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後半ロスタイム、アイルランドの先発FBジョーダン・ラーマーが巧みなステップ、一瞬の加速で独走トライを決めた。
J SPORTSで解説を務めた男子セブンズ日本代表の岩渕健輔ヘッドコーチも、FBラーマーの独走を見て「疲労もあるなかで、この走りはすごいですね。レベルが高いです」とコメント。今年2月に代表デビューしたばかりの21歳に驚いていた。
日本が2019年ワールドカップ(W杯)グループステージ第2戦で激突するアイルランドが、現地時間11月3日(土)、アメリカ・シカゴで、秋シーズン初戦となるイタリア代表戦に54-7で快勝した。
若手主体のメンバーながら、21歳のFBラーマーがハットトリックを決めるなど計8トライを奪取。
守りも鉄壁。アイルランドの失点はインターセプトによる1トライ1ゴールのみ。相手のクリーンブレイク数は「5」(アイルランドは13)に抑え、あわやトライのゴール前の攻防にも競り勝ち、トライラインを死守した。
イタリアは2013年のアイルランド戦(○22-15)以来5年ぶりの白星を目指していた。
しかしアイルランドはスタート直後からハイテンポな連続攻撃。HOベスト主将もSOセクストンもいない若手編成ながら、さっそくチームとしての完成度を披露した。
するとアイルランドは前半4分、敵陣ゴール前ラインアウトのチャンスから、FWユニットの突進からLOタイグ・バーンが先制トライ。
前半32分には注目株のFBラーマーがパワフルな突破を見せ、フォローしていたSHルーク・マグラスが難なくチーム2トライ目。
イタリアも前半38分、この日攻守に獅子奮迅だったCTBミケーレ・カンパニャーロ主将がインターセプトトライ。アイルランドが14-7とリードして後半へ向かった。
後半はアイルランドが主導権を掌握した。
後半2分に怒濤の連続攻撃からLOバーン、同5分にはFBラーマーがインターセプトトライ。5分間で2トライを挙げ、イタリアの追撃ムードを削いだ。
一方、後半のイタリアは無得点。CTBカンパニャーロ主将を中心にくさびを打ち込むが、アイルランドの素早いリロード、接点で前に出るDFに最後まで手を焼いた。
そんな試合でひときわ輝いたのはFBラーマー。アイルランドのダブリンに生まれ、PRO14ではレンスターに所属する同国U20代表経験者だ。
FBラーマーは今年度のブレイクスルー・オブ・ザ・イヤー(新人賞)にノミネートされている。他の候補者はWTBアピウェ・ディヤンティ(南アフリカ)とPRカール・トゥイヌクアフェ(ニュージーランド)。
そんな逸材がチームに勢いを与えた。35-7で迎えた後半23分、ショートステップと再加速を織り交ぜ、守備網のわずかな隙間を突破。そして圧巻は42点リード(49-7)の後半ロスタイム。
自陣左隅でボールを受けると、ディフェンダーを次々と置き去りにしてハットトリック達成。FBラーマーの活躍、鉄壁の防御で、アイルランドが54-7で大勝した。
アイルランドの一番手FBといえば、ハイボールに強く安定感のあるロブ・カーニーだ。
カーニーは6月の豪州3連戦にすべて先発した代表89キャップの32歳だが、一人で局面を打開できる新星FBラーマーの圧倒的なラン能力は脅威になるだろう。
アイルランドはこれから母国でアルゼンチン(10日)、ニュージーランド(17日)、アメリカ(24日)と対戦する。
今回のイタリア戦での若手の躍動で、アイルランドの先発に変動があるかもしれない。日本が来年のW杯グループステージで対戦するアイルランド。要警戒の選手がまた一人増えた。
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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