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サンウルブズの3年目の戦いが終わった。16戦して3勝13敗。過去最高の3勝をあげたが、15チーム中最下位だった。しかし、多くの選手が手ごたえを語っているように、チーム、個人、両方の成長を実感するシーズンだった。スーパーラグビーの経験豊富な田中史朗がシーズン中に言っていた。「今年はどのチームもサンウルブズに対して100%の力で臨んできます。昨年まではサンウルブズの試合にレギュラークラスを休ませるチームもありました」。
それは今季より指揮を執ったジェイミー・ジョセフヘッドコーチ、トニー・ブラウンアシスタントコーチに対するリスペクトでもあっただろう。このコンビでハイランダーズを率い、2015年のスーパーラグビーで優勝したのは誰もが知るところで、その手腕は侮れないと見るのは当然だった。相手チームがサンウルブズを分析し、ベストメンバーをぶつけてくる。その中でサンウルブズは着実に成長していった。
日本代表のヘッドコーチでもあるジョセフの兼務で、サンウルブズと日本代表との連携も密になった。2017年秋のテストマッチシリーズから取り組み始めた、素早く前に出るディフェンスシステムもサンウルブズに導入され、組織としてのレベルアップが着々とはかられた。シーズン序盤はディフェンスが上手く機能せず黒星が並んだ。攻撃面では質の高いトライがとれているにもかかわらず、もどかしい時期だった。
チームの明らかな向上が見られたのは、4月のニュージーランド遠征だろう。4月21日=クルセイダーズ(11-33)、4月27日=ハリケーンズ(15-43)に連敗したが、ニュージーランドの2トップのスピード、強固なディフェンスを経験できたことで、チーム力が一段階上がったように見えた。そして、1週の休みを経て、5月12日、秩父宮ラグビー場でレッズ(オーストラリア)での今季初勝利が実現する。63-28という大勝だった。
5月19日には、香港でストーマーズ(南アフリカ)と対戦し、SOヘイデン・パーカーの逆転ドロップゴーグで勝利。日本代表戦の準備のためにメンバーを変更したこともあって、オーストラリア遠征ではレベルズ、ブランビーズに完敗したが、6月の日本代表戦では、イタリア代表と1勝1敗。ジョージア代表には完封勝利と、サンウルブズのメンバーが主体になった日本代表がレベルアップを証明した。「どうやって勝つかをサンウルブズで学べました」(リーチ マイケル)。
6月30日、シンガポールで行われたブルズ(南アフリカ)戦では、ミスから2トライを許す苦しい戦いの中で逆転勝ち。初の3勝目をあげた。最後の2試合はレッドカードが出て14人で戦う時間が長くなり、残念な連敗になったが、スーパーラグビーで戦うことが日本ラグビーのレベルを押し上げるということが証明されたシーズンでもあった。
立川理道はコメントしている。「来年のワールドカップイヤーは重要なシーズンになると思いますが、それに向けていい方向に進んでいると思います。トップリーグに帰っても、高いスタンダードでプレーすることを意識し、サンウルブズに戻ってきた時には、今年積み上げてきたものを一から始めるのではなく、しっかり上乗せできるように努力していきたいと思います」
今季のサンウルブズは選手のコンディションを重視して戦ったこともあり、計57名がプレーした。16戦すべてに出場したのは、PRクレイグ・ミラーだけだった。これまでスーパーラグビーのレベルでは目立った活躍のできなかったSOヘイデン・パーカー、CTBマイケル・リトルの活躍も特筆すべきものだ。緻密な戦略で素早くボールを動かすサンウルブズの戦い方にフィットしたということだろう。リトルは13試合に出場し、一試合平均のプレー時間は75分。何度もディフェンスを突破しチャンスを作った。ヘイデン・パーカーのプレースキックの成功率は驚異の96%。50本蹴って48本成功は神業である。毎日の努力が実を結んだ尊い成功率だ。彼の存在なくして今季の3勝は語れない。
怪我でシーズン途中での離脱を余儀なくされたが、WTBホセア・サウマキのすさまじい決定力は序盤のスタジアムを盛り上げた。姫野和樹、徳永祥尭という日本人FW第三列も試合を重ねるごとに成長し、安定感を増した。WTB福岡堅樹、山田章仁はスーパーラグビーの一流選手に劣らない個人技を披露。ワラターズ戦で、オーストラリア代表のイズラエル・フォラウをステップでかわした山田のトライはオーストラリアのファンを驚かせた。流大、田中史朗のSHコンビは、どちらが先発、交代出場でも与えられた役割を果たしてゲームをコントロールした。田中のパスワークは円熟味を増している。
スクラム、ラインアウトは苦しむ試合もあったが、おおむね安定し、トライ数は、2016年から、33(2016年)、41(2017年)、48(2018年)と増えた。昨年より1試合増えたことを考慮に入れても、攻撃面のレベルアップは間違いない。内容的にも観客を喜ばせるトライが多かったのだが、秩父宮ラグビー場での平均観客数は11,819名で、昨シーズンより約2,000人減少した。勝利数が増えれば観客数も上がるはずだが、観客席のカテゴリー分け、告知方法などチケットの販売方法にはさらなる工夫が必要だろう。
2019年シーズンは、2月16日のシャークス戦(試合場所未定)から始まる。好スタートを切って観客を増やし、9月のラグビーワールドカップ開幕に弾みのつくシーズンになることを期待したい。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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