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2019年ラグビーワールドカップ日本大会まであと1年を切り、11月はヨーロッパ各地で、南半球vs.北半球の強豪同士のテストマッチが行われている。
11日(土)は世界ランキング8位のフランス代表と同5位の南アフリカ代表が、フランスのサン・ドゥニのスタッド・ドゥ・フランスで激突した。
パリに乗り込んだ南アフリカは先週、イングランド代表と対戦し、SH(スクラムハーフ)フェフ・デクラーク、FB(フルバック)ウィリー・ルルーなど、何人か中軸選手を起用することができず、惜しくも11-12で敗れたが、手応えを得た試合となった。
一方のフランスは、この試合が、今秋のテストマッチシリーズの初戦。ここ数年の低迷で観客数も減少傾向にあるが、それでもフランスを応援しようとスタッド・ドゥ・フランスには、5万人ものファンが駆けつけた。
昨年の両者の対戦成績は南アフリカの4勝0敗だが、どの試合も競いあっており、南アフリカはラッシー・エラスムス、フランスはジャック・ブリュネルと両チームともHC(ヘッドコーチ)が新しく就任したことで調子は上向きである。
フィジカルが強く、バックスリーも決定力があるという両チームの対戦は、この試合もクロスゲームになると予想されていた。
序盤、南アフリカがフィジカルで上回ってペースをやや掴んだかに見えたが、すぐにフランスもFBマクシム・メダール、WTB(ウィング)テディー・トマら、バックスリーが自陣から切れのあるランを見せてリズムをつかんだ。
すると7分、11分、フランスは相手のペナルティからSH(スクラムハーフ)バプティスト・スランがPG(ペナルティゴール)を決めて、6-0とリードする。
一方、南アフリカも13分、PGを得てSO(スタンドオフ)ハンドレ・ポラードが決めて、3-6と追い上げる。
中盤になるとフランスは、フィジカルに長けた南アフリカに対して、敵陣に攻め込むとグラバーキックや、キックパスとコンテストキックを軸にトライを狙う戦略に出るが、なかなか得点に結びつけることができない。
22分には南アフリカが再びPGを決めて6-6の同点に、さらに28分に今年のワールドラグビーの最優秀選手賞にノミネートされている、HO(フッカー)マルコム・マークスのジャッカルから、SOポラードがPGを決めて、ついに南アフリカが9-6と逆転に成功する。
前半残り10分、ホームのフランスはファンの声援を背に、素晴らしいパフォーマンスを披露する。33分、SOカミーユ・ロペスがDG(ドロップゴール)を決めて9-9の同点に追いつく。
さらに36分、キャプテンのHO(フッカー)ギレム・ギラドが、モールを起点に力強い突破からトライ。ゴールも決まって、16-9とフランスが7点リードして前半を折り返した。
後半も序盤はフランスの時間帯が続く。1分、敵陣22mライン後方からSOロペスがゴール前にハイパントキックを上げて、味方が競ったこぼれボールをCTB(センター)マチュー・バスタローが拾い、そのまま中央にトライ。ゴールも決まってフランスが23-9と大きくリードした。
このままフランスが一気に得点を重ねていくかと思われた。ただ、ワンプレーで流れは大きく変わってしまう。
南アフリカは直後のキックオフから相手にプレッシャーをかけて、こぼれ球をそのままWTB(ウィング)スブ・ンコシが右中間にトライ。ゴールも決まって16-23、7点差とした。
その後、南アフリカSHデクラークがテンポ良くボールを動かすと、フランスはたまらずペナルティを犯し、12分、20分とSOポラードがきっちりとPGを決めて22-23と、ついに1点差に追い上げた。
だが、フランスも意地を見せる。25分のPGこそ外したものの、27分にはPGをしっかり決めて26-22と4点差に広げる。
連敗を避けるために勝利したい南アフリカは29分、相手のハイパントキックをキャッチしてから右に展開してトライかと思われたが、TMO(テレビマッチオフィシャル)の末、相手のタックルにノックオンを誘われてトライにならず。
残り時間わずかの中、フランスは相手陣に攻め込んで勝負を決めるかに思われたが、寸前のところでペナルティを犯してしまい、南アフリカは中盤のラインアウトのチャンスから攻め込むも再びTMOの末、今度はスローフォワードの判定でトライにならなかった。
ロスタイムが続く中、南アフリカは集中力を切らすことなく、ペナルティからタッチを選択し、モールで押し込んでいく。手元の時間は84分を回っていた。
最後はPR(プロップ)ボンギ・ンボナンビが、右端にトライを挙げてついに逆転に成功、最後はSOポラードのゴールも決まり、南アフリカが29-26と大逆転で勝利を収めた試合となった。
敗戦したフランスの指揮官ブリュネルHC(ヘッドコーチ)は、「ポジティブな気持ちで臨んだが、決して負けてはいけない試合を失ってしまい大変困惑している」。
「最後の4分間も含めて、ゲームを上手くコントロールできなかった。こんなことは他の強豪国ではまずありえないことだ。レフェリングも含めてすべてのことに怒りを覚える」と落胆を隠さなかった。
一方、最後まで攻めの姿勢を見せて大逆転勝ちを収めた南アフリカのエラスマスHCは、「先週のイングランド戦では1つのペナルティを得るために15フェーズを重ねたが、結果として勝利することができなかった。フランス戦ではトライを取りに行くことにした」。
「完璧なパフォーマンスだったとは言えないが、それでも十分な結果であるし、何よりも先週よりは良い気分だ。自分たちにとってビッグチャンスをものにできて、相手にプレッシャーをかけられたことが大きい」と対照的に笑顔を見せた。
秋のテストマッチシリーズ、黒星スタートとなったフランスは、次週11月17日(土)に、リールのスタッド・ピエール=モロワで世界ランキング9位のアルゼンチン代表と対戦する。今度こそ、しっかりとホームで白星を手にしたいところだ。
南アフリカは同じく17日(土)に、エディンバラのマレーフィールドで世界ランキング7位のスコットランドと対戦し、アウェイでの連勝を目指す。
◆テストマッチ2018 放送予定
・11月18日(日)午前4:50 フランス vs. アルゼンチン
・11月25日(日)午前4:50 フランス vs. フィジー
※いずれも、J SPORTS 4で生中継、J SPORTSオンデマンドでLIVE配信
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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