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ラグビー コラム 2018年9月14日

大東文化が連覇に挑む、東海、流通経済の巻き返しなるか。ラグビー関東大学リーグ戦のみどころ

ラグビーレポート by 斉藤 健仁
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関東大学対抗戦に遅れること1週間、今年も9月16日(日)に関東大学リーグ戦1部が開幕する。

昨年、22年ぶりにリーグ戦で優勝した大東文化大学(昨年リーグ戦1位)、東海大学(2位)、流通経済大学(3位)、法政大学(4位)、中央大学(5位)、日本大学(6位)、拓殖大学(7位)、専修大学(今季昇格)8校の総当たりで争われる。

順位は勝ち点で決まり、勝利が4点、引き分けが2点、敗戦が1点を得る。また、昨シーズンとは違い、上位3チームに大学選手権の出場権が与えられ、7~8位は入替戦に回る。

◆大東文化大学:連覇を狙うモスグリーン軍団

昨年、リーグ戦でライバルの東海大、流通経済大も下した大東文化大学は7戦全勝で1995年以来22年ぶり8度目の優勝を成し遂げた。「モスグリーン」のジャージーは今年もFW(フォワード)、BK(バックス)ともに戦力は充実しており、優勝候補の筆頭と目されている。

チームスローガンは昨年度同じ「Trust」(信頼)。2014年から指導している青柳勝彦監督は「去年とメンバーは大きく変わっていない。基本的には留学生がメインですが、日本人選手も実力を付けてきている。

スクラムを中心としたセットプレーで、どれだけプレッシャーをかけられるか。また両WTB(ウィング)もトライが取れるので、ボールをアクティブに動かしていきたい」と意気込む。

自慢のFWのメンバーを見ると、最終学年となった双子のLO(ロック)タラウとNO8(ナンバーエイト)アマトのファカタヴァ兄弟を軸に、第1列も主将のHO(フッカー)平田快笙、PR(プロップ)古畑翔(いずれも4年)、PR藤井大喜、LO佐々木剛、服部鋼亮(いずれも3年)、副将のFL(フランカー)湯川純平(4年)と能力の高い選手が揃う。

BKも昨年はルーキーながらチームを引っ張った攻撃的なSH(スクラムハーフ)南昂伸(2年)、SO(スタンドオフ)には副将の大矢雄太(4年)、SO/FB(フルバック)鈴木匠(2年)がチームをコントロールする。CTB(センター)には突破力に長けたシオペ・ロロ・タヴォ(2年)、WTB(ウィング)には腰の強いランが魅力のWTB土橋永卓(4年)が控える。

また、ルーキーではスピードスターのWTB朝倉裕(御所実業出身)が、すでにレギュラーに定着。春季大会は5試合で6トライを量産するなど決定力を見せている。

他にもオーストラリア育ちのCTB長谷川昇、ボール捌きの上手い、SH東海林拓実(山形中央出身)、ワークレイトの高いHO酒木凜平(御所実業出身)もメンバー争いに絡んで競そうだ。

昨年度の大学選手権では準決勝で明治大学に敗れた。青柳監督が「日本一のチャンスがあると思いますし、リーグ戦でももちろん優勝を狙っています。大きなケガせず、油断せず、リーグ戦から結果を出して、1試合1試合戦っていきたい」と手応えを口にした。

リーグ戦で連覇を達成し、その勢いのまま、今年度こそ1994年度以来の大学王者に輝くことができるか。

◆東海大学:伸び盛りの若いチームで覇権奪還を狙う

昨年はリーグ戦2位、そして大学選手権ベスト4に終わった東海大学は、今年もやはりリーグ戦の優勝候補の一角である。

スローガンは昨年度同様「力必達」で、リーグ戦優勝、ジュニア選手権優勝、大学日本一という目標を達成するために、小さなことを積み重ねることを「Marginal Gain」という言葉で表現した。

木村季由監督の信頼厚いユーティリティーBKアタアタ・モエアキオラが主将を務め、安定感の出てきたテビタ・タタフ、副将のHO加藤竜聖(いずれも4年)、さらにタックルに強みの持つSH山菅一史、SO/CTB眞野泰地、スピードが武器のWTBモリキ・リード(いずれも3年)らだ。

春から1年生も試合に出場している。SO丸山凜太朗(東福岡出身)タックラーFLジョーンズ 剛リチャード(伏見工業出身)、豪快なランが魅力のWTB望月裕貴(東海大静岡翔洋出身)らはメンバーに絡んでくるだろう。

