度からパナソニックワイルドナイツ)に入団。10年間プレーし、2015年度をもって現役を引退した。現在は熊谷市職員を務めながら、大東文化大学のスクラムコーチも兼任する。

文:姜亨起/写真:馬場修平(スポーツ大東)

11月25日(日)午後1:50 大東文化大学 vs. 東海大学
※J SPORTS 4 生中継&J SPORTSオンデマンドLIVE配信

スポーツ大東編集部

スポーツ大東編集部

1967年創刊。大東文化大学体育連合会所属。ラグビー部や陸上競技部、テコンドー部など国内外で活躍する「大東スポーツ」を、年4回の新聞発行やブログ、Twitterで学生たち自ら情報を発信する。現在活動している部員数は14名。随時部員募集中。
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