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11月17日(土)、英国遠征中のラグビー日本代表(世界ランキング11位)は、「聖地」トゥイッケナム・スタジアムで、ラグビーの発祥国であり、日本代表の前指揮官である、エディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)が率いるイングランド代表(同4位)と対戦した。
過去の対戦成績は日本代表の0勝8敗であるが、両者がキャップ対象にした試合は1987年のワールドカップのみであり、「聖地」で日本代表とイングランド代表がともにキャップ対象としたテストマッチは初となった。
前売り券は完売で8万1151人もの大観衆が詰めかけた試合は、前半は日本代表がパスとキックでバランスよく攻めて、WTB(ウィング)福岡堅樹、山田章仁の両翼も前に出る。
相手がシンビン(10分間の一時的退場)で数的有利の間に22分、28分とCTB(センター)中村亮土、キャプテンFL(リーチ)リーチ マイケルがトライを挙げて10-15とリードして前半を折り返した。
後半、イングランド代表もCTBオーウェン・ファレルら、普段はスターターを務める控え選手を投入し、一気呵成に出る。
すると日本代表は、相手のアタックに後手に回る時間が増え始める。後半20分ほどまではリードしていたが、初キャップとなったWTBジョー・コナカシガらに3トライを許し、15-35で敗れた。
試合後、ジェイミー・ジョセフHCは試合後、「ティア1(世界トップ10)のチームはちょっと苦戦したり、ビハインドになったりするとフィジカル、インテンシティを次のレベルに上げられる。そこに喰らいついていかなければいけない」。
「反則せず、喰らいついていくことが学びですが、イングランドの流れになったところで自分たちがペナルティをしてしまった。ハーフタイムに、エナジー与えるためにメンバー変えたが後半、判断、精度が落ちてしまった。そこが一番の学びです」と振り返った。
また2019年のラグビーワールドカップへの強化という点で、今日の試合の意味合いについて聞かれると、ジョセフHCは「毎回、世界ランクトップ4と対戦したときに、いろんな面で戦えていたことがプラスですし、選手に信念が生まれる」。
「この1週間、アマチュア対プロの戦いと言っていましたが、トゥイッケナム・スタジアムで勝つところまで持っていけたところは収穫ですが、後半、若干、相手に流れを渡して、(勝ちを)逃してしまったところが課題だと思います」と前を向いた。
トライを挙げるなど80分間を通して出色の出来だったキャプテンFLリーチは「がっかり。勝てた試合に負けたことと(後半)10分間の間で勢いを失ったこと。一番課題にしている後半立ち上がり10分、上手くいかなかった」と反省点を口にした。
一方で良かった点を聞かれて「ブレイクダウンはだいぶ成長したなと思います。ラインアウトも良かった。後はラインディフェンスで相手にプレッシャーをかけたことも、試合の立ち上がりで勢いを付けようとする姿勢もすごく良かった」と振り返った。
前半、SH(スクラムハーフ)として試合にリードした田中史朗は、ハーフタイムで交替することは事前に伝えられていたという。
リードすることができた前半について、「良い状態でしっかりゲームプランができた。相手を焦らせることはできた。球出しがよくできていたし、FW(フォワード)が素早い動きでセットして前に出られていた」と胸を張った。
だが、逆転負けしたことについて、チームで一番のベテランは「代表なので勝つことが一番大事。向こうにやられたというより、自分たちの反則やミスが後半はじめに多くなった。そこから相手のラグビーをさせてしまった。そこは意識して減らせる部分なので」と悔しい表情を見せた。
この試合では、FWがセットプレーで奮闘したことも光った。スクラムのマイボールキープ率は100%(7/7)で、さらにラインアウトのマイボールキープ率も約91%(10/11)と安定していた。
HO(フッカー)として先発した坂手淳史はこう試合を振り返った。「僕はフッカーなのでセットプレーを安定させたいと思って試合に臨んだ。ラインアウトもスクラムも予想通り。スクラムは重かったがコントロールできた」。
「ディフェンスも良かったし自分たちができる手応えもたくさんあった。ゲームの流れに関しては不用意なペナルティー、特に後半はじめのところでゲームの流がかわった。ディシプリンの大切さはもう一度チームで確認したい」。
15キャップ目で、ティア1相手に初先発し、トライを挙げるなど期待に応えたCTB中村は「(トライは)嬉しかったですが、あれはスクラムがすごく良かったので、FWのトライかなと思います」。
「このスタジアムでできたのはいい経験です。フィジカルでも負けなかったので、次からも自信を持ってやれます。勝ちきれなかったのは足りないところ」とコメントした。
また、トライはなかったが、左サイドでゲインを繰り返して132m走ったWTB福岡は前半に関しては「いくつかいいプレーもありましたが、(スクラムで)SHに入ったオプションはあまりうまくいかなかったけれど、チーム全体としてはすごく良い形で終われた」と満足げに話した。
しかし、後半は「相手が落ち着いて、自分たちのラグビーをやるのを感じた。地力、修正能力の高さはティア1でやっているチームなのかなと思いました」と相手を称えた。
イングランド代表のジョーンズHCは試合後、「コンニチハ」など日本語を話しつつ、「非常に我々にとってファンタスティックだった。日本代表がこんなにすばらしいプレーをしてくれて私は本当にすばらしい。彼らは本当に強固だった」。
「後半の選手たちには非常に満足している。後半はまさしくイングランド代表の戦い方だった。確か日本は我々の22mに入ってきたのは一度しかなかったはずだ」と笑顔を見せた。
そして日本代表について聞かれたジョーンズHCは「素晴らしい。本当に良くなった。(福岡)ケンキはいい選手ね」と日本語で言った後で、「今や日本代表はオールブラックスと対戦し、81000人のトゥイッケナム・スタジアムでイングランド代表とも対戦しました」。
「日本は今、真のラグビー国になりました。今日の日本代表パフォーマンスにも満足していますし、ここに日本のメディアがたくさん来ています。ラグビーコミュニティが出来ています。
ジェイミー(・ジョセフ)とトニー(・ブラウン)は(日本代表で)すばらしい仕事をしていますし、リーチの卓越したキャプテンシーで次々と若くて才能のある選手がブレイクしています」とかつて率いていたチームの成長を実感していた。
成長、学び、反省、課題などトゥイッケナム・スタジアムさまざまな収穫を得ることができたラグビー日本代表だが、来年の2019年ラグビーワールドカップに向けて、ホスト国のチームとして世界に上昇曲線を描いていることは証明することができたと言えよう。
11月24日(土)に、日本代表はイングランド・グロスターでこの秋のシリーズを締めくくるロシア代表戦が控える。ワールドカップの開幕戦で戦う相手だけに、しっかりと勝利して今年を締めくくり、ワールドカップイヤーを迎えたいところだ。
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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