木村監督は「夏からようやく、それなりの選手がもどってきて、チームの練習を始めました。波がありますが、若いチームですし、経験値もないので伸び盛りです」とチームの成長に期待を寄せた。

一戦一戦、勝利しながらリーグ戦で成長して、11月25日のディフェンディングチャンピオンである大東文化大戦を迎えたい。

◆流通経済大学:2014年以来のリーグ戦王座を狙う

昨年はライバルの大東文化大、東海大に敗れて3位に終わってしまった流通経済大学。2005年から指導している内山達二監督の下、フィールド全体で、FWとBK一体となって縦横無尽に展開し、トライを狙う「ダイナミックラグビー」は健在だ。

チームの中軸は主将HO山川遼人、副将のWTB/FB桑江淳太郎、LOモツラロ・タカウ、SO山上大治、7人制日本代表歴のあるFB韓尊文(いずれも4年)、FL粥塚諒、CTB ムゼケニエジ・タナカ・ブランドン(ともに3年)ら上級生たちだ。

コーチ陣が成長株に挙げたのはWTBビリアメ・タカヤワ(2年)だ。身長183cmと大柄で、柔道経験もあって身体も強い。今年から外国人枠が2人から3人になったこともあり、試合出場が増えそうだ。

ルーキーのLOタマ・カペネ(NZ・スコッツ高出身)、SH野村悠(流通経済大柏出身)。この2人は、リーグ戦でもメンバー入りに絡んできそうだ。

大文化大学、東海大学というライバルの2チームにも勝利し、2014年以来のリーグ戦王座を奪還することができるか。

◆法政大学:リーグ戦の伝統校、大学選手権出場を狙う

リーグ戦最多の13度の優勝を誇る法政大学。今年は上位3チームから白星を挙げて、1つでも順位を上げたいところだ。伝統的に高速展開ラグビーがウリだが、昨年から、島津久志氏がコーチから監督に就任し、セットプレーの強化にも力を注いできた。

FWでは主将のHO川越藏を筆頭に、LO塩水伊風(4年)、LOウォーカー・アレックス拓也(3年)らが鍵を握る。またディフェンスや接点ではFL吉永純也、山下太雅(ともに2年生)の運動量あるプレーでチームに勢いをもたらしたい。

BKはSO/CTB金井大雪、副将のCTB長利完太(ともに4年)、SH中村翔(3年)らがゲームをコントロールする。そして、昨年のリーグ戦「ベスト15」のWTB中井健人、WTB萩原蓮(ともに4年)、WTB/FB井上拓(3年)、そしてU20日本代表でも活躍したWTB根塚洸雅(2年)らの決定力あるランナーで取り切りたい。

1年生では春から試合に出場していたPR稲田壮一郎(中部大春日丘出身)、FL大澤蓮(長崎南山出身)、SH隠塚翔太朗、SO/CTB舘内倭人(法政二出身)、CTB有田闘志樹(鹿児島実業出身)らがメンバー争いに絡んで来そうだ。

目標は大学選手権出場である。上位チームに1つでも2つでも勝利して3位以内に入りたいところだ。

◆中央大学:団結力で上位浮上を目指す

昨年は5位に終わってしまった中央大学。今年の目標は「リーグ戦優勝、大学選手権ベスト4進出」達成を掲げて、スローガンを「C★BLOCK」と掲げた。スローガンのCは中央の頭文字で、いままでやってきた小さなことを積み重ねて、大きな目標を達成するという意味が込められているという。

松田雄監督は、今年はディフェンスからアタックする「ディフェンシブなラグビー」を標榜している。そのキーマンは今年からPRからHOに転向した主将の金子惠一、さらに副将のWTB高橋真太(ともに4年)のリーダー2人だ。FWとBKのまとめ役としてチームをけん引する。

チームをコントロールするのが、昨年、1年生ながら唯一リーグ戦の「ベスト15」に選ばれたSO侭田洋翔(2年)だ。U20日本代表で国際経験も積んだ司令塔がチーム浮沈の鍵を握る。

また、新人でメンバー争いに絡んで来そうなのはWTB竹ノ内建太(國學院栃木出身)、FL/PR茂原隆由(高崎工出身)あたりだろう。部員は少ないが、団結力は他校には負けない。チーム一丸となって上位3位以内を狙いたい。

◆日本大学:伝統の強いFWの復活がカギ

一昨年は1勝もできなかった日本大学だが、昨年は2勝とチームを率いて3年目の中野克己監督の下、着実に強化が進んでいると言えよう。

今年のスローガンは「ヘラクレス軍団復活」を掲げて、日本大学伝統の強いFWを復活させ、前に出るラグビーを目指している。また今年から外国人選手がチームに加わったことで、フィジカルにも長けたチームへと変貌中である。

FWは主将のLO今要(4年)を中心に、FWではルーキーのHOアサエリ・サミソニ、NO8ハラシリ・シオネ(ともに目黒学院出身)、トンガ出身のLOテビタ・オトの3人がおり強力だ。また日本人でもFL板倉正矢(茗渓学園出身)がメンバー争いに絡んで来そうだ。

BKは副将のWTB金志大(4年)を中心に、SH村上陽平、SO齊藤芳徳(ともに2年)のハーフ団、そしてルーキーではSH杉山樹(昌平出身)、CTBフレイザー・クワーク(開志国際出身)らが中軸となろう、。

1990年代に大学選手権ベスト4に入った時のようなFWの強さを見せ、今年のリーグ戦で旋風を巻き起こすことができるか。

◆拓殖大学:強力スクラムとワイドアタックで挑む

昨年は1勝しかできず入替戦に回ってしまった拓殖大学。ただ、今年も「FWで前に出るのがうちの基本」と遠藤隆夫監督が言うように、持ち味のスクラムの強さは健在だ。

今年のスローガンには「Discipline」(規律)と掲げて、伝統のスクラムだけでなく、グラウンドを大きく使ったランニングラグビーで勝利を目指す。

スクラムの中軸は副将のPR山中悠暉(4年)、PR河田和大(3年)らが中心。主将のSO大塚隆史(4年)、SO/FB小野龍輝(2年)がゲームをコントロールし、突破力のあるFLアセリ・マシヴォウ(3年)、CTB大塚晃生(2年)ら決定力のある選手でトライを挙げたい。

新人の中で、春季大会でレギュラーとして出場したのはNO8山本健人(鶴来出身)、そしてオーストラリアからの留学生のCTBマヒナ・クイントンだ。クイントンは中盤の突破役として期待がかかる。

「何とかして大学選手権に出場できれば」と指揮官がいうように、強力なスクラムとワイドアタックを武器に3位以内を狙う。

◆専修大学:2部から昇格、狙うは下剋上

昨年はリーグ戦2部で全勝して、入替戦で勝利し、2年ぶりに1部に復帰した専修大学。2012年から指導にあたる元日本代表SH村田亙監督の下、FWとBK一体になって展開する「フレンチラグビー」が信条だ。

村田監督のラグビーを中心となって体現するのは、昨年から司令塔を任せているSO郡司健吾(3年)だ。7人制日本代表経験のあるSH野口宜裕(4年)はフィニッシャーとしての期待がかかる。

WTBには水野景介・晋輔(2年・1年/東京高出身)の兄弟がおり、春季大会は兄弟で両翼として出場した。他にもルーキーではCTB岩佐尭弥(報徳学園)、WTB堀田南雄斗(東福岡出身)、FL折居慎斗(尾道出身)らがメンバー争いに入ってきそうだ。

FWの中心選手は、副将のNO8石川恵韻(4年)、U20日本代表でも身体を張ったプレーが光ったPR石田楽人(3年)、身長198cmのLO山極大貴(ともに3年)らが挙げられるだろう。

昇格組だが、専修大学が狙うのは「3位以内=大学選手権出場」である。そのためにも、序盤から白星を重ねたい。

*****

昨年までは過去10年、東海大学、流通経済大学が王者を分け合ってきたが、大東文化大学がその牙城を崩した。大東文化大学が2連覇なるか、それとも東海大学、流通経済大学が覇権を奪還できるか。いずれにせよ、今年の優勝争いはその「3強」の争いになると予想されている。

ただ、今年から外国人枠が2人から3人に増え、多くのチームが留学生を補強している影響がどこまで出るのか。またチーム力を上げている法政大学、中央大学といったチームが「3強」に絡むことができるか注目だ。

今年のリーグ戦は、昨年と違い、3位以内に入らないと大学選手権に出場できない。優勝争いだけでなく、3位争いも激しくなることは必至である。きっと11月25日、26日の最終戦まで目が離せない戦いが続くはずだ。

斉藤健仁

斉藤 健仁

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント

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